見出し画像

#09_一冊の本が物語る「場所づくり」の意義 ~AI博士が僕を『デザイナー』と呼んだ理由~

いつもこのnote乃湯を読んでくださったり、Podcast「源泉ラジオ」を聞いていただいたりしているみなさんに、今日はすこし興奮気味にご報告したい、嬉しいニュースがあります。

先日、我々が運営するコワーキングスペース・レンタルオフィス「BIRTH LAB / WORK 麻布十番」にご入居いただいている株式会社オンギガンツの代表、松田雄馬さんが新しい本を出版されました。

『DX格差 AIに仕事を奪われないための五つのスキル』

刷り上がったばかりの本を手にオフィスにやって来た松田さんからその一冊を受け取った瞬間、この喜びを分かち合いたい、伝えたいという想いが湧き起こりました。単なる「入居者さんの新刊」ではない。この本が生まれるまでの背景に、我々が「BIRTH」というライフクリエーションブランドで探求し続けている、“不動産の未来”の可能性、人と人が交わる場所の価値が、凝縮されているように思えたからです。

「熱が冷めないうちに、ぜひ話を聞かせてください!」

急いでマイクを立てて、松田さんを社長室のラジオブースに引き留めた。

今回はPodcastの緊急収録で語られた、一冊の本を巡る、ささやかで、しかし確かな共創のドキュメンタリーを皆さんにお届けします。

TAKAGIグループ本社、社長室にあるラジオブース

AI博士が語った、巨人の肩の上からの景色

松田さんーー我々は親しみを込めて「松田博士」と呼ばせてもらっているーーは、AIやDXに関して何かあればまず博士に聞こう、というのがBIRTH内での共通認識になっているほど、頼れる存在。昨年はBIRTH主催のセミナーイベントにご登壇いただくなど、TAKAGIグループとしても深く関わらせてもらっています。

そんな松田博士が率いるのが、株式会社オンギガンツ。聞きなれない社名。その由来はどんなものなのか。

「オンギガンツっていうのは『スタンディング・オン・ザ・ショルダー・オブ・ジャイアンツ (Standing on the Shoulder of Giants)』から来ています。16世紀の科学者ニュートンが『なぜあなたはそんな偉大な発見ができるんですか』と問われたときに、『自分は大したことない。ただ、先人たちの肩の上に乗っかって、彼らよりちょこっと良い景色を見ただけだ』と答えたんです。そういう人が増えたらいいよなと。ある種、人づくりをしていこうという宣言でもあるんです」

技術を広めるだけでなく、その技術を使って新しい景色を見る「人」を育てる。このフィロソフィーを聞いた時、深く頷いたのを覚えています。不動産業も「箱」という物理的な空間を提供するだけでは未来がない。その中で活動する「人」がいて、その人々の営みがあって初めて、空間は価値を持つ。我々が目指す方向と、博士の視線は同じ先を見ている。そんな予感がしました。

社名がオンギガンツとなってから、BIRTHの門を叩いてくれたのが数年前。そこから、我々の関係は少しずつ、しかし着実に育まれてきました。

なぜ今、またAIの本なのか?

今回、博士が出版されたのは、ご自身の単著としては5年ぶり、10冊目となる記念すべき一冊だそうです。正直に「すごいですね!」と感嘆を口にした途端、博士の口から飛び出したのは意外な言葉でした。

「もうAIいいかなって。皆さん聞き飽きたかなって思っていたんですよ」

コロナ禍で社会の関心が目の前のデジタル化に移り、AIに関する講演依頼もぱったりと途絶えた時期。博士は自身の役割を深く見つめ直し、「人づくり」へと大きく舵を切った。それが「オンギガンツ」の始まりであり、この本が生まれた源流だといいます。

では、なぜ「もういいかな」と思っていたAIの本を、今また世に問うたのか。その背景は、急激なDX化の波や生成AIのブームによって顕在化した、新たな課題から目を逸らすことができなかったから。

「DX格差って、生成AIを使える人と使えない人の格差とか、IT系の企業とそうじゃない人の報酬格差とか、表面的に言われがちなんですけど。そうじゃなくて、何かもっと根深いところにあるんですよ」

博士が指摘する「DX格差」の本質は、単なるスキルの有無ってことじゃない。それは、変化の時代に自らのキャリアをどう描くか、という生き方の問題にまで及んでいる。博士は、この5年間で培ってきた「人づくり」のノウハウ、個人のDX力を可視化する「松田式DXアセスメント」とそれに基づく人材育成の仕組みを、一冊の本にする必要があると感じたそうです。

「DXの本は山ほどあるんですけど、DXのキャリア本ってないんです。それって良くない状況なんですよね。会社や国はDXを推進するけれど、受け取る側の社員たちが『DXをやると自分たちにどう跳ね返ってくるのか』ということは、誰も本のなかで語っていないってことなんです」

この本は、単に「DXスキルを学びましょう」と説く教科書ではない。DXというツールを使って、いかに自分の仕事や人生を豊かにデザインしていくか。そのための「キャリア本」なのだ。

オーナーと入居企業という立場の垣根を越えた共創

そして、何を隠そう。この本には、18人のロールモデルの一人として、不肖・髙木秀邦も登場させてもらっているんです。お話をいただいた時は驚いたのですが、それ以上に当惑したのは、取り上げられ方。

博士は、「デザイナー」というカテゴリーで紹介してくれた。絵心のないこの僕がデザイナー?いったい、なぜ???

