【寸劇で学ぶ】社長の給料、それで大丈夫?スタートアップCEOが役員報酬で青ざめた日
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はじめに
「今期は予想以上に利益が出そうだ!自分の給料を上げて、モチベーションアップにつなげたい!」
「急な出費で資金繰りが厳しい…今月だけ自分の役員報酬を減らして乗り切れないだろうか?」
事業の成長に情熱を燃やすスタートアップの経営者であれば、一度はこう考えたことがあるのではないでしょうか。会社の状況に合わせて、自分の報酬を柔軟に決めたいと思うのは当然のことです。
しかし、その「ちょっとした変更」が、後で思わぬ税務リスクとなって会社に重くのしかかる可能性があることをご存知でしょうか?
今回は、スタートアップ経営者が直面しがちな「役員報酬の決め方と、その税務リスク」について、社長が税理士に相談し解決していく様子を寸劇を交えながら分かりやすく解説していきます。
この記事を読めば、
役員報酬に関する基本的な税務ルールがわかる
知らずにやってしまいがちな失敗パターンがわかる
税理士に相談する具体的なメリットやイメージが湧く
など、あなたの会社のキャッシュフローを守り、健全な成長を後押しするヒントが得られるはずです。
寸劇:田中社長、税理士事務所の扉を叩く
【登場人物】
👨🚀 田中社長: 勢いと情熱で事業を拡大中のスタートアップCEO。税務のことは少し苦手。
🌸 佐藤秘書: 社長を心配し、必死でサポートするしっかり者の秘書。専門知識はない。
👨🏫 鈴木税理士: 冷静かつ的確なアドバイスをくれる、頼れるプロフェッショナル税理士。
(株式会社田中フロンティア・オフィスにて)
👨🚀「佐藤さん、見てくれこのグラフ!今期の売上、計画を大幅に上回りそうだ!これも全部、俺とみんなが頑張ったおかげだな!」
🌸「社長、すごいですね!本当におめでとうございます!」
👨🚀「ああ!そこでだ。これだけ利益が出るんだから、俺の役員報酬を今月からドカンとアップしようと思う!月50万円増額だ!これで来期の開発資金のための個人的な貯金もできるし、モチベーションも最高潮だ!」
🌸「えっ!?今からですか?社長、そんなに急に報酬を変えても大丈夫なんでしょうか…。以前、経理の本で『役員の給料は勝手に変えられない』みたいなことが書いてあったような…。」
👨🚀「ん?そうなのか?でも、俺は社長だし、俺の会社の金だろ?利益が出た分、報酬として受け取るのは当然じゃないか?」
🌸「そうかもしれませんが…。もし後から税務署に『これは経費として認めません』なんて言われたら、すごい金額の税金を追加で払うことになったりしませんか…?心配です…。」
👨🚀「うっ…た、確かに…。税務署からお尋ねが来るのは避けたいな。どうすればいいんだ…。」
🌸「確か、知り合いの経営者の方が『スタートアップに強い』と話していた税理士さんがいました。一度、専門家の方に相談してみませんか?今の私たちの知識だけで判断するのは危険な気がします。」
👨🚀「…そうだな。佐藤さんの言う通りだ。勢いだけで突っ走るところだった。よし、すぐにアポイントを取ってくれ!」
(数日後・鈴木税理士事務所にて)
👨🏫「田中社長、はじめまして。税理士の鈴木です。本日はどのようなご相談でしょうか?」
👨🚀「鈴木先生、はじめまして!実は、今期の業績が好調でして、自分の役員報酬を今月から増額したいと考えているんです。ですが、秘書に止められまして…。本当に問題があるのか、教えていただきたく馳せ参じました。」
👨🏫「なるほど、業績が好調なのは素晴らしいことですね。おめでとうございます。…そして、佐藤秘書さんのご判断は、非常に的確だったと言えます。もしそのまま役員報酬を増額していたら、会社は大きな損をしていた可能性がありました。」
👨🚀「ええっ!?そ、そんなにですか!?」
👨🏫「はい。法人税法では、役員報酬には厳格なルールがあるんです。特に重要なのが『定期同額給与』という考え方です。これは、『事業年度を通じて、毎月同じ金額の給与を支払わなければならない』という原則です。」
👨🚀「毎月、同じ金額…?」
👨🏫「その通りです。もし事業年度の途中で田中社長がご自身の判断で報酬を増額した場合、その増額した部分の金額は、会社の経費(専門用語で『損金』と言います)として認められないのです。」
👨🚀「経費として認められない…?どういうことですか?」
👨🏫「例えば、増額した50万円を会社から社長に支払ったとします。会社の現金は50万円減りますよね。しかし、税金の計算上は、その50万円は経費ではなかったことにされてしまうのです。結果として、払わなくてよかったはずの法人税を、その50万円分に対して支払うことになってしまいます。まさに踏んだり蹴ったりな状態です。」
👨🚀「ひえぇ…!危なかった…。知らずにやっていたら、利益が減る上に、余計な税金まで払うところだったんですね。佐藤さんと先生のおかげで助かりました…!」
👨🏫「ご安心ください。そういったリスクを未然に防ぐのが我々税理士の仕事です。どうすればよかったのか、そして今後どうすべきか、一緒に考えていきましょう。」
👨🚀「はい!ぜひお願いします、先生!」
田中社長は、自分の判断の危うさを知り、心から安堵すると同時に、目の前の頼れる専門家に全幅の信頼を寄せるのだった。
CEOが抱えていた課題・不安の正体は?(税務上の論点解説)
寸劇で田中社長がやろうとしていた「期中の役員報酬の増額」。これがなぜ問題なのでしょうか?
