肩書きが長い人ほど、だいたいザコい。
【超訳】肩書きは能力の証明ではない。相手の想像を先回りして制圧するための、権威の演出である。
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バイヤー高橋の『人事部長 高橋』は、ただのネタ曲ではない。長すぎる肩書きの相手を前に、まだ商談も始まっていないのに、名刺交換の時点でこちらの心が折れ始める。その滑稽さと惨めさを、異様な精度で可視化した曲だ。
先方の肩書きが長い。
やたら兼任している。
漢字で畳みかけたあと、後半はカタカナで文字数を稼いでくる。
何をしている人なのか、途中からよくわからない。
まだ商談も始まっていないのに、こちらの背筋が凍る。
ここがおもしろい。
そして、おもしろいだけでは済まない。
人は、相手の実力に負ける前に、相手の「記号」に負けているからだ。

新入社員の頃、私も一度それを逆側で経験したことがある。
当時の肩書きは「アカウント・エグゼクティブ」。
横文字でカッコよく表現してされているが、ただの営業だ。
だが得意先に挨拶へ行ったら、相手がいきなり立ち上がった。
後で理由を聞いたら、その会社ではそれが、「バイスプレジデント」級の響きだったらしい。
もちろん、こちらは昨日まで学生だった営業である。
何も偉くない。
なのに、肩書きだけが先に仕事をしてしまった。
最初はこの文章を「長い肩書きあるある」で軽く笑って終えるつもりだった。でも笑えない。私の名刺も、かなりそっち側だからだ…。
肩書きの長さを笑っているつもりで、実は自分もその文字数に頼っていたのではないか。そう考えた瞬間、この話は会社あるあるではなくなった。
名刺交換で、もうマウントは始まっている

長い肩書きの何が強いのか。
本当に全部をこなしているように見えることではない。
むしろ逆だ。
本当に全部やっているなら、そんなに並べる時間はないはずだ。
代表取締役。
営業推進部長。
統括マネージャー。
戦略本部長。
イノベーション。
エバンジェリスト。
チーフ。
バイスプレジデント。
途中から意味は消える。
だが、余韻と圧だけは残る。

なぜか。
肩書きは、仕事の説明ではなく、相手の想像を先に支配する呪文だからだ。
こちらは勝手に補完する。
きっと偉いのだろう。
きっと複数部門を束ねているのだろう。
きっと自分よりずっと格上の存在なのだろう。
その補完が終わった時点で、名刺交換はもう半分終わっている。
つまり、相手がマウントを取っているというより、
こちらが肩書きの文字数に反応して、勝手に萎縮している。
ここに共感しつつも、笑えるポイントだ。
一方で、かなり本質でもある。
人は内容より先に形式に従う。
肩書きとは、その弱さを突くために、ものすごくよくできた記号なのだ。
「人事部長 高橋」がなぜこんなに強いのか
でも、あの曲の「人事部長 高橋」が実は強い。

短い。
一発でわかる。
何の人か、すぐ伝わる。
本当に強い肩書きは、実は短い。
いや、もっと言えば、本当に強い人間は、肩書きが短くなる。
自分が何者かを、余計な言葉で膨らませる必要がないからだ。
「人事部長 高橋」という名乗りには、ごまかしがない。
私はここです。
私はこれです。
その一点で立っている。
これに対して、肩書きが長い人は、しばしば「兼務」で威圧する。
私はこれもやってます。
あれも見てます。
そこも兼ねてます。
しかし、広さは深さではない。
役割を増やすことは、責任を深くすることと同義ではない。
むしろ、輪郭が曖昧だから、言葉を足しているだけのことも多い。
私には、肩書きが長い人より、「人事部長 高橋」のほうがずっと有能に見える。一つの専門職を極め、その役割に責任を持ち、その名前で立っている人間のほうが、仕事は強い。
本当に怖いのは、何でもやっているように見せる人ではない。
何をやっているかが一瞬でわかる人だ。
肩書きに負けるのは、相手が強いからではない
ここで一度、自分に返ってくる。
なぜ私たちは、長い肩書きにあんなに弱いのか。

