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第96回 「人権の保護及び法令等の遵守への対応」欄をどう書くか

科研費申請書(研究計画調書)の「人権の保護及び法令等の遵守への対応」欄は、短いながらも非常に重要な項目です。

この欄は単なる形式ではなく、作成要領に明確に示された要件に基づいて記述する必要があります。本記事では、どのように書くべきかを整理してみます。



まず確認すべきこと

研究計画調書では、この欄について次のように求めています。

  • 同意・協力を必要とする研究

  • 個人情報の取扱いに配慮が必要な研究

  • 生命倫理・安全対策を要する研究

といった、指針・法令等に基づく手続が必要な研究が含まれる場合、

講じる対策と措置を記述すること(1頁以内)

とされています。

さらに、

  • 倫理委員会の承認が必要な研究

  • ヒト、遺伝子、動物、行動データ等を扱う研究

などが具体例として挙げられています。

そして案外重要なのが、

該当しない場合には、その旨記述すること

という一文です。


この欄の本質

この欄で求められているのは、

研究の内容そのものではなく、その研究が「どの規制の対象になるか」を判断し、必要な手続と対応を示すこと

つまり、この欄は「倫理の良し悪し」を問うものではなく、「該当判断の正確さ」を問う欄

です。「自分の研究がどのルールに関係するかを正しく把握しているか」

が問われています。

なお、作成要領上は「該当しない」と記述することも許容されていますが、近年の研究、とりわけ生命科学分野においては、生物資源の利用、遺伝子組換え実験、放射性同位元素の取扱いなど、何らかの形で法令・指針に基づく手続や倫理的配慮を要する場合がほとんどです。そのため実際には、多くの研究において何らかの記述が必要になると考えておくのが適切です。
また記述が漏れていた状態で採択された場合、急な対応が必要になることがあるため、前もって把握しておくことが重要です。


審査における取扱い

審査の手引きでは、この欄の取扱いについて明確に示されています。

「人権の保護及び法令等の遵守への対応」欄は、審査において付す総合評点には考慮しない

本欄に記載の内容は評価項目としては考慮しない

とされています。

さらに、

手続き等に不十分な点が見受けられるなど、応募者に対して指摘が必要と考える場合には、その根拠を具体的に「その判断に至った理由」欄に記入する

とされており、

問題があった場合でも評価を下げるのではなく、必要な手続き・対策等を求めるための指摘として扱われます。


書くべき内容の整理

作成要領に対応させると、記述は次のような流れになります。

1. 該当性の判断

まず、自分の研究が以下に該当するかを判断します。

  • 同意・協力が必要か

  • 個人情報を扱うか

  • 倫理・安全配慮が必要か

ここを明確にすることが出発点です。

2. 必要な手続の特定

次に、その研究に対して必要となる手続を整理します。

  • 倫理審査委員会の承認

  • 安全管理委員会の審査

  • 利用許諾や契約

  • 法令・指針への適合

ここでは、「どの制度に従うのか」を明確にすることが求められます。

3. 講じる対策と措置

作成要領で明示されている中心部分です。

  • どのように管理するか

  • どのように安全を確保するか

  • どのように情報を扱うか

ここでは抽象的な表現ではなく、実際の運用が想像できる記述が重要になります。

4. 承認状況または今後の対応

倫理委員会等の扱いについて、

  • 承認済み

  • 申請予定

のいずれかを明確にします。

特に、まだ承認されていない場合でも、その旨と今後の対応を書く

ことが求められています。

5. 該当しない場合の記述

見落とされがちですが、これは必須要件です。

該当しない場合には、

  • なぜ該当しないのか

  • どの範囲で配慮が不要なのか

を簡潔に示す必要があります。


丁寧な記述のポイント

この欄を丁寧に記述する際には、下記を意識するとよいかと思います。

・作成要領に忠実であること
独自の書き方ではなく、「求められている内容にきちんと答えている」ことが重要です。

・判断のプロセスが見えること
単に「対応する」ではなく、
何を対象に/どの規制に基づき/どう対応するか
という流れが読み取れることが求められます。

・不確定要素を放置しないこと
研究の進展に応じて必要になる可能性がある手続についても、
想定していること/対応する方針
を示しておくことで、申請書(者)に対する信頼性が高まります。


まとめ

「人権の保護及び法令等の遵守への対応」欄は、

自由に書く欄ではなく、作成要領に基づいて書く欄です。

重要なのは、

自分の研究がどの規制に関係し、どのように対応するかを論理的に示すこと

です。

形式的に埋めるのではなく、要領の文言を丁寧に読み取り、それに対応する形で記述することで、この欄は確実に質を高めることができます。

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