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10歳のつどいの日に、家族の背中を見た


体育館の床は少し冷たく、空気もひんやりしていました。


「10歳のつどい」。

昔で言う二分の一成人式、と呼ばれる節目。


子どもたちが一人ずつ前に立ち、

まるで「未成年の主張」のように、

将来の夢を叫ぶ時間でした。

笑いも起きるし、

小さなどよめきも起きる。

でも、どの子も、本気でした。



息子の名前が呼ばれたとき、

私はなぜか隣に立つ夫の気配を強く感じました。

そして、息子は言いました。

「ぼくは、お父さんと同じ仕事をします!」

迷いのない声でした。

一瞬、空気が止まり、

そのあと大きな拍手が広がりました。



私は胸がいっぱいになりながら、

そっと隣を見ました。


お父さんは、少しだけ照れた顔で、

でも、はっきりと嬉しそうに笑っていました。


大げさに喜ぶわけでもなく、


涙を見せるわけでもなく、


ただ、誇らしさを隠しきれない顔。


その横顔を見て、


私はもう一度、胸が熱くなりました。



きっと息子は、

特別な場面だけを見ていたわけではない。


遅く帰る日も、

疲れてソファに座り込む日も、

それでも次の日にはまた出かけていく背中。


愚痴をこぼしながらも、

どこかで仕事の話を少し楽しそうにする声。


そんな日常の積み重ねを、

ちゃんと見ていたのだと思います。




10歳。

子どもでいて、

もう子どもだけではない年齢。


あの宣言は、

未来の職業を決めたというよりも、


「ぼくは、あの背中が好きだ」


という告白だったのかもしれません。




帰り道、息子はいつも通りでした。


「お腹すいた」と言って、

靴を脱ぎ散らかして、

今日のことを自分からはあまり話さない。


でも、夫は少しだけ歩幅がゆっくりでした。


嬉しさを噛みしめるように。


私は思いました。


同じ職業になるかどうかは、わからない。

夢は、これから何度も変わるかもしれない。


それでも、今日。


父の背中が、

息子の未来にそっと触れたこと。


そして、その瞬間を

家族で一緒に見られたこと。


それだけで、十分幸せな気持ちになりました。



そして夫は晩ごはんに、

トルティーヤを手作りして子供たちを喜ばせていました。

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