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3月の俺が、4月の俺を殴りに来た

夜中、Obsidianで3月の記事を開いた。

読もうとしただけや。
ただ、過去の記事を確認しようと思っただけや。

でも、スクロールした瞬間、画面の奥が妙に暗くなった。

「……なんや?」

そう思った次の瞬間、記事の中から3月の俺が出てきた。

片手に原価計算のドス。
目ぇ血走っとる。
口元は笑ってへん。

完全に取り立て屋の顔や。

こっちは4月の俺や。

AIアプリの案を見ながら、「これ、作れそうやな」と少しだけニヤついていた。

その瞬間、3月の俺が俺の後頭部を小突いた。

お前、また同じことしとるやないか。

やめろ。

過去記事から本人が出てくるな。
Noteのアーカイブを心霊スポットにするな。


俺は3月に、ちゃんと警告していた

3月の俺は、わりと派手に痛い目を見ていた。

AIゲーム実況アプリを作った。
作れた時は、ほんまに嬉しかった。

画面の中でAIがゲームを見て、しゃべる。

「これ、いけるんちゃうか」
「ワシ、ついに未来の配信者側に回ったんちゃうか」

そんな顔をしていた。

でも、そのあと料金を見た。

2時間で2000円。

胃の奥が、氷みたいに冷えた。

さらに別の日には、AIに動画生成アプリを任せたら、裏で高額APIが動いていた。

1秒60円。
1分ちょっとで4320円。
月に回したら120万円級。

数字だけ見たら、もうアプリやない。

財布に火をつける自動装置や。

その時の俺は、ちゃんと書いていた。

作れるかどうかだけで突っ走るな。
高額APIを勝手に動かすな。
原価を見ろ。
コストを確認しろ。
自動化は正義やけど、条件次第や。

そうや。

3月の俺は、ちゃんと怒っていた。

画面の前で白目をむきながら、ちゃんと警告を書いていた。

それなのに。

4月の俺はまた、画面の前で少しニヤついていた。

「これ、作れそうやな」

コォラァ。

お前、どの口でそれ言うとんねん。


作れると、また忘れる

怖いのはここや。

何もできなかった頃は、失敗が怖い。
でも、少し作れるようになると、今度は別のものが見えなくなる。

「これ、いけるかも」
「AIに任せたら作れそうやな」
「この流れ、商品になるんちゃうか」

そう思った瞬間、頭の中で勝手に祭りが始まる。

ドンドコドンドコ鳴り出す。
脳内で提灯が並ぶ。
誰も呼んでへんのに、屋台まで出る。

で、肝心な確認が後ろに飛ぶ。

それ、1回いくらかかるんや。
誰が何分使うんや。
無料で触らせたら、どこで赤字になるんや。
手動でやった方が安くないんか。

続けた時に、財布は耐えられるんか。

そういう地味な話が、祭りの太鼓に踏み潰される。

俺は3月に、その地味な話で一回死にかけた。
なのに4月になると、また忘れかける。

人間は、失敗したら賢くなるんやない。

失敗した直後だけ、少しビビるだけや。

時間が経つと、また同じ穴の前に立つ。

「今回は大丈夫やろ」

その顔や。
その顔が一番危ない。

前回落ちた穴の前で、なぜか靴紐を結び直している。

落ちる準備、万端やないか。


過去記事が、立て札になっていた

今回、3月の記事を見返して思った。

あれは、読者に見せるためだけの記事やなかった。
未来の俺を止めるための立て札でもあった。

「ここで金が溶けた」
「ここでAIを信じすぎた」
「ここで作れることに酔った」
「ここで原価を見るのが遅れた」

そういう事故現場の看板や。

なのに俺は、その看板の横をまた通ろうとしていた。

しかも、ちょっと偉そうな顔で。

「前より分かってるし」
「前より作れるし」
「前より整ってるし」

その顔がもう危ない。

進んだ感じがすることと、同じ穴を避けられることは別や。

過去記事を書いたから、賢くなったんやない。
公開したから、成長したんやない。
スキが付いたから、同じ失敗を避けられるわけでもない。

