立山黒部アルペンルートの旅|特急「はくたか」に乗るための帰路で、旅が静かに終わっていった(2014年8月)
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立山黒部アルペンルートの旅|窓のない車両を選んだ日、子どもと同じ方向を見て進んだ黒部峡谷(2014年8月)|げじげじくん|旅好きのアラフィフ
宇奈月温泉のホームに入ってきた車両を見て、
子どもが少しだけ前に出ました。
いつもより一歩分だけ、足の運びが早くなります。
元京阪の特急車両だと分かると、
そのままこちらを振り返って、
何か言いかけてやめるような表情をしました。
この記事では、
立山黒部アルペンルートの帰路として組んだ、
特急「はくたか」乗車までの流れと、
その中で感じていた終わり方について振り返ります。

🚉帰るための移動ではなかった時間
宇奈月温泉から新黒部へ向かう列車の中で、
子どもは窓の外と車内を行き来するように見ていました。
座席の形や、内装の色合いに反応して、
落ち着かないというよりは、少し浮いたような状態でした。
この区間は、ただ次の乗り換えに向かうための移動でもありましたが、
それだけではない時間でもありました。
これから乗る列車に向かう途中で、
すでにひとつの体験が始まっているような感覚がありました。
🚉「はくたか」に乗るという目的
黒部から先は、
特急「はくたか」に乗ることを最初から決めていました。
効率だけを考えれば、別のルートもあったはずですが、
翌年3月に北陸新幹線が開業すると廃止になる、
この列車に乗ること自体を目的にしていました。
車内に入ると、外の光が少し柔らかく感じられました。
座席に座ると、ようやく流れの中に入ったような落ち着きが出てきます。
トンネルに入るたびに、外の景色が一度切れて、またつながる。
その繰り返しを、子どもは黙って見ていました。

🚉見ているうちに途切れていく意識
糸魚川を過ぎたあたりで、子どもはそのまま眠っていました。
さっきまで窓に向けていた視線が、
そのまま閉じられていくような自然な流れでした。
特別な区切りがあったわけではなく、
安心できる環境の中で、そのまま力が抜けていったように見えました。
こちらは、北越急行の区間を意識しながら、
できるだけ起きていようとしていましたが、
同じように眠気が近づいてきていました。

🚉もう一度だけ上がる温度
越後湯沢で上越新幹線に乗り換えると、空気が少し変わりました。
人の数も増えて、動きの速さも一段上がったように感じます。
その中で、2階建ての車両に入ると、
子どもはまた表情が変わりました。
さっきまで眠っていたのが嘘のように、
周りを見渡しています。
座席の高さや視線の位置が変わるだけで、
同じ移動でも違う体験になることを、
そのまま受け取っているようでした。

🚉終わりに向かう流れの中で
大宮に近づくにつれて、
外の景色は見慣れたものに変わっていきました。
特別なものではないはずなのに、
それまで通ってきた場所との距離が、
少しずつ埋まっていく感覚がありました。
今回の移動は、
最初から最後まで途切れることなく続いていましたが、
それぞれの区間に、小さな目的がありました。
そのひとつひとつを通過していくことで、
結果としてひとつの流れになっていたように思います。
ホームに降りたあと、
振り返るような場面はありませんでした。
次の動作にそのまま移っていく中で、
さっきまで乗っていた列車のことが、
少しずつ遠ざかっていきました。
もう乗れないものが含まれているはずなのに、
それを確かめるようなことはせず、
そのまま手放しているような感覚でした。
ただ、車内で見ていた景色や、
眠る前の視線の動きは、まだどこかに残ったままです。
(終わり)
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