車道の左側で殺されかけた!〜インフラなき「自転車青切符」導入がもたらす危うさ
自転車で車道の左側を走っていて、実は殺されかけたことが過去に何度かある。
それはロードバイクやピストバイクに乗っていた時である。私は昭和時代のまだ中学生だった頃から、けっこうな自転車マニアなのである。
クルマは主に走らせることを楽しみとするが、大人になってからの自転車趣味はどちらかと言えば、マニアックなスポーツ自転車をインテリアとして家の中に飾って眺めて楽しむタイプであった。
それでも眺めているだけでは勿体無いから、その高性能さを堪能しながら時々走らせていたのである。ロードバイクは、ギアやホイールなどのメカニズムの精巧さと非常に軽量であることでスピードが出るように設計されている。運動性能として軽量であることがどれほど素晴らしいかは、クルマも自転車も同じなのである。
自転車が歩道走行だった時代でも、その速度からロードバイクは車道を走行するのが常識であった。
そもそも自転車は軽車両であり、原則として車道の左側を通行するのが昔から変わることなく正しいのである。
ただ1970年に、自動車が増えて事故が多くなって危ないから、自転車の歩道走行を可能にしたのである。自転車が歩道を走行することになって、死亡事故が減ったのは言うまでもない。
そんなわけで自転車は歩道を走行するもので、信号も歩行者信号に従うと思っていた人が99%以上だったはずである。
車道を走行する自転車は、交差点では、歩行者用信号が赤でも車両用信号が青だったら自転車は進んで良いのだが、今度は自転車横断帯というこれまたややこしいものが存在する。
自転車横断帯がある場合は、車道を走行していても、一旦歩道側に寄って歩行者用信号に従わなければならないなど、誤解を生むようなルールなのだ。
だからどうしても「自転車は歩道」というイメージが強くなってしまっていて、ロードバイクは原則通り車道を走るので、本来は正しい行為のはずなのに、クルマのドライバーからは迷惑な連中とされてきたわけである。
これまで路上で肩身の狭かったロードバイク乗りには、自転車が車道を走るルールの周知は大歓迎だったに違いない。
しかし、同じ自転車マニアでも私は大反対である。
というのは、日本の道路環境は、自転車が安全に車道を走れるようには整備されていないからである。
そんなところに、幼い子を乗せたママチャリや将来ある中学生や高校生の子供たちを今回の自転車青切符導入で強制的に走らせるなど、とても正気の沙汰とは思えない。生身の身体のすぐ横を鉄の凶器が通過するのだ。
そう言うと「危険と判断すれば歩道走行可能」と言う意見が出てきそうだ。だが、その基準は誰が決めるのだ。
最終的に判断するのは、自転車を運転する本人ではなく結局は警察だ。例えば、一時停止で止まったの止まらないなど、小学生レベルの問答が起きてしまう相手である。
これはまるで小学生の頃に遊んだ「だるまさんがころんだ」で、動いたとか動いてないとかそのレベルの話に近いと思っている。
とは言え私は青切符導入を全面的に反対をしているわけではない。
車道の右側逆走とか、ながらスマホとか、イヤホンとか、信号無視とか、人が多いところの歩道の爆走などの危険行為については逆に強く取り締まってほしいものである。
だいたい自転車を車道に出すことに至ったのは、歩行者がいるのに歩道を爆走する自転車がいるからである。ならば歩道走行時に関するルールを厳しくすればそれで良かったのではないかと思うが如何だろうか。場所によってはカオスで歩道走行もできないことがあるから結局車道の方がベターであるケースもあって難しい問題ではあるが、とにかく安全な道路環境が整備されていない状態で、強制的に車道を走行させるのは大問題だ。
ロードバイクに乗っていても、車道は走り難くてしょうがない。
何が走り難いかと言えば、一番邪魔なのは路上駐車だ。
ブルーに塗られた自動車専用帯の上にも平気で路上駐車して自転車の進路を塞いでいる。
まず、ここに絶対にクルマが一瞬でも停車できないようにしなければならない。
ガードレールで完全に区切るべきである。荷物の積み下ろしであっても停車するならば、強制的に自転車専用レーンの外側にしなければならない。
要するに自転車レーンへのクルマの侵入に対して罰則を強化をすることも大事だが、物理構造的に停車できないようにすべきなのだ。
それとパーキングメーターのある箇所だ。道路の左側を延々と駐車されていては、いったい自転車はどこを走れというのか?
