19分の稚内から、もう一度
⛄19分の稚内、辿り着けなかったその先へ
2024年7月のとある日の夕方、私たちは稚内駅に立っていました。
しかし、その19分後には、旭川へ戻る列車に乗らなければなりませんでした。
発車時刻をほぼ1分おきに気にしながら、親子でできたことは、稚内駅前を背景にした一枚の記念写真と、駅近くのコンビニでの買い物だけ。
駅前には涼しい風が吹き、気温は20℃。半袖のシャツでは、少し肌寒く感じるほどでした。
「宗谷岬、行きたかったな」
子どもが駅前を振り返って、ぽつりとつぶやいたその言葉が、今も耳に残っています。
「…」
私はすぐには返事できませんでした。
発車案内の放送の音が、やきに大きく聞こえていました。
稚内駅まで辿り着けた喜びと、宗谷岬に行けなかった悔しさ。
帰りの列車の中で、子どもはその両方を抱えながら、
「また来たい。リベンジしたい!」
と強い口調で言いました。
その横顔を見ながら、私は心の中で、いつか宗谷岬からの景色を一緒に見たい。
そう思わずにはいられませんでした。
⛄普通列車で行きたい理由――ゆっくり進む旅の楽しさ
学校から帰ったあと、勉強の合間に時刻表を広げて、こっそり調べ物をしている姿を、何度も見ました。
そして時折、「こんなルートなら行けるかも」と、自分で考えたプランを話してくれるのです。
私自身も、子どもの頃に青春18きっぷで乗り継ぎ旅をした経験があります。
だからこそ、その楽しさも、大変さも、よく分かっていました。
「本当に実行する気じゃないだろうな…」と内心ドキドキしながら話を聞いていたのですが、何度かの会話を経て、普通列車を乗り継げば、3日で稚内まで行けることが分かりました。
そして子どもは、はっきりと「宗谷岬まで行きたい」と言いました。
加えて「特急列車は速いから、景色が流れちゃうじゃん」と。
ただ一方で、アラフィフの私にとって正直、頭の中では「それ、若い頃の話だよな」と何度も思い、すぐにOKとは言えませんでしたが、妻からの
「一緒に行ってあげたら」
その一言で、逃げ道が塞がれた気がしました。
⛄冬の北海道という選択――不安と覚悟のはざまで
カレンダーを見ながら、これが最後のチャンスかもしれないと思いました。
子どもは1年後に受験を控えています。2026年夏以降は、しばらく長期の旅はできません。
リベンジするなら、受験後か、それとも今年の冬か。
子どもは迷わず、
「今年の冬に行っておかないと、ずーっと気になる気がする」と。
私の心の中にも、冬の北海道、そして冬の宗谷岬を見てみたいという思いがありました。
ただ、過去には新潟や秋田で、大雪による運転見合わせを経験したこともあります。
北海道はさらに厳しい冬が待っていて、正直、夏よりも辿り着ける可能性は低いかもしれません。
また辿り着けなかったらどうしよう。
その結果、子どものリベンジが果たせず、かえって悔いを残すのではないか。
そんな不安も、何度も頭をよぎりました。
それでも、親子で何度も話し合い、気象条件の不安も正直に伝えましたが、子どもの意思は変わりませんでした。
一方で、子どもが寝静まったあと、布団の中でスマホの天気予報アプリを何度も更新していました。
やったら後悔するかもしれない。でも、やらなかった後悔の方が、きっと長く残る。
そう思い、この冬に再挑戦。
これは、正しい選択なんだ。
そう思うことにしました。
⛄辿り着けるかは分からない。それでも進む意味
今も、日々、気象情報と運行状況を確認しながら、子どもと会話を重ねています。
北海道内よりも、北海道へ向かう途中の路線に、運転見合わせのリスクがありそうだ、という話もしています。
正直、当日、宗谷岬に辿り着けるかどうかは、まだ分かりません。
でも、たとえ今回も辿り着けなかったとしても、人生は長く、リベンジの機会はいくらでもあります。
「挑戦すること」と、その過程や結果から、何かを学び取ること。
19分の稚内から始まったこの物語が、どんな結末を迎えるのか。
それも含めて、親子で大切に味わっていきたいと思っています。


今回は乗れることを願って…
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