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藤原基央が撒いた種に、相対性理論が水を与え、令和に華開いた至高のアイドルシューゲイザー。 『サンフェーデッド(2025)』 / 初星学園 (篠澤広)

自分は2000年代とともに青春を過ごした世代だが、その後の邦楽界の動きで特に興味深かったのは、2010年代初頭から徐々に下北系のギターロックがオタク文化と合流していったこと。

これは私の見立てでは「クラスの2軍と3軍の連合」というイメージ。

このハブというか発端になったのは、間違いなく藤原基央(BUMP OF CHICKEN)の存在である。


少なくとも2000年代の終わり頃までは、スクールカーストのパワーバランスに倣った「異性にモテたかったら漫画やアニメやゲームの話は禁句」という不文律が日本中のティーンエイジャーの常識だった。

カースト1軍で青春を謳歌するBボーイやギャル。

カースト3軍のオタクと喪女。

そのどちらにも属さない2軍。


3軍の面々は完全に開き直って駅前のアニメイトでオタ友と待ち合わせとかしながらむしろ賢く過ごした。「三次元のリアルな女子という存在はこの世に無きもの」として、アニメ、ゲーム、アイドルや声優の推し活で人生の充実を図った。

2軍の面々は「不良っぽさ」に対する漠然とした憧れを持ちつつ、マッチョな選民思想が支配する1軍よりも、民主的かつ文化的な3軍側に実はシンパシーを感じていた。
反面「周りからオタクだとは思われたくない」というジレンマも抱え、実は『名探偵コナン』を毎週欠かさず観ている自分を隠して、3軍認定を恐れながら学生生活を過ごし、Bボーイやギャル達の目が届かない上にカッコもつきそうな古着屋やライブハウス、ミニシアターに自分たちのパーソナリティと居場所を見出した。


そこに登場したのがBUMP OF CHICKENである。

BUMP OF CHICKENは下北沢の老舗レーベル、ハイラインレコーズ周辺のインディーシーンの先鋒としてメジャーに進出し、あれよあれよと時代の寵児となった。

フロントマンの藤原基央はテレビゲームを愛し、綾波レイに『アルエ(1999)』を捧げる、悪ぶらないし虚勢も張らない、自らのギークな側面を明け透けに押し出していくニューノーマルなロックミュージシャンだった。

何より新しかったのは、そんな藤原基央がとにかく「一部界隈の女子に熱烈にモテまくった」という事実。

目鼻立ちクッキリ推し界隈からは若干ネガティブなニュアンスで「雰囲気イケメンの元祖」として標的にされやすい藤原だが、好きな人はとにかく狂信的に好きみたいな塩顔男子のパイオニアであり、噂レベルでは当時の芸能界の美女たちとの健康的な浮き名は数知れない。単に古着とNハリウッドを難なく着こなした本人のナチュラルオシャレな魅力ももちろんあったが。


オタク気質を包み隠すことなくモテを実現し、さらに本業でも天下を取って市民権を得た藤原基央の存在のおかげで、1軍と3軍の板挟みで抑圧されていた2軍の面々は、オタクっぽさに比重を傾けることに抵抗感が薄まった。これは当時2軍に属していたティーンエイジャーたちにとっては驚天動地のパラダイムシフトだった。
「あ、やっとジブリとかテイルズの話しても大丈夫かも」みたいな。

(藤原基央本人が意図せずとも)こうして形成された「クラスの2軍3軍連合軍」は、野外フェスで音楽も聴くし、オシャレもするし、漫画読んでアニメも観る、というアウトドアとインドアの程良いハイブリッド層として再構築された。
彼らは単純な頭数という意味でもクラスの1軍たちが形成する文化圏の規模感を大きく上回っただけでなく、1軍たちがクラブで夜遊びをしている当時にいち早くネット文化にコミットし、2ちゃんねるやニコニコ動画のボリュームゾーンを形成して2010年代初頭には目に見えてネット言論/ネット世論の覇権を取った。


