「お母さんありがとう」と握手された日、私は泣きそうになった
合格発表の日。
娘よりも、私のほうが落ち着かなかった。
スマホを何度も見て、時計を見て。
「まだかな」と思いながら、家の中をうろうろしていた。
子どもの受験って、本人が一番大変なのはわかっているのに、
親もどこか落ち着かない。
中学生になってからの娘は、
勉強に部活に友達関係に、毎日忙しそうだった。
夜遅くまで自分の勉強机に向かう姿を見ては、
「ちゃんと寝てるのかな」と心配になり、
模試のC判定を見ては、
私まで一緒に落ち込んだ。
「親は見守るだけ」とよく言うけれど、
それが一番難しい。
そんなことを考えていたときだった。
合格発表の午前10時。娘がスマホを見て、
一瞬、固まった。
そして次の瞬間。
「受かった!!!!」
そう叫びながら、
リビングのまわりをぴょんぴょん飛び跳ねている。
その姿が、あまりにも嬉しそうで、
私は思わず笑ってしまった。
よかったね、本当によかったね。
そう声をかけようとした、そのとき。
娘が私の前に来て、
すっと手を差し出した。
「お母さん、ありがとう!」
そう言って、握手してきた。
その瞬間、胸がぎゅっとなって泣きそうになった。
私は何か特別なことをしたわけじゃない。
お弁当を作って、
送り出して、
「大丈夫だよ」と言っただけ。
それでも、
娘は「ありがとう」と言ってくれた。
「こちらこそありがとう。」
泣くのを我慢しながら、
震える声で返事をするのが精一杯。
その分握手する手に力と気持ちをたっぷり込めた。
子育てって、
正解がわからないことばかりだ。
これでよかったのかな。
あのとき、ああ言えばよかったかな。
そんなことを何度も考えてきた。
でもあの日、
飛び跳ねて喜ぶ娘の姿を見て思った。
ああ、ちゃんと頑張ってきたんだな。
この子も、私も。
子育てって、きっとこういう瞬間のためにあるのかもしれない。
そう思えた、忘れられない一日でした。
