映画『MICHAEL』
高1のとき、「これ、聖書だこ好きそうやから聴いてみて」とニタニタしながらタカシマが話しかけてきた。
『RHYMESTER宇多丸のウィークエンドシャッフル(通称タマフル)』の"シネマハスラー"という映画批評のコーナーだった。
タカシマが教えてくれたのは、
ヘルシンキを舞台にした、ほんわかノスタルジックな雰囲気の作品に対し、ストーリーの辻褄の合わなさを激詰めし、作中で提供された食事を"下痢便スープ"とこき下ろす、傑作回だった。
その後も、この監督の作品に対して親の仇かと思うほど怒りまくって酷評する宇多丸を何度も見た。
早稲田卒でラッパーの宇多丸から繰り出されるロジックと切り口、今よりアウトローだったヒップホップカルチャー由来の言葉のチョイスの掛け合わせがすごく刺さった。
下痢便スープ回がめちゃくちゃ良くて、"シネマハスラー"に限らず、"サタデーナイトラボ"や"ア↑コガレ特集"、"ぼんやり相談室"など、タマフル内の他のコーナーもアーカイブを遡って聴いた。
当時は、今のようなラジオポッドキャストのプラットフォームが無いので、TBSのサイト内にアップされているMP3の音声をダウンロードして、ひたすら自分のWALKMANに入れ続けていた。
特に気に入っていたのが、
特集コーナー"サタデーナイトラボ"でノーナリーブスの西寺郷太が登場した『小沢一郎、マイケル・ジャクソンほぼ同一人物説』という伝説の回だ。
マイケル・ジャクソンも小沢一郎もちゃんと知らない私が聞いても面白くて、そこからノーナリーブスとマイケル・ジャクソンを聴くようになった。
今の私がポップス、シティポップを好きなのもここに由来している。考え方や表現方法、音楽の嗜好性にいたるまで、タマフルにはすごく影響を受けた。
今でもタマフルの後継ラジオのアトロク2を聴き続けているあたり、高校生のタカシマの慧眼具合が光る。
タカシマは卒業してすぐに音信不通になったので、誰も行方を知らない。たまに思い出しては会いたいと思っている。
映画『MICHAEL』について
さて、今公開されている映画『MICHAEL』だが、洋画では初の副音声上映が実施されており、そのコメンテーターをなんと西寺郷太が担当している。
私は公開初日に観に行ったので、まだ副音声上映はなくIMAXで普通に観た。
観た感想は大満足!
良かったところ
・LIVE映像の見応え
・ジャファー(マイケル役)のダンスの上手さ
・BGMのメロディーが次の曲をモチーフにしていて、マイケル好きにはたまらない
・マイケルをあまり知らない人が、人間としてのマイケルの性格や考え方を知るきっかけになる
うーんな所
※マイケルの壮絶な半生(映画が80年代までなので)を映画で描ききるためには、ストーリーをねじ曲げなければならないことは理解した上で、それでも書きたい
・ストーリーの筋書き的にノイズになるのは理解出来るが、ベリー・ゴーディJr.(モータウン創業者)との関係性が事実と違いすぎる
・父親の支配からの脱却がメインストーリーとなったことで、マイケルの葛藤が矮小化して見える
・マイケル・ジャクソンの生い立ちを知らない人にはストーリーが飛びすぎていて、ラストのカタルシスは少なかったはず
・様々な事情については理解しているが、ダイアナ・ロスやポール・マッカートニーがまったく居ないものとしてストーリーが進む寂しさ
私は、西寺郷太がマイケルが亡くなったタイミングで執筆した『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』を高校生のときに読んで、最近また上映が始まるまでに読み直した。
高校のときはそんなことなかったのだが、読んでいて何度も涙が出そうになった。
有名になりすぎて人間扱いされなくなっていく苦しさや、純粋に素晴らしい作品を作りたいというピュアなアーティスト精神が、本人や周りの著名人の伝記のセリフから伝わってきて、本当に読み直してよかった。
よくこれだけの情報を集めて、しかも読みやすい本を書いたと思う。
個人的にここのマイケルのセリフは、胸が熱くなった。

『THIS IS IT』のリハのシーンを思い出した。キーボーディストに対して、執拗に何度も感覚的な指示を出していて、空気は少しぴりついていた。
でも仕上がりを見たら誰もが納得する。
私たちも妥協の無い作品を受け取ることが出来るわけだし、ありがたい話だ。
私もマイケルを知る前は、ほとんどの人と同じでお騒がせセレブと思っていた。