鈴木税理士が指摘した通り、カギとなるのは「定期同額給与」というルールです。
これは、役員が好き勝手に自分の給料を操作して、会社の利益を不当に調整することを防ぐために設けられています。例えば、決算間際に「利益が出すぎたから、役員報酬を増やして利益を圧縮しよう」というような行為を防止するためのルールです。
このルールを守らずに支払われた報酬は、税法上「損金不算入」となります。
これは、会計上は費用として計上していても、税金の計算上は経費として扱われないということです。
【損金不算入の恐ろしさ】
会社: 役員に給料を支払って現金が減るのに、法人税の計算上は経費にならないため、法人税が減らない。
役員: 受け取った給料に対して、通常通り所得税や住民税が課税される。
つまり、会社と個人の両方で税負担が発生し、グループ全体として大きなキャッシュアウトにつながってしまうのです。田中社長が青ざめたのも無理はありません。
なぜ、その課題に直面したのか?(スタートアップ特有の背景)
田中社長のように、多くのスタートアップ経営者が同様の課題に直面しがちです。その背景には、スタートアップ特有の事情があります。
事業の急成長と変動: スタートアップは事業の浮き沈みが激しく、売上や利益が期初に立てた計画通りに進まないことが多々あります。そのため、「思ったより利益が出た」「資金繰りが厳しい」といった状況に応じて、柔軟に役員報酬を変動させたいというニーズが生まれやすいのです。
管理体制の未整備: 創業期は、経営者が営業から開発、採用までプレイングマネージャーとして走り回ることが多く、バックオフィス体制の構築が後回しになりがちです。経理や税務の専門知識を持つ人材が社内にいないため、田中社長のように税務リスクを認識しないまま意思決定をしてしまうケースが少なくありません。
「社長=会社」という意識: 特にオーナー社長の場合、「自分の給料は自分で決めて当たり前」という意識が強く、そこに税法上の制約があるという発想に至りにくいことがあります。
これらの背景が重なり、「良かれと思って」行った役員報酬の変更が、意図せずして会社に不利益をもたらす結果につながってしまうのです。
税理士はどう解決に導いたか?(具体的なアドバイスと対策)
では、鈴木税理士は具体的にどのような解決策を提示したのでしょうか。ここがプロの腕の見せ所です。
役員報酬を変更できるタイミングを伝える
大原則として、役員報酬の金額を変更できるのは「事業年度開始の日から3ヶ月以内」です。この期間内であれば、株主総会の決議などを経て、その事業年度の役員報酬を新たな金額に設定することができます。このタイミングを逃すと、原則としてその期はずっと同じ金額を払い続けなければなりません。来期に向けた最適な役員報酬額のシミュレーションを提案
「では、来期はいくらにすればいいのか?」という問いに対し、税理士は単に金額を決めるだけではありません。会社の利益計画
社長個人の所得税・住民税の税率
社会保険料の負担額
これらを総合的にシミュレーションし、「会社と個人の手残りが最大化される最適なバランス」の役員報酬額を提案します。高すぎれば個人の税負担が、低すぎれば会社の法人税負担が重くなるため、このバランス設計が非常に重要です。
賞与を支給したい場合の「事前確定届出給与」の活用
「どうしても賞与(ボーナス)という形で報酬を出したい」という場合のために、「事前確定届出給与」という制度があります。これは、「いつ、誰に、いくら支払うか」を、事前に税務署へ届け出ることで、役員への賞与を経費(損金)として認めてもらう制度です。ただし、届出た日付や金額と1円でも違うと全額が損金不算入になる厳しいルールがあるため、税理士と相談しながら慎重に進める必要があります。
鈴木税理士はこれらの対策を提示し、「来期の事業年度が始まる2ヶ月前になったら、またご一緒に来期の利益計画を基に役員報酬を決めましょう」と、具体的な次のアクションを約束しました。
まとめ・税理士への相談は、成長への近道
今回、田中社長は寸でのところで危機を回避することができました。もし、あのまま独断で役員報酬を変更していたら、得られたはずの利益の多くを、余計な税金として失っていたかもしれません。
役員報酬の決定は、単なる給与設定ではありません。それは、会社のキャッシュフローを左右し、将来の成長投資の原資を確保するための重要な「税務戦略」なのです。
税務の課題を「よくわからないから」と後回しにすると、気づかぬうちに大きなリスクを抱え込んでしまいます。しかし、早期に専門家である税理士に相談することで、それらのリスクを回避し、むしろ積極的に税務上のメリットを活用して事業を加速させることが可能です。
税理士は、決算書を作るだけの「コスト」ではありません。あなたの会社の未来を一緒に考え、財務的な側面から成長を力強くサポートする「パートナー」です。
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