旅に出られない今だから考える、「どこからが旅なのか」
旅に出たい、と思うことがあります。
知らない土地へ行って、いつもとは違う景色を眺める。
電車に揺られながら車窓を眺めたり、初めての駅で降りたりする。
そんな時間を、私は「旅」だと思っていました。
でも、なかなか旅に出られない今、ふと考えるようになりました。
そもそも、どこからが旅なのでしょうか。
そのきっかけは、どこか遠くへ出かけた日のことではありません。
いつもの会社から、いつもの自宅へ帰る途中のことでした。
👜いつもの駅を通り過ぎて
普段の仕事帰りは、だいたい決まっています。
いつもの電車に乗って、いつもの駅で降りて、いつものように家へ帰る。
何度も繰り返している帰宅です。
けれど、その日は少しだけ変えてみました。
いつもの駅ではなく、違う駅で降りてみたのです。
たったそれだけでした。
旅行の計画を立てたわけでもなければ、遠くへ向かったわけでもありません。
目的地は、いつもと同じ自宅です。
それなのに、駅を変えただけで、いつもの帰り道とは少し違う時間が始まりました。
👜ホームの見える店で
違う駅で降りて歩いていると、気になる店を見つけました。
飲み物を飲める店でした。
私が気になったのは、何か特別なメニューがあったからではありません。
その店から、駅のホームが見えたからです。
店に入り、飲み物を飲みながらホームを眺めていました。
目の前にあるのは、少し前まで自分も立っていたような駅のホームです。
私はこれから旅行へ向かうわけではありません。
仕事を終えて、家へ帰る途中です。
それなのにホームを眺めていると、不思議とこれから旅に出るような気分になりました。
「このあと、どこかへ行く」
そんな時間の中にいるような感覚でした。
実際には、このあと家へ帰るだけなのですが。

👜変わったのは、駅ひとつ
考えてみれば、この日にしたことはそれほど大きなことではありません。
いつもと違う駅で降りただけです。
けれど、もし普段どおりの駅で降りていたら、あの店を見つけることもなかったと思います。
ホームを眺めながら飲み物を飲むことも、そこで旅に出るような気分になることもありませんでした。
日常を大きく変えたわけではありません。
ほんの少し、いつもと違う選択をしただけでした。
でも、その小さな違いの先に、今まで知らなかった場所がありました。
そう考えたとき、旅というものについて少し考え方が変わりました。
👜どこからが、旅なのだろう
これまでは、旅というと「どこへ行くか」を考えていました。
遠くへ行く。
知らない土地へ行く。
普段とは違う乗り物に乗る。
もちろん、今でもそういう旅が好きです。
でも、あの日の帰り道を思い出すと、それだけではないような気もしています。
いつもの駅ではなく、一つ違う駅で降りてみる。
知らなかった店を見つける。
そこで飲み物を飲みながら、駅のホームを眺めてみる。
すると、会社から自宅へ帰っているだけだったはずの時間に、少しだけ旅のようなものが入り込んできました。
旅になるかどうかを決めるのは、移動した距離だけではないのかもしれません。
いつもの日常から、ほんの少し外れてみる。
その小さな変化が、普段とは違う景色を見せてくれることがあります。
👜次の旅までの帰り道
もちろん、遠くへ旅に出たい気持ちは今もあります。
知らない街を歩きたいし、列車に乗って、まだ見たことのない景色も見てみたいです。
けれど、旅に出られない時間を、ただ次の旅を待つだけの時間にしなくてもいいのかもしれません。
いつもと違う駅で降りてみる。
帰り道を少し変えてみる。
気になった店に入ってみる。
そんな小さな変化だけでも、日常の景色は少し違って見えます。
あの日、ホームを眺めながら感じた「これから旅に出るような気分」は、家に帰れば終わってしまうものだと思っていました。
でも、その感覚は今も残っています。
次に遠くへ旅に出られるのがいつになるかは分かりません。
それまでの間にも、いつもの帰り道から少し外れてみようと思います。
もしかすると旅は、遠くへ出かけたところからではなく、
「今日は、いつもと違う駅で降りてみようか」
そう思ったところから、もう始まっているのかもしれません。

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