土に触れ、着物で歩き、県南の文化を味わう。「県南悠然陶芸紀行」レポート
こんにちは。ガッチ株式会社広報部です。
私たちは、日本各地の伝統工芸品の魅力を世界へ発信する専門商社・メーカーです。福島県双葉郡浪江町で生産されてきた国の伝統的工芸品「大堀相馬焼」松永窯の4代目・松永武士が始めました。事業者のみなさんや、ガッチ株式会社で働くメンバーのストーリーをお届けしています。
福島県の南部に位置する県南地域には、陶芸、庭園、茶道、着物、食など、土地の歴史と人の営みから生まれた文化が点在しています。これらを一つの旅としてつないだのが、2025年秋に実施された体験型ツアー「県南悠然陶芸紀行」です。
西郷村地域モノづくりの会が主催し、10月22日の日帰りと、11月7日から8日の1泊2日で計2回を開催しました。この記事では、10月22日の記録写真を中心に、県南の文化を「見る」だけでなく、自分の手で体験する一日の流れと、2回の実証で見えた成果をご紹介します。
点在する文化を、ひと続きの旅にする
県南地域を旅すると、大堀相馬焼の窯元、白河藩主・松平定信ゆかりの南湖公園、茶の湯、着物、白河ラーメンなど、さまざまな文化に出会えます。一つひとつに魅力があっても、個別に訪れるだけでは、それらを育ててきた土地のつながりや、現在の担い手の姿までは見えにくいことがあります。
「県南悠然陶芸紀行」は、地域の文化資源を一つの行程として編集しました。窯元で土に触れ、地域の食を囲み、着物に着替え、歴史ある庭園を歩く。体験を重ねることで、地域を観光地の一覧ではなく、人と文化がつながる場所として感じてもらうことを目指しました。
対象としたのは、首都圏を中心とする県外在住者と、日本文化に関心を持つ外国人です。2回のツアーには延べ8名が参加し、全員が福島県外から訪れました。
最初の舞台は窯元。大堀相馬焼を知る
10月22日のツアーは、大堀相馬焼の窯元から始まりました。展示された器を前に、参加者は産地や技法、現在のものづくりについて説明を受けます。

大堀相馬焼は、福島県浪江町大堀地区を中心に受け継がれてきた陶器です。2011年の東日本大震災と原子力発電所事故により、窯元は避難と移転を余儀なくされました。その後、各地で制作を再開し、技術と産地の記憶をつなぐ取り組みが続いています。
ツアーでは、完成した器だけでなく、その背景を担い手から聞く時間を設けました。工芸品を「買うもの」として見る前に、どこで、誰が、どのように受け継いできたのかを知る。それが、この旅の入り口です。
職人の手元を見て、自分の手で形をつくる
続いて、松永窯・いかりや窯で陶芸を体験しました。職人が土を扱う手元を見せ、参加者が一人ずつ器づくりに取り組みます。

説明を聞くだけでは分からなかった土のやわらかさや、形を整える難しさは、自分で手を動かすことで初めて実感できます。参加者は職人の助言を受けながら、器の形を整え、表面に模様を加えていきました。

同じ材料を使っても、手の動かし方によって形は変わります。職人が見せる工程と、参加者が試す工程を並べることで、熟練の技術とものづくりの楽しさの両方を伝える場になりました。

体験後には、地域の店舗で作品を鑑賞し、購入できる機会も設けました。手を動かしたあとにあらためて商品を見ると、器の線や厚み、仕上げの意味にも目が向きます。体験と買い物を一つの流れにすることで、工芸との関係を旅の先へ持ち帰れるようにしました。

白河の食文化を、行程の中で知る
陶芸のあとは、白河の食文化へ。ツアーでは白河ラーメンと小判鮨を行程に取り入れ、地域で受け継がれてきた食を体験しました。

食事は、移動の途中に立ち寄るだけの時間ではありません。地域の店を訪れ、店の仕事に触れ、同じ行程を歩く参加者同士が情報を交わす場でもあります。実績報告では、飲食店での消費に加え、陶芸作品の購入など、地域内での行動につながったことが確認されています。
文化体験と食事を別々のプログラムにせず、一日の時間軸に組み込んだことで、工芸、暮らし、食が同じ土地に根づいていることを感じられる構成になりました。
着物に着替え、南湖公園を歩く
午後は着物に着替え、南湖公園へ向かいました。南湖は1801年、白河藩主・松平定信が「士民共楽」の理念のもとに築いた場所です。身分を越えて人々が楽しめる場としてつくられ、現在も白河を代表する歴史文化資源として受け継がれています。

参加者は庭園と湖畔を歩き、翠楽苑で茶道を体験しました。着物、茶道、庭園を同じ場で体験することで、個別の作法や建物だけでなく、器を使う所作、空間のつくり方、季節との関係までを一つの文化として捉えられます。

午前中に自分の手で器をつくり、午後にお茶の場で器が使われる姿を見る。陶芸体験と茶道体験を一つの行程に置いたことで、器が暮らしの中で果たす役割までつながりました。


体験の外側へ、地域の店とつながる
ツアーの行程には、工房や庭園だけでなく、地域の店舗を訪れる時間も含まれています。作品を手に取り、地元の商品を知り、店の方の説明を聞くことで、参加者が自分の関心に合わせて地域との接点を増やせるようにしました。

事業の目的は、限られた時間のイベントを成立させることだけではありません。来訪者が地域で消費し、SNSをフォローし、次の訪問や購入につながる関係をつくることです。実際にツアー中には作品購入とSNSフォローが生まれ、交流人口だけでなく、その後も地域と関わる「関係人口」へつながる可能性が見えました。


217,844件に届いた発信と、2回の実証
2025年10月22日と11月7日から8日の2回には、延べ8名が参加しました。内訳は日本人5名、外国人3名で、外国人参加者を含む全員が福島県外在住者でした。
広報ではSNS広告に加え、海外旅行インフルエンサーを招聘しました。投稿の総インプレッション数は217,844件に達し、当初の目標である20万件を上回りました。参加者アンケートの満足度は、5段階評価ですべて4または5でした。
一方、発信が広く届くことと、実際の予約・参加へつながることは同じではありません。実績報告では、参加者数が当初計画を下回った点も課題として整理されています。また、外国人参加者への通訳と多言語案内、屋外行程の天候・季節への対応にも改善の余地がありました。
この事業では、成果だけでなく、次に直すべき点まで確認できました。ガッチ株式会社は、本事業に関する補助制度調査を担当しています。
季節とテーマを変え、滞在する旅へ
次の段階では、季節や参加者の関心に合わせてテーマを明確にし、多言語ガイドや通訳体制を整える方針です。あわせて、参加費の設計や高付加価値プラン、宿泊を組み込んだ滞在型プログラムを検討し、継続可能な観光モデルを目指します。
「県南悠然陶芸紀行」がつないだのは、観光スポット同士だけではありません。職人と参加者、器と茶道、歴史と現在、体験と地域での消費を、一日の旅の中で結びました。土に触れた記憶や、庭園を歩いた時間が、次の訪問や誰かへの紹介につながっていく。2回の実証は、その入口をつくる取り組みになりました。

(text.ガッチ株式会社広報部 / photo.事業記録写真)
ガッチ株式会社では、地域資源を活用した観光コンテンツ造成、補助制度調査、広報・マーケティング支援を承ります。お気軽にお問い合わせください。
