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【借金3000万男の記録】

第3話 まっとうに、600万円と向き合う

裏の世界から足を洗うと決めてから、最初にやったことは、単純だけど一番怖いことでした。

収入を、本業一本に絞る。

それまで裏の仕事で稼いでいた金額を知っている自分にとって、これは正直、想像以上にきつい決断でした。頭では「まっとうに生きる」と決めたはずなのに、通帳の数字が目に見えて減っていくのを見るたびに、「本当にこれでいいのか」という声が心のどこかで聞こえてくるんです。

抜けると決めた日の高揚感は、一週間も持ちませんでした。

生活は、恥ずかしいくらい切り詰めました。家賃の安い部屋に引っ越し、外食はほぼゼロ。友人からの誘いも、理由をつけて断る日々が続きました。「なんか最近付き合い悪いね」と言われるたびに、本当のことは言えないまま、曖昧に笑ってごまかしていました。

そして、返済計画を初めてちゃんと紙に書き出しました。

600万円。
月々の返せる額。
このペースでいくと、完済まで何年かかるか。

数字にしてみると、想像していたよりもさらに長い年月がかかることが分かりました。正直、紙を見ながら「もう無理かもしれない」と思った瞬間もあります。それでも、まっとうな道を選び直した以上、もうあの世界には戻らないと決めていました。

このころの生活で一番つらかったのは、金額の大きさそのものより、「終わりが見えない感覚」でした。毎月頑張って返しても、残高はほんの少ししか減らない。頑張っている実感と、進んでいる実感が一致しない。この感覚は、実際に経験した人にしか分からないと思います。

それでも、続けるしかありませんでした。

裏の仕事にいた頃は、心をすり減らしながらも金額だけは早く減っていく感覚がありました。でも、まっとうな道を選んだ今は、金額の減りは遅くても、心は少しずつ元に戻っていく感覚がありました。眠れる夜が増え、些細なことで苛立つことも減り、友人と話していても「早く抜けなきゃ」という焦りが顔を出さなくなりました。

このとき初めて気づいたんです。

早く終わらせることより、ちゃんと終わらせることの方が、結局は自分を守ってくれるんだと。

もちろん、この選択に後悔がないわけではありません。裏の世界にいた時間を、もっと早く手放していれば良かったと思うこともあります。でも、あの時期があったからこそ、「まっとうに生きる」ということの重みを、身をもって理解できた気もしています。

次回は、この地道な返済生活の中で起きた、ある出来事について書こうと思います。それは、僕がこの記録を書こうと思った、直接のきっかけの一つでもあります。

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