「減薬」という、小さくて大きな一歩。
8月4日、病院へ行ってきた。
いつもの診察。
いつもの待合室。
いつもの先生。
でも今日は、一つだけ違うことがあった。
「減薬の相談をしてみよう。」
そう思って診察室に入った。
正直、もう少し先の話だと思っていた。
「まだ様子を見ましょう。」
そう言われても仕方ないと、どこかで覚悟していた。
だから先生が、
「じゃあ、減らして様子を見ましょうか。」
そう穏やかに言った瞬間、一瞬だけ時間が止まったような気がした。
あまりにも自然で、あまりにもあっさりしていて。
「え、いいんですか?」
そんな言葉が喉まで出かかった。
帰り道、私は少しだけ笑っていた。
きっと周りから見れば、いつもと変わらない一日だったと思う。
でも私にとっては違う。
薬が一つ減る。
それだけの出来事なのに、心は驚くほど軽かった。
病気と向き合っていると、「何も変わらない」と感じる日がある。
昨日も今日も同じ薬を飲み、同じように体調を気にして、同じように未来を少しだけ心配する。
そんな毎日が続くと、前に進んでいるのかさえ分からなくなる。
だけど、人の人生は案外こういう小さな出来事でできているのかもしれない。
誰かにとっては些細なことでも、自分にとっては景色が少し変わるくらい大きな出来事。
今日の私は、その景色を見た。
もちろん、減薬はゴールじゃない。
ここから慎重に様子を見ながら過ごしていく。
睡眠も大切にして、体調の変化にも耳を澄ませる。
期待しすぎず、不安になりすぎず。
「今日の自分」を積み重ねていくしかない。
でも、それでいいんだと思う。
私は6歳の頃、てんかんと出会った。
あの日から今日まで、この病気は私の人生のすぐ隣にいた。
憎んだ日もある。
泣いた日もある。
「どうして私なんだろう」と、答えのない問いを何度も繰り返した。
それでも今日、先生の何気ない一言が教えてくれた。
時間はちゃんと流れていたんだ、と。
変わっていないように見えた毎日も、少しずつ私をここまで運んできてくれたんだ、と。
人生は、大きな奇跡だけが希望じゃない。
「減薬してみましょう。」
たった一言で、こんなにも心があたたかくなる日がある。
だから私は今日を忘れたくない。
未来の私がまた立ち止まったとき、「あの日は嬉しかったな」と思い出せるように。
今日という一日を、静かに心へしまっておこうと思う。
