センチメンタルに疾走する平成の黄昏。『LSC(2016)』 / ラブリーサマーちゃん
ラブリーサマーちゃん(本名:今泉愛夏)は1995年生まれ。東京都出身のシンガーソングライター。
一人でギター、ベース、ピアノ、シンセサイザーなどあらゆる楽器をこなすマルチプレイヤーである。
18歳の頃から宅録による創作活動を始め、バンドメンバーを集う目的でSoundCloudへ自作曲のアップロードを始めるが、その楽曲のクオリティの高さでソロプロジェクトとして認知され「ネット発の宅録女子」として注目を集める。
2014年に自主制作のファーストデモCD-R『ラブリーサマーちゃんのファーストデモ』、2015年に自身が立ち上げたレーベルBubbly Summerより1stアルバム『#ラブリーミュージック』を発表。
翌2016年にビクター内のレーベルSPEEDSTAR RECORDSと契約しメジャーデビューアルバム『LSC(2016)』をリリース。
LSC(2016)/ ラブリーサマーちゃん
1990年代のUKロック/ブリットポップ、ゼロ年代のオルタナティブロック、ニコ動〜Maltine Records界隈のエレクトロをシームレスに絡め取りながら疾走する爽快感抜群のサウンド。そこにラブリーサマーちゃんがインタビュー等でよく言及するthe brilliant greenのポップスマナーも加わって、バラードナンバーなんかブリグリ再結成したの?みたいな見事な出来栄え。
デフレと就職氷河期とともに並走し、世の中や社会に期待することを諦めて、駆け落ち心中みたいな恋愛とタコツボの消費行動を拠り所に何とか前を向いてきた「失われた30年」を音像化したかのような、ポストモダンなセンチメンタルで彩られた傑作アルバム。
ラブリーサマーちゃんは歌詞や歌声の雰囲気でよく相対性理論と比較されるが、やくしまるえつこのコズミックな掴みどころのなさよりも素朴で等身大。けれど楽曲のローファイでシューゲイズな乾いた軽やかさのおかげでエモいのに胸焼けしない。
ラブリーサマーちゃんは作曲家のいずみたく(『見上げてごらん夜の星を(1960)』『いい湯だな(1965)』)を実の祖父に持つ超絶音楽サラブレッドでもあるのだが、そこに殆ど言及されないほどトレンディな独自の感性でリアルタイムのティーンエイジャーも、青春を懐古するミドルエイジも虜にし、ストリーミング世代を代表するポップアイコンとして独特の存在感を放っている。
テン年代のトップランカーがテン年代のド真ん中に放った本アルバムで、「色々あったけど世界は変わらなかったし、自分には何も起こらなかった」平成の黄昏に浸りましょう。
あなたは煙草 私はシャボン(2016)/ ラブリーサマーちゃん
水星(2016)/ ラブリーサマーちゃん
ベッドルームの夢(New Recording)(2016)/ ラブリーサマーちゃん
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