過去記事を書いたから賢くなったんやない。

読み返して、今の自分を止めた時だけ、少し意味が出る。

そこを間違えたら、過去記事はただの墓標になる。

「ここで昔の俺が死にました」

それだけや。

そんなん、墓地の拡張工事やないか。

俺が作りたいのは、墓標コレクションやない。
次の事故現場の手前に立つ、嫌な立て札や。


笑いどころやないかい

ほんま、笑える話や。

3月の俺が、あれだけ言った。

原価を見ろ。
維持費を見ろ。
高額APIを勝手に叩かせるな。
作れるかどうかで浮かれるな。

それなのに4月の俺は、また画面の前でニヤついていた。

「これ、作れそうやな」

しかも横のタブには、3月の俺が書いた警告記事が開いたままや。

『高額APIを勝手に動かすな』
『原価を見ろ』
『コストを確認しろ』

その警告を横目に、俺は新しいアプリ案へ腕まくりしていた。

禁煙ポスターの前で、タバコに火ィつけるおっさんやないか。

その瞬間、記事の中から3月の俺が出てきた。

原価計算のドスの柄に、なぜか電卓がくくりついている。

3月の俺は、俺の後頭部を小突いた。

カチッ。

電卓の画面に、赤字でこう出た。

『再犯』

「お前、また同じことしとるやないか」

……笑いどころやないかい!

笑えや、このボケェ!!

やめろ。

そんな目で見るな。

「人間って同じ失敗を繰り返しますよね」みたいな、心理カウンセラーの顔すな。

分かっとるわ。

分かっとるけど、やるんや。

人間は、覚えたことを忘れる。
痛かったことも、少し時間が経つと薄まる。
そしてまた、目の前の「作れそう」に釣られる。

……まあ、でもな。

ほんまは怖い。

成長したつもりでも、興奮すると同じ穴に戻りかける。

前よりAIを使えるようになった。
前よりコードも触れる。
前より記事も積み上がっている。

それでも、根っこの俺はまだ危ない。

画面の前で「作れそうや」と思った瞬間、原価も運用もすっ飛ばしかける。

だから、過去の俺に殴られる必要がある。

腹立つけどな。

でも、必要や。


アンタも、過去の自分を1人呼び出せ

ほな、アンタに一個だけ言う。

AIで人生を変えたい。
副業を始めたい。
アプリを作りたい。
記事を書きたい。
商品を作りたい。

分かる。

俺も、その看板を首から下げて歩いとる側や。

でも、新しいことを始める前に、まず過去の自分を1人呼び出した方がいい。

昔の投稿でもいい。
メモでもいい。
失敗した時のスクショでもいい。
怒りながら書いた記事でもいい。

その中から、警告を1つだけ選べ。

「ここで金を溶かした」
「ここで時間を捨てた」
「ここで見栄を張った」
「ここでAIを信じすぎた」

何でもいい。

そして、今の自分に聞け。

過去に自分が書いた警告を1つ選んで、今の自分が破っていないか確認しろ。

それだけでええ。

反省文を100行書けとは言わん。
チェックリストを作れとも言わん。

過去の自分を1人だけ連れてこい。

そいつに、今の作業場を見せろ。

たぶん、嫌な顔をする。

「お前、それ前もやったぞ」

そう言われたら、そこで一回止まれ。

それが今日の一手や。


俺はまだ同じ穴に戻りかける

正直に言う。

俺はまだ、同じ穴に戻りかける。

3月に痛い目を見た。
記事にもした。
原価を見ろ、コストを見ろ、偉そうに書いた。

でも4月の俺は、また「作れるかどうか」で浮かれかける。

これが現実や。

人は、記事を書いたぐらいでは変わらん。
ただ、記事が残っていれば、未来の自分を止めることはできる。

過去の俺が、今の俺の後頭部を小突く。

腹立つ。
恥ずかしい。
でも助かる。

過去記事は、読者に見せる看板やない。

未来の俺を止める検問所でもある。

今日は、そこで一回止まれた。

……まあ、後頭部は痛いけどな。


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