駐車中のクルマのドアが突然開くリスクだってあるのだ。中央側の車線を走ることになってしまうではないか。
自転車を歩道から排除したいのであれば、まず片側2車線以上あるならば、オランダやデンマークのように、1車線を潰して自転車専用レーンを作るべきだ。
環境問題の理想としては、自転車を充実させた方が良いのだから、都市部はこの際何らかの車両規制を設けるなどして少し自動車を排除する方向でも良いかもしれない。
交通量が多く、法定速度いっぱい60km/h制限の幹線道路にまで自転車を車道に出すのならば、1車線を潰してガードレールで仕切られた自転車レーンを設けるくらいしないと、いくらクルマ側のルールを厳しくしてドライバーが気をつけていても、予期せぬヒューマンエラーが起きた時に犠牲になるのは自転車なのだ。
ルールを厳格化をするならば、そのくらい気合の入ったインフラを整備をしてからである。それができないのならば、自転車を強制的に歩道の外に出すのはお預けにすべきだ。
それで冒頭の話だが、以前私はロードバイクに乗っていて、ギリギリ横を通る乗用車やトラックに引っ掛けられそうになったことがある。それも一度や二度ではない。あれはどういう神経なのか。あと数センチで接触するレベルである。
私が中高生の頃は、クルマはもっと自転車から離れて横を通過したもので、教習所でも1m以上離すように習ったはずだ。近年はそういうクルマが減った印象だ。昭和時代に比べるとクルマの全幅が15cmくらい広くなっていることもあるかもしれないが、全体的な運転技術…とうか意識の低下のような気もする。
だからこそ、クルマ側の自転車の横を通過する時の具体的なルールが追加されたのだろうが、これにも問題が出てきたので後述する。
最も酷かったのはトラックによる幅寄せである。殺人未遂と言える。そしてなぜか決まって橋の上なのだ。なぜだ?これはもう車道走行は本当にダメだと思った。
だから、いいところ30km/h巡航の自転車で車道を走るのは、かなりリスクが高いと言えるが、ロードバイク趣味の人はまだ自己責任も承知の上で技能も高く覚悟があるから良いとしよう。
しかし、10〜15km/h程度で走る自転車など、クルマから見れば生身の歩行者がフラフラと車道を歩いているようなものである。
以来、できるだけ住宅街や裏道を走り、幹線道路や橋の上を走る時はロードバイクであっても、ママチャリに近いスピードで歩道を走っていたものである。
最終的には、ロードバイクをクルマに積んで走りやすいサイクリングロードや快適に走れるコースまで運んでから走るようになった。
まあそれはスポーツの道具だから良いとして、日常の買い物で使う電動ママチャリに乗る時はゆっくり歩道走行だった。
悪法を守って命を危険に晒すくらいならば、私は確信犯でルールを破る方を選ぶ。
一方クルマの立場から、自転車の車道走行は1点だけメリットがある。
左折時の巻き込みについては、車道を走っていてもらった方が良い。
歩道をぶっ飛んできてそのまま横断歩道に侵入しようとする自転車は死角から急に現れるからである。
車道を走っていてくれれば、死角になることはなく、左折時に左に寄って自転車の進路を塞ぐことができる。
そして最大の論点、黄色いセンターラインの道路で自転車を抜けるのかという問題。
自転車を抜く時は、1m〜1.5mの間隔を開けなくてならないので、通常はセンターラインか区分線をはみ出すことになる。
よって、実質「追い越しのためのはみ出し禁止」では軽車両である自転車を抜けないというのが、どうやら法的な正解ということなのだ。
早速道路交通法改正直後に、このような場面に遭遇してしまった。
クルマを運転中、狭いイエローラインの道路で、前方に自転車が走っていたのだ。
いつもだったらイエローラインをはみ出して抜いていく場面だが……ところが、そもそもが以前からずっと違反だったのである。
追い越しについて、自転車や耕運機は除外されるとずっと思っていたのだが、それは道交法30条の内容との勘違いで、このケースでは道交法17条の違反に当たってしまうようなのだ。知らなかった。
だが、知ってしまった以上は、自転車を抜くことができない。
制限速度30km/hの道路を、10km/hで走ることになったが、幸いにしてバス停のある箇所で道が広くなっていた。自転車が左に避けてくれたので、間隔を十分にとって抜くことができた。
しかし、実に馬鹿らしい法整備だ。パトカーでさえ守れない道交法が他にも山ほどあるのだろう。
だからこの議論は、前述した小学生レベルの実に低脳な議論だ。お上に都合の良い思考停止の国民になってはいけない。
日本国民に大人としての知性があるならば、実情に合わせてグレーゾーンがあって然るべきで、それに合わせて法の方を後から変えるべきではないのか。
この程度の内容は気がついたらすぐに修正して済むことだ。
だから私は反省して、イエローラインの道に自転車がいたら、今後も安全にセンターラインをはみ出して抜くことにするだろう。
そうしないと多くの人に不利益が生じることになる。
後続車には、今にもトイレを我慢している人がいるかもしれないし、家族が病院に運ばれて一刻も早く急ぎたい人もいるかもしれないのだ。
何しろ今まで誰もが違法とは知らずにやってきていたわけで、後ろのパトカーにも何か言われたことはないし、自転車に乗っていて、私を避けたパトカーがイエローラインをカットして追い越していく場面も多々あった。なんと警察官でさえ知らなかったのだ。
しかし、ここへきて小学生レベルの屁理屈を述べる警官が乗ったパトカーが後ろにいたら大変だ。自転車の青切符についても、交通違反検挙ノルマの達成や警察の資金源調達にはきっと効率的で便利であるに違いない。
私は思う。法は人間への思いやり、優しさ、愛情をベースにするべきである。愛がないから多くの者が不利益を被り、思考停止は国家を滅ぼすであろう……。
それにしても、とりあえず良い悪いは別にして、自転車とは、都合の良い時に車両になったり歩行者になったりできる非常にグレーな乗り物であることが最大のメリットであったはずだ。自転車はその最大のメリットを失うことになった。
自己防衛策としては自転車に乗るのをやめるしかない。間違えて乗ってしまわないように電動自転車は処分する。そして、たとえ300m先のスーパーにもきっとクルマで行くことだろう。
この国の子供達のことを考えると心が痛い。
