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漫画40ページ作って、原作が失踪した日

40ページ作って、原作が失踪した日

おい。そこで「AIで作業が進んでるならええやん」みたいな顔して画面見とるワレ。そうや、お前や。

「10時間使っても、漫画が形になったなら資産やろ」やと?
「40ページまで出たなら、むしろ前進やろ」やと?
「AI使ってるんやから、多少の脱線はしゃあない」やと?

甘いなぁ〜……アマアマや!!

その考え、砂糖まぶした生焼けホルモンみたいなもんや。見た目だけ照ってる。匂いだけそれっぽい。でも噛んだら中が冷たい。腹壊すで。

AI制作で一番怖いのは、止まっていることやない。進んでいるように見えながら、芯から離れていくことや。

今回の俺が、まさにそれやった。

画面には漫画のページが並んでいた。P5。P6〜P10。次の5ページ。さらにP16〜P20。気づいたら、完成していた。40ページや。

俺はそれを見ていた。ちょっとだけ、制作進行みたいな顔をしていた。腕組みしてな。

「うむ。進捗、悪くない」

みたいな顔や。

誰やねん、お前。41歳、無職、貯金ゼロ寄りのおっさんが、部屋で画面見ながら、急に制作委員会の顔をしとる。

その横で、電卓だけが先に通夜を始めていた。

10時間 × 1,500円 = 15,000円

電卓は静かやった。せやけど、静かなやつほど怖い。

画面の漫画は「進んでます」みたいな顔をしている。俺も「作れてます」みたいな顔をしている。その横で電卓だけが、香典袋を持って立っとる。

誰の葬式や。

API代か?

ちゃう。

俺の制作時間や。


「これ、作れそうやな」で脳がバグった

最初はちゃんとしていた。ほんまや。

テーマも決めていた。

作れるかどうかで浮かれるな。

3月の俺が、4月の俺に警告する話や。原価を見ろ。維持費を見ろ。高額APIを勝手に叩かせるな。作れるかどうかでニヤつくな。

そういう話を漫画にするつもりやった。

ネームも作った。どこで3月の俺を出すか。どこで4月の俺が言い訳するか。どこで「お前、自分で書いた警告見えてるやろ」と読者に思わせるか。

ちゃんと考えていた。

そこまではな。

ところがや。画像生成に入った瞬間、俺の脳に妙な提灯が灯った。

1枚出る。

「お、ええやん」

5枚まとめて出る。

「お、いけるやん」

キャラもそこそこ固定できている。眼帯もまあ残っている。黒スーツも見える。劇画っぽさも出ている。

そこで俺は、言うてもうた。

これ、作れそうやな。

終わりや。この一言で、現場の安全帯が外れた。

漫画の中の4月の俺が言うはずだったセリフを、現実の俺が言うてもうた。

なにが「作れそうやな」や。お前は今、「作れるかどうかで浮かれるな」という漫画を作っとる最中やぞ。その真横で浮かれとるんやぞ。

禁煙ポスターの前でタバコ吸うどころやない。消防署の前で火炎放射器を試し撃ちしとるようなもんや。

しかも本人は、

「火力、ええ感じやな」

みたいな顔をしている。

救いようがない。いや、救いようはある。ネタにはなる。そこがまた腹立つ。

実際の作った漫画

失敗作のくせに、顔だけ決まっとる

そこからは早かった。

P5。P6〜P10。次の5ページ。さらにP16〜P20。P21〜P25。

どんどん画像を出していく。見た目は進んでいる。ページ数も増えている。漫画が完成に近づいているように見える。

でも、途中で何かがおかしくなっていた。

本来の話は、もっとシンプルやった。3月の俺があれだけ警告したのに、4月の俺がその警告記事を横に開いたまま、また新しいアプリ案にニヤつく。

その自己矛盾のギャグや。

「お前、警告そこにあるやん」

これが芯やった。

でも気づいたら、漫画は別の方向へ走っていた。AI実況アプリを実装する話。APIコストが増える話。エラーが出る話。MVPを考える話。小さく試せという話。原価は夢の敵ではないという話。

いや、分かる。話としては分かる。めちゃくちゃではない。むしろ、それっぽい。教訓もある。読める。漫画として成立している。

でも違う。

俺が作ろうとしていた話と違う。

ここが一番タチ悪い。

完全に失敗していたら、まだええ。手が六本ある。眼帯が逆どころか両目にある。黒スーツがなぜか裸エプロンになっとる。そういう明らかな事故なら、笑って捨てられる。

でも今回は違う。

そこそこ読める。そこそこ絵もいい。そこそこ話もつながっている。

失敗作のくせに、顔だけ決まっとる。中身ズレとるのに、横顔だけ映画祭や。

やめぇや。処分する手が鈍るやろが。

こっちは「これは捨てる」と決めたいのに、画面の中の俺がこっちを見てくる。

「せっかく40ページ完成まで来たんやぞ」

みたいな顔で。

うるさい。40ページまで来たんやない。P1の芯から逃げてきただけや。

ページは増えた。
原作は失踪した。
電卓だけが、俺の10時間に香典を出していた。

……笑いどころやないかい!

