第88回 科研費の基盤A・基盤B・基盤Cの研究計画調書を徹底比較
科研費における基盤A・基盤B・基盤Cは、いずれも同じ「基盤研究」に属する種目ではありますが、研究計画調書には明確な違いがあります。
それは単なるページ数の差ではなく、「研究をどの粒度で、どのように説明することが求められているのか」という点に本質があります。
本稿では、実際の様式および審査の手引に基づき、それぞれの特徴を整理してみます。
■ 基盤研究A
基盤Aは、3種目の中で最も記述量が多く、研究全体を総合的に説明することが求められる様式です。
● 研究目的・研究方法など(6頁)
・学術的背景
・研究課題の核心をなす学術的問い
・目的・独自性・創造性
・研究動向との関係
・到達目標・準備状況
・国際性
これらの項目を個別に述べるだけではなく、相互に関連づけながら、一貫した論理(流れ)として提示する必要があります。特に近年は「国際性」が明示的な評定要素として加わっており、申請者の研究が世界の同分野の研究の中でどのような位置づけを持つのかを明確に示すことが重要です。
● 研究遂行能力・研究環境(2頁)
研究代表者のこれまでの実績、研究体制、設備環境等について、十分な根拠をもって説明します。
● 倫理・法令対応(1頁)
全体として9頁規模の申請書になります。
基盤Aは「研究の全体像を体系的に説明すること」そのものが求められている様式であり、背景・意義・方法・実現可能性を一体として示すことが不可欠です。
■ 基盤研究B
基盤Bは、基盤Aと同様の評価項目を持ちながらも、より簡潔に研究の骨格を示すことが求められます。
● 研究目的・研究方法など(5頁)
基盤Aと比較すると記述可能な分量が限られるため、各要素を網羅しつつも、冗長な説明を避け、要点を明確に整理することが重要となります。
● 研究遂行能力・研究環境(2頁)
● 倫理・法令対応(1頁)
全体として8頁規模の申請書になります。
基盤Bは「研究の全体像を過不足なく、適切な密度で伝えること」が求められる様式です。情報の網羅性よりも、構造(記載項目への対応)の明瞭さと説明の的確さが重視されます。
■ 基盤研究C
基盤Cは最もコンパクトな様式であり、研究の核心を簡潔に提示することが求められます。
● 研究目的・研究方法など(4頁)
限られた分量の中で記述する必要があるため、すべてを詳細に説明することは現実的ではありません。そのため、研究の本質に関わる要素を選び取り、簡潔かつ明確に提示することが重要となります。
● 研究遂行能力・研究環境(2頁)
● 倫理・法令対応(1頁)
全体として7頁規模になります。
基盤Cは「研究の核心を簡潔に、しかし十分に理解可能な形で示すこと」が求められる様式であり、情報の取捨選択と構造化の巧拙が強く問われます。
■ 三種目の違いをどのように理解するか
以上を踏まえますと、基盤A・B・Cの違いは、単なる分量の大小ではなく、以下のように整理することができます。
・基盤A:研究を総合的に説明する様式
・基盤B:研究の骨格を明確に示す様式
・基盤C:研究の核心を簡潔に提示する様式
いずれも「背景・問い・目的・方法・・・」といった基本要素は共通しておりますが、それをどの程度の密度で示すかが異なります。
■ 審査の観点からの補足
もう一点、審査の仕組みに関わる重要な違いがあります。基盤Bおよび基盤Cは審査区分表の「小区分」で評価されるのに対し、基盤Aは「中区分」で評価されます。
この違いは、研究計画調書の書き方に直接影響します。基盤Aでは、より広い分野の審査員が評価に関与するため、必ずしも自身の専門と一致しない審査員にも理解されるよう、研究の背景や意義、方法を丁寧に説明することが求められます。
一方で、基盤Aと基盤Bの間で「研究目的・研究方法など」の分量差は1頁にとどまります。そのため、単に研究の範囲を拡張するというよりも、説明の明確さや論理の通りやすさを高めることで、結果として1頁分の差が生まれている状態が望ましいといえるでしょう。
■ おわりに
基盤A・基盤B・基盤Cは、同じ枠組みに属しながらも、求められる説明のあり方が本質的に異なっています。
そのため、単に文章量を増減させるのではなく、
「その種目にふさわしい説明の仕方へと書き分けること」
が極めて重要となります。
この点を的確に理解することが、研究計画調書作成の出発点になるといえるでしょう。
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