【借金3000万男の記録】
第31話 赤字という現実
キャンセルされた高級車、二台。
とりあえず在庫として抱えることになったものの、いつまでも手元に置いておくわけにはいきません。仕入れ資金は融資で用意している以上、返済は待ってくれない。少しでも早く、現金化する必要がありました。
僕が選んだのは、オークションへの出品でした。
中古車の業者オークションであれば、比較的早く買い手がつく。そう考えて、二台とも、オークションに出すことにしました。
ここで、僕は、高級車という商材の、もう一つの怖さを思い知ることになります。
高級車は、値落ちが早いんです。
新車、あるいは高年式の車であればあるほど、その傾向は顕著でした。時間が経てば経つほど、そしてモデルチェンジや市場の動向次第で、相場は簡単に動きます。数ヶ月、下手をすればもっと短い期間で、仕入れた時の価格から、大きく下がってしまうことも珍しくありません。
僕が仕入れた二台も、まさにその状況でした。
注文を受けてから仕入れ、キャンセルされるまでの期間。そして、キャンセル後、オークションに出すまでの期間。決して長い時間ではなかったはずです。それでも、その間に、相場は確実に下がっていました。
オークション当日、結果を待つ間、正直、僕は淡い期待を持っていました。
「せめて、仕入れ値くらいでは売れてほしい」
でも、蓋を開けてみると、二台とも、僕が仕入れた時の価格を、下回る結果でした。
赤字。
しかも、一台や二台の話ではなく、動かしていた金額そのものが大きかった分、赤字の額も、決して小さいものではありませんでした。
頭では、「仕方ない」と分かっていました。相場が動くことは、車の売買につきものです。誰のせいでもない、市場の動きです。
それでも、実際に数字として突きつけられると、正直、かなり堪えました。
融資で仕入れた資金は、返済していかなければなりません。でも、その資金の元になった車は、想定していた金額では売れず、赤字という形で、資金の一部が消えてしまった。
つまり、返済すべき融資額はそのまま残っているのに、それを生み出すはずだった車という「元手」は、目減りした状態で現金化されてしまったということです。
穴が空いた、という感覚がありました。
これまでの事業は、多少の波はあっても、基本的には「仕入れて、売って、利益を得る」というサイクルの中で回っていました。でも、この二台の一件で、そのサイクルの一部が、初めて、明確に「マイナス」という形で崩れたんです。
正直、この時点では、まだ致命的な状況だとは思っていませんでした。
「たまたま、運が悪かっただけだ」「次の取引で、この分を取り返せばいい」
そんなふうに、自分に言い聞かせていました。600万円の借金を完済した経験、コーティング事業を軌道に乗せてきた経験。それらの成功体験が、この赤字を「一時的なつまずき」として、過小評価させていたんだと思います。
でも今振り返れば、この二台の赤字こそが、その後、僕を大きな借金へと引き込んでいく、最初のひび割れだったのかもしれません。
次回は、この赤字を取り返そうとした僕が、その後、どんな判断をしていくことになったのかについて書こうと思います。
