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【借金3000万男の記録】

第24話 追い風と、次の壁

開業して最初の頃は、正直、拍子抜けするほど順調でした。

前職の営業時代に築いた人脈。あの車好きのお客さんたちが、独立した僕を、そのまま追いかけてきてくれたんです。「コーティング屋始めたなら、頼むよ」。そう言って、次々と声をかけてくれる人たちがいました。

正直、ありがたさと同時に、少し驚きもありました。

会社という看板を失った僕に、それでも仕事を頼んでくれる人がいる。これは、前職での営業活動が、単なる数字上の付き合いではなく、ある程度の信頼関係として積み上がっていた証なんだと、この時初めて実感しました。

技術面でも、不安はありませんでした。16歳の頃から体に染み込んでいたコーティングの技術が、そのまま独立後の仕事にも活きていました。

「独立、思ったよりうまくいってるかもしれない」

開業直後の僕は、正直、そんな手応えを感じていました。

でも、この順調さには、一つの落とし穴がありました。

前職のお客さんという「貯金」を使い切ってしまえば、その先には何も残らない。新しいお客さんを、自分自身の力で獲得していかなければ、事業として続いていかない。分かってはいましたが、既存のお客さんからの仕事に追われる中で、新規開拓は、正直、後回しになりがちでした。

そして、いざ新規のお客さんを獲得しようとした時、僕は壁にぶつかりました。

前職の頃は、会社の看板と、営業として積み上げてきた関係性の中で、自然とお客さんと繋がっていました。でも、ゼロから、僕個人の店を知ってもらうというのは、まったく別の難しさがありました。

「コーティング屋、始めました」

そう言うだけでは、誰も振り向いてくれません。当たり前のことですが、当時の僕は、その現実を、開業してから初めて痛感することになりました。

まず取り組んだのは、チラシでした。

近隣に配ったり、車関連のお店に置かせてもらったり。地道な方法でしたが、少しずつ、チラシを見たという新規のお客さんが、ぽつぽつと現れるようになりました。

そしてもう一つ、力を入れたのが、当時流行っていたSNS、mixiでの告知でした。

コーティングの仕上がりや、作業の様子を、日記のような形で発信する。車好きが集まるコミュニティに参加して、そこで少しずつ、自分の店の存在を知ってもらう。今のSNSほど洗練されたやり方ではありませんでしたが、当時としては、新しい挑戦でした。

地道な発信を続けるうちに、「mixi見て来ました」というお客さんが、少しずつ増えていきました。

チラシとmixi。地道な二つの方法を組み合わせることで、新規のお客さんは、少しずつですが、着実に増えていきました。

前職のお客さんという追い風と、チラシやSNSでの地道な新規開拓。この両輪が噛み合い始めたことで、事業は、開業当初の勢いを保ったまま、少しずつ軌道に乗っていきました。

正直、この時期の僕は、独立という選択に、確かな手応えを感じ始めていました。

でも今振り返ると、この「順調さ」こそが、この後の判断を、少しずつ狂わせていく要因になっていったように思います。

次回は、この軌道に乗り始めた事業が、その後どう展開していったのか、そして「3000万」という金額に近づいていく、具体的な転機について書こうと思います。

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