第101回 「それ、何の役に立つの?」にどう答えるか
「それ、何の役に立つの?」
研究に関わる方であれば、一度はこうした問いを向けられたことがあるのではないでしょうか。そして多くの場合、うまく言葉にできない違和感だけが残ります。
しかし本来、この問いは研究者個人に向けられるものというよりも、その研究を許容している社会のあり方に関わる問いでもあります。
役に立つかどうかが分からない段階の研究に、どこまで資源を投じることができるのか。その余白を持てるかどうかは、その国の成熟度や知に対する姿勢を映し出しているように思います。
役に立つかどうかは、最初から分からない
現在の社会を支える多くの知識や技術は、もともと「すぐに役に立つかどうか分からない研究」から生まれてきました。
例えば、
量子力学
DNAの構造研究
数学の純粋理論
などは、当初から明確な応用を見据えて進められていたわけではありません。
それでも研究が続けられてきた背景には、「知りたいから探究する」という動機がありました。
なぜそうなるのか知りたい
誰も解いていない問題を解きたい
世界の仕組みを理解したい
こうした知的好奇心は、基礎研究を支える重要な原動力の一つです。
「役に立つか」で測れない価値
基礎研究の価値は、短期的な有用性だけでは捉えきれません。
その時点では直接的な応用が見えない知の蓄積が、何十年も後になって社会を大きく変えることもあります。
そのため、すべての研究を一律に、
社会還元
応用
実用化
実装
といった観点だけで評価することには難しさがあります。
もちろん、研究成果が社会に還元されることは重要です。しかし、それを研究の出発点として求めることと、結果としてそうした価値が生まれることとは、必ずしも同じではありません。
研究を支えるもの
一方で、研究は知的好奇心だけで続けられるものではありません。
研究を進めるためには、
時間
設備
人材
研究資金
といった基盤が必要です。
自由な発想に基づく研究であっても、それを支える環境がなければ継続することはできません。
研究について考えるとき、テーマや成果に目が向きがちですが、それを支える制度や仕組みもまた重要な要素です。
基礎研究と科研費
日本において、そのような仕組みの代表例の一つが科研費(科学研究費助成事業)です。
科研費は、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する制度として長年運用されてきました。
使途の自由度が比較的高く、研究者自身の問題意識や着想を尊重する仕組みであることから、基礎研究との親和性も高いと言われています。
実際、多くの研究者にとって科研費は、
研究を継続するための資金
新しいテーマに挑戦するための後押し
研究室運営を支える基盤
として機能しています。
毎年多くの研究者が科研費の申請書作成に時間を割いているのも、単に資金を獲得するためだけではなく、自らの研究を前に進めるためだと言えるでしょう。
おわりに
基礎研究は、「どこで役に立つか分からないもの」に価値を見出す営みです。
そして、その出発点には知的好奇心があります。
一方で、研究を続けるためには時間や設備、人材、そして資金も必要です。
科研費は、そのような研究活動を支える重要な仕組みの一つとして、日本の研究を長く支えてきました。
これからも多くの研究者が科研費を活用しながら、それぞれの問いを追究できる環境が維持されることを願っています。
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