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つなぐ海 最終章 つなぐ海

「結城さん、気ぃ付いて良かった」

そう言いながら部屋に入ってきたのは、同僚の男性職員だった。

私たちは通勤時間がだいたい同じで、
あの日も、たまたま近くを通りかかったらしい。

「びっくりしましたよ。
急に倒れるから。
このままやと車に轢かれる思って、とりあえず後部座席に乗せて、ここ連れて来たんです」

そう言われて、私は少し納得した。

介護職は、緊急事態に遭遇することが多い。

そのたびに、その場で瞬時に判断をしなければならない。

彼もきっと、
“今すぐ命に関わる状態ではない”
と判断して、
病院ではなく、まず職場へ連れて来たのだろう。

「ご迷惑おかけして、申し訳ありません……。
……重かったですよね?」

私は、少し上目遣いになりながら謝った。

「仕事で鍛えとるし。
結城さんくらいなら、余裕や。
心配せんでいいよ」
男性職員は、そう言って笑った。

その瞬間。

仕事中、彼が利用者さんを軽々お姫様抱っこしていた姿が、脳裏をよぎる。

うわっ……。
恥ずかしい……。

私は、自分の顔が一気に熱くなるのを感じた。

すると今度は、
みゆきっちと優菜ちゃんの、いたずらっぽい笑顔が頭に浮かぶ。

――もしかして。

優菜ちゃんとみゆきっち、あの世だけじゃなく、
この世でも、人を繋ごうとしてる?

こらこら……。

そんなことを考えて、一人で勝手に一喜一憂してしまう。

だけど、助けてもらったお礼くらいは、ちゃんとしたかった。

私は、少し照れながら言った。

「ありがとうございます。
今度、お礼させてください。
一緒にご飯でも行きましょう。」

二人が見極めた人なら、
きっと、間違いない。

ふと廊下へ目を向けると、
心配して集まってきてくれた利用者さんたちの歩行器や車椅子が見えた。

 私を待ってくれている人は、まだここにも居た。

私はゆっくりと体をおこした。
利用者さんの方に向かって、
大きく手を振った。



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