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白昼夢

泡の抜けたコーラは、もうすっかりと、生ぬるくなっていた。
何処か…から、チョコミントの香りが漂ってくる。
雨上がりの、ほんのりと湿った空気。昼下がりの、やけに気怠げな空気。

「本日ハ晴天ナリ」
誰かが忘れて帰った、トランジスタラジオが、そう言っていた。

乾いたアスファルト。残された水溜り。
枯れ方さえ忘れたまま、水溜りに咲いている、二輪の小さな花。風に揺られていた。

水溜りに映る空。蜃気楼。
からっぽのブランコは、まだ揺れている。
アスファルトには、溶けかけのソフトクリーム。甘ったるい、バニラの味がする。
撒かれた水。空に溶けていくのを眺めていた。

君は、不思議そうな顔で、僕の顔を覗きこんでいた。
「僕はね…空を、見れずにいるんだよ。
なんでだろう…?よく…わかんないや…」

君に訊かれる前に、そう答えたのは、きっと、僕の防衛本能なんだよ。
空の青さにさ、泣いてしまうのも、恥ずかしいし…何も感じないのも嫌なんだよ。
ね。どんな言葉にすれば良いのかな?
よく分かんないや…
泣き方なんか、知りもしないのに、本当におかしい話でしょ?

「君は海を見たことがあるかい?」
君は、小さく首を振る。
「まあ…そうだよね。僕もだよ。」

夏の熱を残した風が、僕らの間を、吹き抜けた。

Hello… Hello…
見渡す限り広がる空。
こんなにも…透明な空。
水溜りに浮かぶ空。
水溜り越しに見えた空。

雲が流れていく。
白い三日月は慌てん坊で、
ぼんやりと…浮かんでいた。

僕らはね、
きっとね…空も知らずにいるんだよ…

遠くで鳴っている、踏切の音。
セミの声。
色褪せたスケッチブック。
下手くそなネコの落書き。
風に揺れている。

雲が流れている。
名前も知られずに…

雲は流れていく。
行き先も告げないまま…

Hello… Hello…
「本日ハ晴天ナリ」

Hello… Hello…

白昼夢の空。
透明な空。
吸い込まれそうな空。
ひこうき雲。
屋根まで飛んで、弾けて消えていった。

白昼夢の中、夢を見た。

「世界は こんなにも綺麗だね…」
君が、そっと…呟いた。

白昼夢の空。
透明な空。

水溜りに咲いてる、二人の白い花。

僕らは、そっと…空を見た。

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