笑えや、このボケェ!!

……チッ。なんやその顔。

「でも、それも学びですね」みたいな、ぬるい目ぇすな。やめろ。そないな綺麗な顔で見られたら、こっちが必死こいて被っとる「失敗万歳」の提灯がベタベタに溶けるやろが。

学び?

せやな。学びや。

でもその前に、10時間死んどるんや。時給1,500円なら15,000円や。そこそこええ焼肉行ける金額やぞ。

俺は漫画を作っていた。
電卓は葬式をしていた。

この絵面を、綺麗な学びに畳むな。


AIは、道がズレてもP26を出してくる

……せやけどな。ここは笑って終わらせたらあかん。

AIはな、仕事が速い。こっちが迷子になっていても、知らん顔で次のページを出してくる。

「兄弟、道ズレとるで」とは言わん。

ただ黙って、P26の紙を差し出してくる。

それが怖いんや。

画像も出る。文章も出る。構成もそれっぽくなる。でも、失敗が失敗の顔をして来ない。

むしろ「進捗です」みたいな顔で来る。ちゃんとページが増える。ちゃんと見た目が整う。ちゃんと形になっていく。

そのせいで、芯からズレていることに気づくのが遅れる。

今回の俺がそうやった。漫画のテーマは、「作れるかどうかで浮かれるな」だった。なのに俺は、「作れるやん」で浮かれた。

漫画の中で4月の俺を説教するはずが、現実の俺が4月の俺になっていた。

これがAI制作の怖いところや。

出力が速いから、失敗も速い。

しかも、速い失敗は気持ちええ。ここがまたタチ悪い。

ボタンを押せば絵が出る。直せば次が出る。増やせばページになる。

気づいたら、作業している自分に酔っている。

「俺、前に進んでる」

そう思う。でも実際は、ただ横道を全力疾走しているだけかもしれん。しかも裸足で。しかもドヤ顔で。しかも横に電卓連れて。

もう終わりや。

いや、終わりではない。

止まればええ。ただし、止まるには先に柵を立てなあかん。


生成ボタンの前に、止めるページ数を書け

今回、俺が見ていなかった原価は、API代だけやない。

ページ数が増えるコスト。修正にかかる時間。キャラ固定を見る手間。眼帯の左右を確認する手間。話がズレるリスク。元ネタの面白さが薄まる危険。

それも全部、原価や。

俺はそこを見ていなかった。画像が作れるかばかり見ていた。この漫画は何の話かを、途中で見失っていた。

だから次からは、生成ボタンを押す前にメモへこう書く。

この制作は、何ページで止めるか。

以上や。

立派な設計書はいらん。分厚いチェックリストもいらん。「AI漫画制作ワークフロー完全版」みたいな看板も、今はいらん。

まず、止まる柵を立てろ。

柵なしでAIに走らせたら、P40どころかP80まで行く。その頃には、電卓が喪主から住職に昇格しとる。

お前も気をつけろ。

「今日は試しに1枚だけ」

その顔、信用ならん。

1枚が5枚になる。5枚が10枚になる。10枚がP25になる。そして完成してから横の電卓が、無言で喪服を着始める。


失敗万歳。ただし次はP1の前に電卓を叩く

10時間使って、ようやく分かった。

俺は、原価を見る漫画を作りながら、自分の制作時間という原価を見ていなかった。

アホや。ほんまにアホや。

10時間溶けた。15,000円分消えた。P40まで行って、原作は失踪した。

ここまで来たら、もう捨てるより晒す方が安い。

せめて俺の失敗を、誰かの生成ボタンの横に置く灰皿くらいにはしたる。

……まあ、俺自身が一番ブレーキ踏めてへんのやけどな。そこが一番腹立つ。

でも、ここで綺麗に反省して終わる気はない。

「失敗は資産です」

そんな無臭の看板を立てて終わる気もない。

今日の俺に必要なのは、感動やない。

電卓や。

生成ボタンの横に、電卓を置け。P1の前に、止めるページ数を書け。作れるかどうかより先に、何を作るかを決めろ。

ご託はもうええ。

失敗万歳。

ただし次は、

P1の前に電卓を叩く。


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