そこに追い打ちをかけるように現れたのが相対性理論。

エッジーなバンドサウンドと美少女アニメ/ボカロライクなウィスパーボイスがシームレスに融合した新世代のサウンドで業界の話題を一挙に攫った同バンドは、その強烈なインパクトで邦楽史に替えの効かないマイルストーンを刻んだ。

相対性理論の成功で世間のオタク文化に対する前時代的な偏見はさらに緩和され、その空気感は後にニコ動出身の米津玄師やAdoらが違和感無くメインストリームの一角を担う土壌となった。

この一連の動向によって1軍マターだったヒップホップは『フリースタイルダンジョン(2015〜)』まで、ギャル文化は現在のY2Kリバイバルまでの長い冬の時代を迎えることになる。

今やオシャレな俳優やアイドルが「逆張りではなく」アニメ愛やゲーム愛を語るのがごく日常的な光景になっているが、それは元を辿れば藤原基央と相対性理論の革命的な功績に起因している。
まさに『グロリアスレボリューション(2000)』であり『四角革命(2009)』だったのである。なんつって。

こうしてゼロ年代に藤原基央が種を蒔き、テン年代に相対性理論が水を与え、オルタナティブロックとオタク文化の総決算として現代に華開いたのが、もはや説明不要の『サンフェーデッド(2025)』である。

サンフェーデッド(2025) / 初星学園(篠澤広)

疾走するシューゲイズギター。
ディストーションマシマシの爆発音みたいなドラム。
やくしまるえつこ、巡音ルカ、ラブサマちゃん系譜のウィスパーボイス。
バッチリ全体を覆うエモくてローファイなサウンドメイク。

ハイラインレコーズ秋葉原店、いやアニメイト下北沢店のテーマソングとでも形容すべき至高のキラーチューン。
BUMP OF CHICKENとCONDOR44とアゴアニキと相対性理論の全部乗せみたいなミクスチャー。これこそまさに今の若い世代の勘所って感じ。
TikTok的なバズ文化とは全く別ベクトルの、令和日本のサブカルチャーアンセム。


本楽曲はスマホ・PC用のアイドル育成シミュレーションゲーム『学園アイドルマスター』に登場するアイドルキャラ、篠澤広(しのさわひろ、CV:川村玲奈)のソロ楽曲として2025年に公開(シングルリリースは翌年)され、「ゲーム内アイドルソングとは思えない」ガチンコ過ぎるシューゲイズナンバーとしてゲーマー界隈のみならずコアな音楽リスナーたちの間でも大きな話題となった。


作詞作曲は長谷川白紙(はせがわはくし)。
2023年に日本人で初めてBrainfeederと契約したアーティストであり、2026年現在において邦楽業界とフライング・ロータスの唯一の接点となっている奇才作曲家である。
普段の本人名義の楽曲群はもっとアヴァンなブレイクコアだが、『サンフェーデッド(2025)』みたいなトレンドの真芯をガッチリ掴むようなサウンドも狙って作れちゃうっていうのがやっぱり底知れない。

けど決して「この感じでしょ?」みたいな置きにいってる感じは無くて、音割れ寸前の歪みまくったギターもドラムも、聴き取れないぐらいに囁かれる歌声も、猛烈に心地良いブレイクも、ディティールがあらゆる面においてラディカルで抜かり無く、ちゃんと本気で作ってるのが伝わってくる。
コンビニのカップラーメンコーナーに行ったら半分ぐらいは辛い系みたいな刺激だらけの現代だからこそ、このくらいの振り切り具合の方が気持ち良い。最高に気持ち良い。


そもそもこの曲をアイドルソングとして採用したバンダイナムコの英断にも脱帽.......ん?....ナムコ?

やっぱりね。テイルズだもん。ジアビスだも。BUMP OF CHICKENだもん。

ちなみに藤原基央は千葉育ちだけど、生まれは秋田県。

篠澤広も秋田県出身なんです。

これって果たして偶然でしょうか。

なんですかこの都市伝説みたいな締め方。

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