鼻を彩る薄紅色(1,294文字)
年齢も50歳を越えると、髪の毛を含めて体毛に白髪が増えてくる。人によっては真っ白な人もいてるよな。
俺の場合、いまだに黒と白の割合は9:1と黒が優勢である、一部を除いて……。
その一部とは──鼻毛である。
なぜか鼻毛のみ黒と白の割合が逆転している。謎すぎる。
意外に思われるかもしれんけど、鼻毛が白髪であるメリットがある。
それは「鼻毛が出てても目立たない」ということ。鼻毛が束になって飛び出してても、気付かれにくいんや。
ただしデメリットもある。それはメリットと表裏一体、生と死、コインの裏と表、あしゅら男爵の右と左、漫才のボケとツッコミのように隣り合わせみたいなもんで、自分すら鼻毛が出てることに気付かんことや。
朝、歯を磨いてる時に鏡を見ると、白い鼻毛が1cmほど出ていて、やっと気付いた。それほどまでに気付かんのや。
抜こうと思い引っ張ってみると、鼻のかなり奥の方でチクリとする。
「よくここまで育ったね、パパは嬉しいよ」などと思うこともなく抜く、容赦なく。
驚いた……
親指の先から第一関節ぐらいの長さに育ってたんや。
「独り立ちの時だな……
アリーヴェ・デルチ──」
そんなことは言わずにゴミ箱に捨てた、容赦なく。
まあまあ鼻毛の処理とは面倒なもんで、切ってもすぐに伸びてくる。1本1本抜くのは手間な上に、痛みを伴う。
そこで最近愛用してるのが、某100均で売ってる「鼻ワックス」である。
電子レンジで温め溶かし、付属の棒に絡めてすかさず鼻に突っ込む! 1分待ってワックスが固まったら一気に引き抜く!
一網打尽である。
1本1本抜くのに比べると痛みは少なく、準備と温める時間を合わせても5〜6分程度と手軽なんや。
ただし注意点もある。
温める時間をミスるとえらいことになる。時間が短いと、固くて鼻毛を絡み取ることができん。逆に時間が長いと火傷をするほど熱くなる。
経験済みや……。
その日もいつものように、パッケージの表に書いてある「電子レンジ加熱の目安」を参考に、600wで2分30秒温める。
ピ────!
ん? いつもより固いな。もう10秒……。
ピ────!
まだ固いな、レンジの調子が悪いんかな……もう10秒……。
ピ────!
まだ……20秒いってみるか……。
ピ────!
あれ? 何かいつもより柔らかいぞ……大丈夫かな?
そう思いつつ、付属の棒に絡める。意を決して鼻に突っ込む!
熱いッ! ングー! ングー! コングー! ピングー! スラムダングー!
熱くて思わず出た呻き声から「ング」の付くものを連想し、熱さから意識を逸らそうとする作戦は見事に失敗した。
最後が「ング」の付くものと違うからや。
それでも少し時間が経つと、俺の体温でワックスの温度は下がった。ワックスはいつものように固まり、鼻毛達を処刑する時間となった。
一気に引き抜く!
今回も多くの鼻毛達が処刑された。
南無……。
しかし、いつもと違う。鼻の穴の周りがヒリヒリするんや。洗面所で鏡を見た。
鼻の穴の縁が薄紅色になっている。軽い火傷である。
「赤鼻のトナカイ」ならぬ「赤鼻の穴の縁のおっちゃん」である。
谷崎潤一郎先生なら「朱鷺色の鼻の穴の縁」と表現してくれるやろか?
いや、せえへんやろ……。
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