理由は単純である。
肩書きの長さを、実力の高さとして一方的に過大評価しているからだ。
ここで思い出すのが、ブルデューのいう「象徴資本」である。人は中身だけを見ているつもりで、実際には肩書きや学歴や所属先のような記号にかなり従っている。しかも厄介なのは、それが外から強制されているというより、自分の中にしみついた判断の癖として働くことだ。
ブルデューのいうハビトゥスとは、まさにそういう「自然にそう感じてしまう身体化された感覚」である。学歴でも、資格でも、フォロワー数でも同じ。人は「記号」を見ると、相手の実体を勝手に補完してしまう。そしてその補完が終わる頃には、自分のほうが一段低い位置に立っている。
まだ何も負けていない。
なのに、なんか少しだけ言い返しにくい。
最初、私はここを「肩書きが長い人は中身がない」と乱暴に切ろうとした。
でも、それも違うと思った。実際に仕事ができる人で、肩書きが長くなってしまっている人もいる。問題は長さそのものではない。こちらが、その長さに意味以上の権威を見てしまうことだ。そこを見ないと、この話は単なる悪口で終わる。
つまり、この曲の笑いは、相手を笑っているようで、実は自分を笑っている。肩書きにやられて、すでに心を折られている自分。まだ会話も始まっていないのに、名刺の段階で敗北感(もしくは勝利の陶酔感)を抱いている。そこが痛い。だから刺さるのかもしれない。
そして、私の名刺も笑えない
ここが、いちばん他人事で済まない。
いま自分の名刺を見返すと、正直かなり厳しいと言わざをえない。
SAグループ COO
一般社団法人クレア人財育英協会 理事
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士
雇用クリーンプランナー
不動産稲門会(世話人)
一般社団法人みんなで顧問
文字が多い。資格とか所属とか多すぎる。長い肩書きを持っている人を笑いながら、自分もまた、複数の役割や立場を一枚の紙に積み上げて、「何者か」を多めに見せようとしていた節がある。
1点、弁明させてもらうなら、訳あり不動産とハラスメント対策。
普通なら一枚の名刺に同居しない仕事を、無理やり一枚に押し込めるとこうなる。説明としては正しい。嘘でもない。でも、正しいからこそ厄介だ。
これは実績の整理でもある。
同時に、防衛でもある。
私は何者なのかを、仕事そのもので伝える前に、肩書きの厚みで信頼を前借りしようとしていなかったか。
その問いは、かなり痛い。
名刺には、その人の思想が出る。
何を載せるか。
何を削るか。
どこまで説明し、どこから黙るか。
そこに、自信のありかが出る。
本当に思想で立っている人は、情報が少ない。
少なくて済むからだ。
だから、作り替えなければと思った。
そう、名刺を。
肩書きの寄せ集めではなく、
仕事の輪郭で立つ顔に。
肩書きで見せるな
結局、この話は「長い肩書きはダサい」で終わる話ではない。
もっと根が深い。
人は、相手の肩書きに萎縮する。
そして、自分もまた肩書きに寄りかかる。
つまり、両方とも同じゲームに参加しているから成立する。
相手の肩書きを読むのではなく、役割を見る。
この人は何を決められるのか。
何に責任を持つのか。
何で立っているのか。
そこだけを見る。
そして、自分もまた、肩書きで盛らない。
何者かに見せるための名刺ではなく、
何をしている人かが一発で伝わる人物であるべきだ。
長い肩書きは、だいたい鎧だ。
本当に強い人間は、肩書きがなくても、困らない。
だから、あの曲は笑える。
でも、笑って終われない。
名刺交換の場で、まだ会ってもいない相手に少しだけ縮んでしまう自分。
あるいは、自分の名刺の文字数で少しだけ強く見せようとする自分。
その両方が、見事に可視化されているからだ。
肩書きが長い人ほど、だいたいザコい。
しかし本当に弱いのは、その文字数にやられてしまうこちらかもしれない。
そこまで見えて、ようやくこの話は自分の話になる。

歌詞全文
「代表取締役 兼 営業部営業推進部長 兼 人事部統括マネージャー グローバルDX戦略推進本部長 兼 デジタルイノベーションセンター統括」
…人事部長高橋です
先方の肩書きが長すぎて 名刺交換の時点で負けている
本当に全てこなしているのか 甚だ疑問の長い肩書き
それでも効果ばつぐんで心を折られます
「ご挨拶よろしいでしょうか」
「代表取締役社長 兼 最高技術責任者 兼 海外市場開発統括室長代理 山田です」
…人事部長 高橋です
先方が色々と兼ねすぎて 何の人だかよく分からない
後半はほとんど意識なくて聞いてませんでした
「ご挨拶よろしいでしょうか」
「デジタルイノベーション戦略バイスプレジデント兼 コンシューマ事業統括プロダクト&マーケティング統括サービスコンテンツチーフエバンジェリストの鈴木です」
…人事部長 高橋です
最近は漢字ばっかりじゃなくて カタカナで文字数を稼いで来るんだ
先 先 先方の肩書きが長すぎて 長すぎて
その後の取引の流れに響きます どうしても
先 先 先方の肩書きが長すぎて 長すぎて
要求された条件 全部飲んじゃいそう 飲んじゃいそう
「代表取締役 兼 営業部営業推進部長 兼 人事部統括マネージャー グローバルDX戦略推進本部長 兼 デジタルイノベーションセンター統括」
…人事部長 高橋です
せめてもの願い事ただ一つ「噛めばいいのに 長い肩書き」
本日もそれだけを星空に願います
「ご挨拶よろしいでしょうか」
「代表取締役社長 井上です」
…えっ?
あぁ なんて良い会社なんだ(株式買っちゃおうかな)
アイラビュ御社 アイニージュー御社(アイウォンチュー御社)
短い肩書きって最高だ だから
「あ、実は別の会社もやっておりまして」
…えっ?
代表取締役社長 兼 デジタルトランスフォーメーション戦略本部長
兼 ビジネスインキュベーション推進室室長
兼 AIアーキテクチャ開発統括マネージャー 井上です
…人事部長 高橋です
僕だって昔は長い肩書きを持ってた
「わたくし 人事部長補佐 人事部長補佐」
先 先 先方の肩書きが長すぎて 長すぎて
なんだか負けているような気がしてしまっている どうしても
先 先 先方の肩書きが長すぎて 長すぎて
向こうの経費まで 全部持っちゃいそう 持っちゃいそう
「代表取締役 兼 営業部営業推進部長 兼 人事部統括マネージャー グローバルDX戦略推進本部長 兼 デジタルイノベーションセンター統括」
「代表取締役 兼 営業部営業推進部長 兼 人事部統括マネージャー グローバルDX戦略推進本部長 兼 デジタルイノベーションセンター統括」
…人事部長 高橋です
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