連帯保証人 【ショートショート】
3月のある土曜日のことだった
スーツ姿の男性が 都内某所のアパートの一室
を訪れると 入口のインターホンを押した
「田中昭二さんは ご在宅でしょうか?」
「あっ 僕ですが … どちら様ですか?」
「突然 失礼致します 私 “つるかめ銀行”
融資係の 佐藤 と申します」
住人の彼が玄関ドアを ゆっくり開けた
「突然 お訪ねして 大変申し訳ございません
田中さんは轟木良太さんを ご存じですよね?」
「轟木? あぁ … 彼なら俺の高校時代の親友
ですよ 腐れ縁ってヤツですかね … ハハハ
あっ … でも 轟木に何か あったんですか?」
「いや その~ 轟木さんとは いつ頃 会われ
たのかな? と思いましてね … 」
「最近は 殆んど 会ってないなぁ… でも近々
高校の同窓会をやるんですよ そのお店を
予約するため たまたま 昨日 アイツに出欠
の確認メールを送ったとこですよ」
「えっ? じゃ 連絡は取れてるんですか? 」
「連絡ったって 時々メールする程度で」
「田中さん! 田中さんは その轟木さんの
“連帯保証人” になっておられますよね?」
「あ~ぁ …でも もう何年も前ですよ … 彼が
IT関連の会社を立ち上げたいとか言い出して
あれこれ書類を持ってきて それで… 」
「いや実はですね … その轟木さんですが…
1週間程前から行方が分からないんですよ
早い話が … 失踪したんです 」
「失踪?」
「彼が借りていた部屋を訪ねましたが 既に
“もぬけの殻” で … それでこちらに伺ったと
いう訳です
あっ! 送ったメールに何か返信は?」
「そう言えば … 返事は まだですね …
でも彼が同窓会に出てくれれば 15名になる
ので 会計が15%引きになるんですよ!
しかも 幹事の費用がタダになるキャンペーン
やってる店なので それで幹事に立候補した
んですよ 俺! 」
「 もし轟木さんがこのまま行方不明ならば
貴方様に 貸付金の返済をお願いすることに
なるんですよ! これをご覧ください 」
つるかめ銀行の佐藤は 田中が 連帯保証人で
あることを示す契約書をカバンから取り出した
「ほら ここに貴方の署名と 実印が押された
書面がありますから ご欄になってください 」
「いや … ちょっと 待ってくださいよ!
返済金って まさか この 5,000万円ですか?」
「えぇ正しくは 5,000万円プラス 利息分です
けどね」
「5,000万円 プラス 利息分 … って」
「でも ご安心ください 一括で返済しろなど
とは申しません 当初10年間でご返済を頂く
お約束ですが … もう少し 返済期間を延長
すれば 毎年の返済額をぐっと減らすことが
出来ます
もっとも お利息の方は 少々お高めになって
しまいますが … それで」
「ちょっ、ちょっと待って下さい!」
「それ もしかして 俺が払うんですか?」
「大変お気の毒ですが こういう時のための
連帯保証人ですから!」
「でもね 俺1円も貰ってないですよ」
「そうおっしゃられても 当方は存じません
とにかく初回の 返済期日が迫ってますから
今後の返済計画を 立てて頂かないと困るん
ですよ 」
銀行員に詰め寄られた彼は 頭を抱える様に
して しゃがみ込んでしまった
そして 何やらブツブツ 独り言を 言い始めた
やがて 目の前に 轟木良太の幻覚でも 現れた
のだろうか? その幻覚に向かって 大声で
罵声を浴びせ始めたのだ!
「おい 轟木! そこに居やがったか?
俺を舐めんじゃねーぞ!
俺とは 長い付き合いじゃねぇか!
なのに なんで 音信不通なんだよ?
有り得ねーだろ!
いいか! 轟木!
一度しか言わねーから …
よく聞けよ! この野郎!
とにかく 俺のためだと思って …
同窓会に 出てくれよ!」
すると “ つるかめ銀行 ” の
佐藤が 呟いた
「 そっちかよ 」
(おしまい)
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『studio_maki🍀note.2025.4.17_φ(・_・☘』
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