相次ぐボクシング事故の「構造的欠陥」 JBC関係者が証言「なぜ搬送が遅れたか」緊急リポート
リングの上では、いま何が起きているのか――。
8月2日の東京・後楽園ホール、神足茂利さんと浦川大将さん、2人のボクサーが試合後に倒れ、ともに命を落とした。さらに日本プロボクシング協会から報告されたのは、「この2年半の間にプロ加盟ジムで6人の会員が開頭手術を受け、練習生同士のスパーリングでひとり死亡していた」こと。続いてアマチュアでも、8月上旬、39歳の男性が練習後に意識を失ったままだ。日本では、昨年2月に穴口一輝さんがリング禍で死亡。今年5月には元世界王者の重岡銀次朗が重体に。ボクシングが危険なスポーツだというのは周知の事実だが、世界中で毎日のように興行がある中、これほど短期間に相次ぐ日本での事故は、単なる「不幸な偶然」では説明できない。

振り返れば、筆者は穴口さんの事故直後、「リング上だけではなく、練習でのダメージ蓄積の問題」を論じた。最も危険だと見なされているのが「スパーリング」だが、日本では「実戦と変わらないスパーをやらないと強くなれない」という風潮が強く、タイトルマッチの前に、「〇〇ラウンドのスパーリングをこなした」と豊富な練習量を誇るのが通例にすらなっている。しかし、海外の論文では、スポーツ医学、脳科学などの研究に基づいた03~08年のメリーランド大学での測定では、プロボクサー237名(うち女性は14名)を対象に、 スパーリングの量と、認知力・平衡感覚の測定をしたところ、スパーリング量が多い選手ほど脳機能の低下が確認され、医師からは強い警鐘が鳴らされていたのである。
昨年3月、独自に脳外科医に話を聞いて記事を公開したが、掲載後に一部から強い反発を受けた。業界にとっては「耳の痛い話」だったということ。さらに言えば、当時、医療関係者からも聞かれた「病院選定の不可解」も、今回の事故でも同じ問題点が浮上しており、過去記事が的外れでなかったことを証明してしまった。
それでもなお、日本のボクシング界は、「担架で運ばれる姿」を目にしたときだけ、「なぜ防げなかったのか」と白々しく言う。JBC関係者によると、「試合後に頭痛や吐き気を訴える選手は1カ月に何度もある」という。現場のシグナルを軽視してきたのは、彼らである。業界では慌てて対策案を並べたが、なぜか核心を避けた対策ばかりだ。Youtubeでこのテーマを語っている選手・関係者も多いが、彼らは一般論が大半で、起こった事故個別の検証や医学的見地に立っていない。本稿は批判を恐れず、このケースを見ての脳外科医の「提言」、JBC関係者が明かした当日現場の「なぜ搬送が遅れたか」という疑問に答える「構造的欠陥」など、誰も直視しない「死と隣り合わせの現実」を明かす。(約11700字)
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