【借金3000万男の記録】
第19話 家族のような時間
彼女との関係が始まってから、返済のスピード自体は、実はそれほど変わりませんでした。
交際費を返済に回すようになったとはいえ、劇的に金額が増えたわけではありません。それでも、僕の中では、大きな変化がありました。
心に、余裕ができたんです。
これまでの返済は、常にどこか焦りと隣り合わせでした。「早く終わらせなきゃ」「もっとペースを上げなきゃ」。数字を追いかけることに必死で、心のどこかが、いつも張り詰めていました。
でも、彼女という理解者ができてから、その焦りが、少しずつ和らいでいきました。
返済ペースは同じでも、「一人で抱えている」という感覚がなくなったんです。彼女は借金を肩代わりしてくれたわけではありません。ただ、その事実を知った上で、隣にいてくれる。それだけで、気持ちの持ちようが、これほど変わるものかと驚きました。
そして、この心の余裕は、思いがけないところにも影響を与えました。
子供と会う時間が、少しずつ増えていったんです。
以前の僕は、正直、余裕がありませんでした。数字を追いかけることに必死で、たまに子供に会えても、心のどこかで焦りを抱えたまま接していたと思います。楽しい時間のはずなのに、頭の片隅では常に何かに追われている。そんな状態でした。
でも、心に余裕ができてから、子供と過ごす時間の質そのものが、変わっていきました。
焦りを子供に感じさせることなく、純粋にその時間を楽しめるようになったんです。そのせいなのか、会える頻度も、「たまに」から、もう少し安定した形へと、少しずつ変わっていきました。
そして、この時期、もう一つ嬉しい変化がありました。
子供と彼女が、少しずつ仲良くなっていったんです。
最初は、僕も緊張していました。彼女を子供に紹介する時、どう受け止められるか、正直不安がありました。でも、彼女は自然体で、子供に対しても、特別に気を遣いすぎることも、逆に距離を置きすぎることもなく、ちょうどいい距離感で接してくれました。
一緒に出かけた時、子供が彼女に懐いて、笑い合っている姿を見た瞬間のことは、今でもよく覚えています。
胸が、じんわりと温かくなりました。
離婚を経験し、子供とはたまにしか会えない期間が続き、数字だけを追いかけて孤独になっていた僕にとって、この光景は、思い描いていた以上のものでした。
「家族」という言葉を使うのは、まだ早いかもしれません。それでも、この三人で過ごす時間が、少しずつ、僕にとって大切なものになっていきました。
借金という重荷は、まだ残っています。返済のペースも、劇的に速くなったわけではありません。
それでも、この時期の僕は、これまでの人生の中で、一番穏やかな気持ちで日々を過ごせていたと思います。数字だけを追いかけていた頃には、絶対に想像できなかった景色でした。
次回は、この穏やかな日々の先に、僕が仕事や返済に対して、どんな新しい目標を持つようになったのかについて書こうと思います。