「詳しくは本を読んで欲しいのですが、髙木さんが不動産という箱を売る業界の中で『いや、箱じゃなくて中身だろう、人だろう』と舵を切られたところに惹かれたんです。髙木さんは、今まで当たり前だったことを塗り替えて、新しい世界を描いた。新しい体験のデザインをされたんです」

体験のデザイン……なんて素敵な言葉だろう。

自分たちがやってきたことは、特別なことではないかもしれない。リソースが限られる中で、「何とかしなきゃ」と必死にもがいてきただけだ。しかし、博士の視点を通すと、その「何とかしなきゃ」という中小企業の試行錯誤こそが、既存の常識を壊し、新たな価値を生む「デザイン」なのだと気づかされる。日々の業務の中で、社員と共に悩み、知恵を絞っているその営み自体が、実はとてつもなくクリエイティブな「デザイン」なのかもしれない。

オーナーである自分が、入居企業の専門家が出す本に、その専門分野のロールモデルとして登場する。これって、ちょっと面白い関係性だと思いませんか? そして、この不思議な関係性は、これだけでは終わらないんです。

BIRTHという場所が持つ「媒介力」

この本の制作には、他にもBIRTHを起点とした、嬉しい“はしごかけ”が隠されています。博士が開発した「松田式DXアセスメント」のシステムを構築したのは、BIRTHに入居する株式会社ネルコの山縣さん。そして、洗練されたブックカバー含め全体のデザインを手掛けたのは、同じくBIRTHERs(*)であるSHINWORKSの安村さん。

(*)BIRTHに入居する会員をBIRTHERs(バーサーズ)と呼んでいます

松田博士はこう言います。

「特に狙ったわけでは全くないんですよ。山縣さんにはBIRTHでお友達として仲良くさせていただいてる中で『もしよかったら一緒に仕事ができないか』っていうお話をしたし、安村さんに関しても、出版社さんから『よいデザイナーさんがいらっしゃったら紹介を』と頼まれて、『じゃあ一緒にやりましょう』ってなったんです」

この「狙っていない」というのが、何より大事に思える。

我々が展開するBIRTHは、単なるレンタルオフィスやコワーキングスペースではない。人と人が繋がり、対話し、そこから新たなコラボレーションが自然発生する「触媒」のような場所でありたいと願ってきた。

博士は、BIRTHの特性をこう分析してくれた。

「BIRTHは個人事業主や、うちのような10人前後ぐらいの規模の会社さんが結構多い。ビジネスを全部回さざるを得ない、小さいけれども全体が見えてる人がたくさんいらっしゃるので、コラボレーションがしやすいんですよね」

お互いの顔が見え、事業の全体像が見える。だからこそ、「あなたの会社のこの部分と、うちのこの技術を掛け合わせたら、面白いことができるんじゃないか」という共創の化学反応が起きやすい。大企業同士の提携のような複雑な手続きはなく、人と人との信頼関係をベースに、スピーディにプロジェクトが動き出す。

BIRTHのロゴマークは「はしご」をモチーフにしている。人と人が繋がり、新たな重なりしろが増えていく。そんな願いを込めたシンボルが、この一冊の本という形で結実した。これは、BIRTHという「場所」の持つ力が、確かに機能している証拠に他ならない。まさに「BIRTH冥利に尽きる」とは、このことです。

物語が生まれる場所を増やしていく

松田博士、そしてこの素晴らしい本作りに関わった山縣さん、安村さん、本当におめでとうございます。そして、BIRTHをこんなにも豊かな物語が生まれる場所にしてくれて、心から、ありがとう。

それぞれが専門分野で深く潜り、挑戦を続けてきた仲間たち。その個々のピースが、「その時」が来た瞬間に、BIRTHという場所でカチッと音を立てて組み合わさった。僕が目の当たりにしたのは、そんな感動的な光景でした。まさに「想いの結晶」と呼ぶべき一冊です。

この『DX格差』は、ただのスキル本ではありません。

変化の激しい時代に、AIに仕事を奪われるのではないかと不安を感じているすべての人にとっての「勇気の書」であり、未来を描くための「羅針盤」になるんじゃないかと思っています。

この記事を読んでくださったあなたも、ぜひこの本を手に取ってみてください。そして、18人の物語に自分を重ね、あなた自身の新たな物語を始めるきっかけにしてくれたら、これほど嬉しいことはありません。

我々TAKAGIグループは、これからも「For “Stand by me.”」というフィロソフィーを胸に、そして「LIFE TERMINAL」を体現するBIRTHを核として、挑戦する人々が集う「場」を育んでいきたい。多くの人や物語が交差し、今回のような共創が、また一つ、また一つと生まれていくことを願って。

博士、最高のギフトをありがとうございました!


GUEST PROFILE


松田 雄馬|Yuma MATSUDA
一橋大学大学院/一橋ビジネススクール講師 大阪出身。京都大学大学院卒業後、NEC中央研究所にてオープンイノベーションを推進。MITメディアラボ、ハチソンテレコム香港、東京大学、との共同研究を経て、東北大学と共同で、脳型コンピュータプロジェクトを立ち上げ、博士号を取得した後、独立。の前身となる、合同会社アイキュベータを共同設立し、大手企業のAI/IoTを中心とした新規技術開発・事業開発を支援。現在、技術開発・人材育成・組織開発の三方から、DXに取り組む企業の経営戦略策定・実行を支援。デジタルテクノロジーとともに生きる豊かな未来を創造するための情報発信としてテレビ・ラジオにも出演し、多数の著作を執筆。

今回のnoteの元になった、松田雄馬博士とのPodcast「源泉ラジオ」緊急収録の模様は、以下のリンクからお聴きいただけます。記事には書ききれなかった、さらにディープな話や収録のライブ感をぜひお楽しみください!


いいなと思ったら応援しよう!