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『黄昏は静かに輝く』高齢労働者のリアルを綴る

皆さんは、何歳まで働きたいですか?

  自立して日常生活が送れる「健康寿命」は、男性72.1年、女性74.7年
 60〜64歳の就業率は男性82.3%、女性58.6%(2019年時点)。
 年金支給が遅いので経済的に大変、さっさと辞めて好きな事をしたい、
働くのが好きだから続けたい、色々考えてしまいますね。
 労働は人生にとって重要です。
 会社の二人の社員の事を書きます。

秋の夕暮れに起こった事

 夕方、空が金色と青のコントラストに染まり幻想的な雰囲気になります。その時間をマジックアワーといいます。
 去年11月の事。そのマジックアワー、私の携帯に一本の電話が。
その電話の相手は、私の部下のキミヨさん(仮名)80歳に届く年齢で
社歴40年以上、会社で最高齢。
 業務を終えて、帰宅途中の運転で、事故を起こしたとの一報。
 私は、直ぐに現場に行く決断をしました。キミヨさんの旦那さんは、高齢で要介護、一人息子さんは、遠方に住んでいます。
 援助が必要と判断したからです。
 原因は、キミヨさんが交差点で右折しようとした時、直進車と接触したとの事でした。諸々の処理を手伝い、自宅に送りました。
 翌日連絡があり、事故当日は、大した痛みもなかったが、エアバックが開いた時の衝撃で胸部に怪我をして、鎖骨骨折、入院はしないが、2ヶ月位の療養が必要との事。
 マジックアワーとロマンチックな表現をしますが、11月の秋の夕暮れ午後4時から7時は、薄暗くなる「魔の時間」といわれ、年間で一番交通事故が多い時間帯です。皆さんもお気をつけを。

突然の長期離脱ほどイタイものは無い

 私の部署は、大所帯ではないので、突然の長期離脱は、大きな痛手です。予め、離脱が分かっているなら、対策も打てるのですが。
 私は、早速、部署内の調整と他部署の応援などの折衝をしました。
 キミヨさんの業務は出荷製品の梱包。出荷最終を担う工程なので、重要です。過去に不具合や数量の間違いを発見してもらいました。
 また、私の無理な要望も、不平不満を口にせず、周囲の相談に乗ったり、その人柄で職場を明るい雰囲気にしてくれていました。
 体も丈夫で、今回のコロナ禍でも、休みませんでした。
 思ったより早く回復し、結局、1ヶ月半程で、復帰しました。人事部は、再雇用契約の解除も検討しました。しかし、創業者の会長の意向は、「自分で辞めると言うまで雇用」。会社の創成期から苦楽を共にした事の考慮なのでしょう。私もその意見に同意しました。

更なる問題が発生

 キミヨさんが復帰して、1カ月後、60歳後半の社員、タカオさん(仮名)から相談を受けました。
 内蔵器官に腫瘍が見つかり、簡単な手術をするとの事。いつも昼食を一緒にしていますが、近頃、食欲もなさそうで、お酒好きですが、晩酌も辞めたらしく、心配していました。 
 2週間もあれば復帰出来るとの説明で、その程度なら、何とか凌げると思ったのですが、体力と気力が回復せず、しばらく休養させて欲しいとの事で、1ヶ月以上復帰にかかりました。その後の検査で、腫瘍も陰性で、精神的に安定し、元気になったように見えました。
 タカオさんの主な業務は、フォークリフトでの製品出荷準備です。また、あまり人がやりたがらない雑務や、社内の修繕、機械の修理などをしてくれていました。
 しかし、問題が。
 最近、フォークリフトの誤操作で製品を破損させたり、普通にやれていた作業の段取りを忘れたり、自分の主張を言い張り、若い社員とトラブルになる事も。
 加齢と思われる事象の頻度が高くなったのです。

試行錯誤は続く

 法律で「企業は70歳までの就業機会確保が努力義務」が定められ、
しかも、地方都市での若い従業員の確保は難しく、シルバー人材や外国人労働者に頼るのが現状です。
 二人の例を取るように、10歳位差があっても、仕事の適応性に差があり、年齢とは関係なく、個人差があると気づきました。
 これからは、今の社内制度に固執せず、個人に合わせた労働契約が必要と感じました。
 それぞれの生活習慣、性格、業務経歴などを考慮して、能力を発揮してもらう場を設け、モチベーションを下げる事なく、無理のない仕事をしてもらう環境を作りたいと思います。
 具体的には、ミーティングで今まで以上に作業項目や段取を確認し、時間に余裕を持ってフォークリフトの運転ができるスケジュールを組みました。
 不満を持つ若い従業員や他部署への説明と理解を求めるといった難しい場面もあります。しかし、私は、長期勤続している方を人生の先輩としてリスペクトし、本人が希望するなら、長く会社の戦力として働いて欲しいと考えます。
 数年経てば、私もシルバーメンバーの仲間入りする事は確定なので、他人事ではないのです。

新たな展開

 この夏、キミヨさんから、退社の申し出がありました。
 交通事故の件があったからか、息子さんは同居を決意し、
キミヨさんは、生まれ育った町を離れることになりました。
 ささやかな退社式をしました。
 40年間会社に貢献して頂いた謝意を述べ、記念品を贈呈しました。
 笑顔で退社して頂いた事に私は安堵しました。

 タカオさんは、入社した若い外国人社員の教育をお願いしています。
 今までの経験を伝えてもらう業務が良いと感じたからです。
 私も細心の注意を払い、状況を見守っています。
 以外と上手くいっていて、ボディランゲージを含めたやり取りを見ているとおじいちゃんと孫の会話のようです。(言過ぎかな)
 キミヨさんとタカオさんの「人生のマジックアワー」が美しく輝く事を
願うばかりです。


 将来、高齢労働者を管理するAIロボットが現れるでしょうか?
 「アナタハ、ノウリョクガテイカシタノデ、モウ、コナクテイイデス。」で片付けられる社会など、御免被りたい。
 




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