【借金3000万男の記録】
第6話 数字だけを見て働いた日々
具体的に何の仕事をしていたか、詳しくは書きません。ただ、体力を使う仕事で、時間をかければかけただけ、稼ぎに直結するタイプの仕事でした。
振り出しに戻ってから、僕がやったことは本当にシンプルでした。
働ける時間は、全部働く。
休みの日という概念を、しばらく手放しました。同世代の友人が休日に遊びに行っている話を聞いても、正直、羨ましいという感情すら湧かなくなっていました。「自分には関係ない世界の話」くらいの距離感で聞いていたと思います。
朝早くに家を出て、日が暮れてから帰る。帰ったら、ご飯を食べて寝るだけ。テレビもろくに見ず、スマホでニュースを見る時間すら惜しく感じていました。
正直、この頃の記憶はあまり鮮明ではありません。
毎日がほとんど同じ内容の繰り返しだったからだと思います。働いて、帰って、寝て、また働く。感情の起伏もあまりなく、ただ淡々と、決められたことをこなしていく。今振り返ると、あれは一種の思考停止だったのかもしれません。何かを考えると、離婚のこと、嫁に作られた借金のこと、これからの不安、いろんなことが押し寄せてくる。だから、考える前に、体を動かし続けていました。
唯一の楽しみは、月に一度、通帳の残高を確認する瞬間でした。
給料が入り、返済に回し、残った額を見る。その数字が、ほんの少しでも前月よりマシであれば、それだけで「今月も頑張った」と思えました。逆に、思ったより減っていない月は、理由もなく苛立ちました。誰にぶつけるわけでもない苛立ちを、自分の中だけで処理する日々でした。
友人とは、この時期ほとんど疎遠になりました。誘いを断り続けていれば、当然そうなります。「薄情なやつ」と思われていたかもしれません。でも、当時の僕には、人間関係を維持する余力すら残っていませんでした。
孤独でしたが、不思議と「辛い」という感覚は薄かったです。辛いと感じる余裕すらなかった、というのが正確かもしれません。ただひたすら、目の前の作業をこなす。それだけに集中していました。
そんな生活を半年、一年と続けていくうちに、少しずつ変化が現れ始めました。
減っていくペースが、以前よりも早くなっていったんです。
離婚前、200万円返すのに時間がかかっていたのに対して、この時期は同じような金額を、より短い期間で返せるようになっていました。生活を切り詰め続けたことで無駄な支出がほぼゼロになっていたこと、そして何より、余計なことを考えず働き続けたことが、単純に収入を押し上げていたんだと思います。
派手な成功体験ではありません。
ただ、地道に積み上げた結果として、数字が少しずつ、確実に動き始めた。それだけの話です。
次回は、この地道な反復生活の中で、僕の中に芽生え始めたある変化――「このままではダメだ」という危機感から、少しずつ働き方や考え方を見直し始めた時期について書こうと思います。
