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日本の現代住宅史における「分棟型形式」の系譜と空間論的統合:ゾーニングの無化から森山邸への到達

1. 序論:日本現代建築における制度的空間の解体と分棟的思考の要請

日本の現代建築史において、住宅空間の設計とは常に「家族という社会制度の変容」と「特異な自然・高密度な都市環境」に対する応答の歴史であった。戦後の日本における住宅計画を決定づけた「51C型(1951年)」に端を発する「nLDK」という空間構成モデルは、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)を住生活の中心に据え、その周囲に各個室を配するというヒエラルキー型のゾーニングを確立した。この空間構成は、近代的な核家族を理想的な社会の最小単位としてパッケージングし、効率的に再生産するための極めて強力な制度的装置として機能してきた。単一の大きな外殻(箱)の中に機能を分割して収めるという近代合理主義的な手法は、戦後の急速な経済成長と人口増を支えるインフラとして疑いようのない正当性を持っていた。
しかし、1970年代以降、社会構造の複雑化、個人主義の台頭、そして極限まで高密度化する都市環境に直面する中で、日本の気鋭の建築家たちはこの「単一の箱による機能的ゾーニング」に対して根源的な疑義を抱くようになる。LDKを中心とする求心的な平面計画は、家族という共同体を維持する求心力として機能する一方で、個人の自律性を阻害し、外部社会との接続をリビングという単一のフィルターに依存させる閉鎖性を孕んでいたからである。
その批判的実践の最前線として浮上したのが、「分棟型形式(Decentralized / Fragmented Typology)」である。これは、住宅を構成する諸機能を物理的、あるいは概念的に解体し、複数の独立したボリューム(棟)として敷地内に分散配置する手法を指す。本研究報告は、日本の現代建築における「分棟型住宅」の系譜を詳細に読み解き、この建築的実験が単なる造形的な形態遊戯ではなく、家族と社会、内部と外部、都市と個人の関係性を再構築するための極めて論理的かつ社会学的な探求であったことを立証するものである。
本論考では特に、2005年に竣工した西沢立衛設計の「森山邸」を現代住宅史における分棟形式のひとつの到達点として位置づけ、そこに至るまでの建築史的変遷を時系列に沿って追う。分析の結果、森山邸という特異な建築は決して突然変異的に誕生した奇想ではなく、原広司(1974年)から連なる「集落」の概念、安藤忠雄(1981年)の「物理的分断と自然への対峙」、山本理顕(1992年)の「社会学的解体」を経て醸成された豊かな土壌の上に成り立っていることを明らかにする。さらに、森山邸の空間構成が、八島正年による「ファンタジアの家Ⅱ(1999年)」が提示した【形態的アプローチ】と、妹島和世による「ハイタウン北方(1998年)」が提示した【機能的アプローチ】という、先行する2つの独立した水脈が極めて高い次元で合流・統合された歴史的結節点であるという仮説を提示し、これを包括的に論証する。

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