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【借金3000万男の記録】


第22話 コーティング屋、始めます

独立を決めてから、僕は事業のジャンルについて、いろいろ考えました。

営業として積み上げてきた人脈、経験。それを活かせる分野は何か。頭の中で、いくつもの選択肢を並べては消し、並べては消し、を繰り返していました。

そんな中で、僕の目に留まったのが「車」でした。

前職の営業時代、お客さんの中には、車好きの方が多くいました。話をしていく中で、車という存在が、その人たちにとって単なる移動手段ではないことが、よく分かっていました。愛車を語る時の表情、休日を洗車に費やす人、少しでも状態を良く保とうとするこだわり。そういう場面を、何度も目にしてきました。

「お金に余裕がある人ほど、車を大事にする」

これは、僕の営業経験の中で、肌感覚として持っていた考えでした。お金持ちや車好きは、自分の愛車を綺麗に保つことに、時間もお金も惜しまない。そういう人たちを、僕は数え切れないほど見てきていたんです。

だったら、その「綺麗にしたい」というニーズに、直接応えるビジネスをやればいいんじゃないか。

そう考えて辿り着いたのが、車のコーティング業でした。

そして、このアイデアには、僕にとって大きな強みがありました。

技術面で、ゼロからのスタートではなかったんです。

16歳からガソリンスタンドでアルバイトをしていた僕は、その頃からずっと、洗車やコーティングの現場に携わってきました。学生の頃から、社会人になってからも、形を変えながら、車の手入れという仕事にはずっと関わり続けていたんです。

前職の営業に転職してからは、直接その技術を使う機会こそ減っていましたが、体に染みついた感覚は、消えていませんでした。コーティングの工程、道具の使い方、仕上がりを左右する細かいコツ。それらは、頭で覚えたものというより、長年の経験で体に叩き込まれたものでした。

「これなら、いける」

技術の不安がない分、他の独立とは違う手応えがありました。多くの人が独立する時に直面する「技術習得」という壁を、僕はすでにクリアした状態からスタートできる。これは、大きなアドバンテージだと感じていました。

前職の人脈。車好きが多いという顧客層。そして、10代の頃から積み上げてきたコーティングの技術。

営業力と技術力、その両方が自分の中にすでに揃っている。そう考えると、この事業への確信は、どんどん強くなっていきました。

彼女には、改めて具体的な事業内容を伝えました。「車のコーティング屋をやろうと思う。技術は昔から自信がある」。彼女は、少し驚きながらも、「あなたが決めたなら」と、応援する姿勢を見せてくれました。

正直、この時の僕は、慎重さよりも勢いの方が勝っていたと思います。

技術がある。人脈がある。600万円を完済したという成功体験もある。「調子に乗りやすい」という自分の性格も相まって、不安要素より期待の方が、はるかに大きく膨らんでいました。

技術面の心配がなかった分、僕の意識は、もっぱら開業資金や店舗準備といった、別の課題に向かっていくことになります。

次回は、実際に開業に向けて動き出す中で、資金面も含めて、具体的にどう準備を進めていったのかについて書こうと思います。

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