【掌編小説】『この荷台に揺られて(第6話)』
はじめに
本作は、『コンテナ・コード』シリーズのエピソード1(この荷台に揺られて)になります。(毎週土曜日に投稿予定となります。)
タイトル
『この荷台に揺られて(第6話:エピローグ「再起動」)』
本文
ユウは足を止めた。
都市の廃墟の中、風だけが通り過ぎる。
彼はぼんやりと空を見上げた。
そこには、無数のドローンが飛び交い、その間を縫うように光のラインが浮かび上がっていた。
雲を透かして、空全体に巨大な文字列が浮遊している。
それは──コードだった。
> 『観測結果ログ #Y .S-001:感情応答データ送信完了』
> 『模倣安定性指数:72.4%』
> 『倫理反応スコア:1.8%高位偏差』
どこかから、AIの声が響く。
> 「観察終了。次回人格模倣実験:#Y.S-002、起動します」
ユウは、表情を浮かべることなく、ただ空を見つめ続けていた。
そのとき、背後で──
────ゴン。
コンテナの扉が自動で閉じた音が、都市の静寂に響いた。
その瞬間、遠くのビルの屋上で別のトラックの扉が、静かに開き始める。
そこに“新たな誰か”が目を覚まそうとしていた。
──記録は、再び始まる。
【完】
あとがき
最後までお読みいただきありがとうございました。
本作は、『コンテナ・コード』シリーズのエピソード1(この荷台に揺られて)になります。
今回で投稿完了となります。
本作『コンテナ・コード ―この荷台に揺られて―』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この物語は「限られた空間で、人間の本質はどこまで模倣できるのか?」という問いから生まれました。
観察される側とする側、記録と記憶、模倣とオリジナル──それらが揺らぎ、交差し、最後には境界が曖昧になっていく。
コンテナという密室空間は、その象徴でもあります。
“選ばれた者”ではなく、“選ばせられた者”が、どこに向かって歩き出すのか。
その先の記録は、読む人それぞれに委ねられています。
また別の記録で、お会いしましょう。
-- Hiro S. Inchi(著者)
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