そして、亡くなったことに対して"緩慢な自殺"という印象があった。
でも、『THIS IS IT』で完璧な作品を作るために一切の妥協をしない50歳のマイケルを見れば、そんな印象は一切無くなる。
話が逸れてしまったが、マイケルの生涯について知った上で映画『MICHAEL』を観ると、上記のような感想になった。
お兄さんであるジャーメインの息子なので、マイケルにとっては甥っ子のジャファー・ジャクソン。
ジャファーのダンスはすごく上手かった。Billie Jeanのイントロのダンスは半年ほど練習したらしい。
全体を通してダンスも曲も、IMAXで鑑賞してよかったし、それだけでこの映画を観た甲斐があったと思える。
また、音楽以外の部分で有名になってしまったマイケルに対して、世間のイメージを少し変えることが出来る作品なのではと思う。
この映画では上り詰めたスーパースターではなく、マイケル・ジャクソンも、売れるために、いい作品を作るために葛藤し、素晴らしい歌声とダンスを披露するいちアーティストなのだと気付かされる。
だから色んな人に観てもらいたい。私たちの世代は、上の世代よりはマイケルに対するマイナスのイメージも少ないはずだ。
しかし、友達におすすめすると音楽性ではなくて小児虐待や肌の色について聞かれることが多く、なんとも言えない気持ちになる。
また、映画のうーんな点については、存命の関係者がいることや、裁判の判決で定められた内容、近い関係者の作品に対する思い、マイケルの人生が波乱に満ち溢れているためフィルムに収まりきらない、
などの事情から仕方ないのだろう、と思った。
もしかしたら、そのへんは副音声で捕捉されたり、弁明されているかもしれない。
"ジャクソン5がなぜモータウンを離れたのか"
"あれだけ今でもみんな知っているジャクソン5が、なぜいつのまにかジャクソンズになっていたのか"
そこを描くだけでも、もうあと1時間は必要だったと思う。
ただ、それにしても作中ではジャクソン5で有名になって少ししたら、もう大人のマイケルになっていて、話が飛びすぎている。
そしてモータウンとの決裂や、モータウン25周年で『Billie Jean』のムーンウォークを披露することの意味合いも、背景を知っているかどうかで見方が160度ほど変わるので、そこももったいない。
一番気になるのは、ストーリーをうまく纏めるために作中のマイケルの葛藤が、父親の支配からの脱却に終始してしまったことだ。
家庭内の問題に矮小化して見えたのは、少し残念だった。
とはいえ、ラストの『Bad』のツアーの直前のイントロの1音目が焦らすように何度も鳴って、LIVEが始まるシーンのワクワク感で全てが吹き飛んだ。
あのシーンはめちゃくちゃニヤニヤした。一緒に観に行った知り合いに何度も何度も「観に行って良かった」と連呼していた。
そんな感じの話を身近な人と語り合いたいけれど、なかなか見つからない。インスタのストーリーでも恥ずかしながら募集したが、誰からも反応がなかった。
喋りたい気持ちが昂りすぎて、当時の高校の数学の先生(現・校長先生)の『MICHAEL』を観たというインスタの投稿にメッセージをしてしまったほどた。
2があれば楽しみですね、という話をした。
実際は、2が製作されたとしても私は観ないかもしれない。映像で直視するのはしんどいかも。
まとめ
映画が出たことで、改めてマイケル・ジャクソンの作品をたくさん聴いたり見たりして、すごくいい時間を過ごせた。
マイケル・ジャクソンの曲の好きなところは、中毒性のある独特のリズムとあの優しい声だ。
とくに、Black Or White、Smooth Criminalなんかはめっちゃいいリズム。
Rock With Youのタムのところなんかは何度繰り返して聴いたか。
音楽ど素人の私が思う、素晴らしいポップスの条件は
初めて聴くのに、「あ~!これこれ、これが、聴きたかった!!!」と感じるメロディーやリズムで、
そう考えるきっかけになったのがマイケル・ジャクソンの名曲たちだ。
ラウドロックばかり聴いてる時期もあったけど、本来好きなのは、多感な時期に繰り返し聴いてきたポップスなのかも、と思ったりした。
最後に私のマイケル・ジャクソンベスト5(しょっちゅう入れ替わります!)を発表します!
1位 Rock With You
2位 Bad
3位 Smooth Criminal
4位 Man In The Mirror
5位 Heal the World
おわり!
