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おじさんの若さ炸裂。「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」感想 

 見てきました。
 いいところもありましたが、はっきり失敗作だと思います。

 最大の失敗は、キャスティングです。なぜ旧知のおじさんを使った!若者を当事者キャスティングせえ!と言いたいです。
 主演俳優に恨みはないですが、はっきりこの役には合ってないと思いす。まず、アップで画面が持つ顔をしていない、もしくは持つ撮り方をしていない。
 終盤のアップが多用されるシーンでは、なんかいたたまれなくなって、画面の隅の方を見てました。
 何より、若葉竜也と同年代には見えないでしょ。
 もちろん、おじさんにはおじさんの美しさがあるけど、それは若者の美しさと並べてしまうと儚く消えてしまう類のものなんです。おじさんは儚いんです。同じおじさんとして、その辺を配慮して撮影して欲しかったと思います。

 そして、これは単に美醜の問題だけで言ってるのではなく、今作のテーマであろう「既存の音楽の枠組みに呑まれまいと足掻く若者たちの姿」をおじさんがやったら、それは「あの頃」を懐かしく思い出すノスタルジーにしかならんですよ。そんなの知らねえよって。
 なぜ、高円寺の路上から引きずって来てでも若者をキャスティングしなかったんでしょうか。監督の視点が、あの頃の若者視点ではなく、現在からあの頃を見る視点なのかな、とも思います。やっぱりノスタルジーなんですかね。

 S-TORA役の大森南朋も、自分のライブハウスでなんか気の利いたことを言いますが、同じく宮藤官九郎脚本の「タイガー&ドラゴン」で大森自身が演じてた「ヤバい」を連呼する胡散臭いプロデューサーと同じ人にしか見えないです。

 ヒロミ=江戸アケミ役の中村獅童もなんか自分なりのロック論をぶちますが、あれは三十前くらいの若者が先行きもわからず身体でぶち当たって体得した感覚を吐き出すからいいんでしょう。
 五十過ぎのおじさんが感慨深く言ったら、それはおじさんの濃密な人生経験の賜物でしかなく、今そこでにパッと散ってる青春の火花にはならんのです。NHKの「プロフェッショナルの流儀」の1シーンに見えるわ。

 まだ名前のない、なんなら名付けを拒否する新しい波の物語に、既に名を成した有名おじさん俳優をキャスティングする意味は何?と問いたい。バチバチやってる現場におじさん友達を連れてくるなよって言いたいです。

 キャスティング以外にも、演出にも違和感があります。
 途中、別々の場所にいる人が順番にリレーして歌う演出があるけど、缶コーヒーのコマーシャルか!「明日があるさ」じゃねーんだよ、気持ちわりいな。
 並んで記念写真も取れないような連中が、あんないい感じにキレイに順番に歌えるなんて無理がないすか。
 和気あいあいするなってんじゃないんです。あんな村の青年会みたいな和気あいあいの仕方は無いでしょ、ってことです。
 個人的には「教祖誕生」で、教団を讃える歌を信者たちが自然に合唱し出す爽やか気持ち悪いシーンを思い出しました。
 他にも、主人公が第四の壁を破って観客に語り掛けてくるシーンやカメラが現在と過去を行き来するシーンも唐突過ぎて、正直「監督がストーリーテリングを持て余してるな」と感じました。
 別にドキュメンタリータッチである必要はないですが、ここまで劇映画劇映画した画を撮るには監督の力量が不足してると思います。
 こんな小技を使うくらいなら、愚直に手持ちカメラで被写体に肉薄するほど寄って撮る方が良かったんじゃないですかね。実際に当時のカメラマンがそうだったように。
 画面の説明は後からナレーションを被せればいい。幸い、監督はナレーション、得意だし。

 ストーリーの流れも未整理やなぁ。
 今まで特に何の出番もなかったギタリストが、いきなりやる気を出して次の瞬間消えてしまう。あれ、なんだったんですかね。
 「バンドのフロントマンの肥大したエゴが他のメンバーのプレッシャーとなって飛ばせたんだな」って、よくあるバンド青春もののテンプレートを観客が勝手に当てはめて納得すればいいんですかね?なろう系か?

 ボロクソ言いましたが、若いキャストは良かったです。
 特に仲野太賀が最高でした。
馬鹿なのかカシコなのか。冷静なのか狂ってるのか。裸で微笑みながら説教するシーンにはカリスマ誕生を感じました。
 若葉竜也も「こいつは途中で折れるだろうな」という可愛らしさと脆さとを体現してて良かったです。
 間宮祥太朗は、クールが過ぎてマヌケに見えるギリギリラインの綱渡りが上手くいってたと思います。ここら辺は脚本のバランスの妙かもしれないです。

 演奏シーンもカッコよく、見た意義はありましたが、監督と被写体の距離感に違和感が残る作品でした。
 思うに、監督がある意味当事者すぎたのかもしれないです。
 全く別の職人監督が取るか、もしくは当時を全く知らない若い監督がとってればもっとヒリヒリしてたであろう、当時の空気を再構築できたんじゃないか、という気がします。

※ TBSラジオ「アフターシックスジャンクション」内の映画評コーナー「ムービーウォッチメン」に送ったけど読まれなかったメールを再利用。

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