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【借金3000万男の記録】

第30話 二台続いたキャンセル

高級車の注文販売が増えていくにつれて、自己資金だけでは、正直、追いつかなくなっていきました。

一台仕入れるのに、まとまった金額が必要になる。複数の注文が重なれば、その分、動かす資金も増える。手持ちの資金と事業の売上だけでやりくりするには、限界が見え始めていました。

そこで僕が選んだのが、銀行からの融資でした。

事業としての実績もある程度あり、コーティング屋としての売上、そして中古車販売の実績も伝えた上で、融資を申し込みました。審査は、思っていたよりもスムーズに通りました。「事業拡大のための前向きな借入」。そんな言葉を、担当者からもらったことを覚えています。

かつて、600万円という個人の借金に苦しんだ経験がある僕にとって、「事業融資」という響きは、どこか違う種類のもののように感じられました。個人の生活苦から生まれた借金ではなく、ビジネスとして、金融機関が「価値がある」と判断してくれた上でのお金。そう捉えることで、以前とは違う感覚で、この借入と向き合っていました。

融資を受けてからの二年間は、正直、うまく回っていました。

注文が入る。融資で用意した資金で車を仕入れる。お客さんに納車し、代金を受け取る。その利益で、また次の注文に備える。このサイクルを、二年ほど、大きな問題もなく続けることができていました。

「このやり方で、間違っていなかった」

そう思い始めていた、まさにその頃でした。

ある日、注文を受けていた高級車が、いざ仕入れ、納車の準備が整った段階で、お客さんからキャンセルの連絡が入りました。

「すみません、事情が変わって、やっぱり今回は」

理由は、それぞれの事情があったのだと思います。仕方のないことだと、自分に言い聞かせました。一件くらいのキャンセルは、これまでのビジネスの中でも、なかったわけではありません。

でも、問題は、ここからでした。

そのキャンセルから、それほど時を置かずに、もう一台、別の注文車でも、キャンセルが発生したんです。

なぜか、二台続けて。

正直、この時は、頭が真っ白になりました。

一台であれば、なんとか自分の中で処理できたかもしれません。でも、二台続けてとなると、話は別です。すでに仕入れてしまった高級車、二台分。融資を受けて用意した資金で仕入れた車が、そのまま、行き場を失った状態で、僕の手元に残ってしまったんです。

「なぜ、こんな偶然が重なるんだ」

そう自問しても、答えは出ませんでした。お客さん側の事情が変わっただけなのか、それとも、僕自身の対応や見通しに、どこか甘さがあったのか。今振り返っても、はっきりとした原因は分かりません。

ただ、事実として、二台分の高級車が、売れないまま、僕のもとに残りました。

融資の返済は、当然、待ってはくれません。仕入れ資金は、すでに動いてしまっています。売れる見込みのない在庫を抱えながら、返済だけは、確実に続いていく。

この二台のキャンセルが、僕にとって、大きな転機になっていくとは、この時点では、まだ完全には理解できていませんでした。

次回は、この二台のキャンセルが、その後、僕の資金繰りにどんな影響を及ぼしていったのかについて書こうと思います。

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