第138回 不採択が続く研究者に共通する思考パターン―研究能力とは別の問題―
研究費の不採択が続くと、
「自分には研究能力がないのではないか」
と感じてしまうことがあります。
しかし実際には、優れた研究者であっても研究費の不採択が続くことは珍しくありません。
論文実績があり、専門分野でも一定の評価を得ている研究者が、なかなか研究費に採択されないケースもあります。
そのため、不採択が続く原因を単純に研究能力の不足と考えるのは適切ではありません。
むしろ、不採択が続く場合には、共通した思考パターンが見られることがあります。
本稿では、その代表例について考えてみたいと思います。
「研究内容が良ければ伝わる」と考えている
研究者は普段、研究そのものに多くの時間を費やしています。
そのため、
「内容が優れていれば評価されるはずだ」
と考えがちです。
もちろん研究内容は重要です。
しかし審査員が評価するのは、研究そのものではなく、研究計画調書に書かれた内容です。
どれほど優れた研究アイデアでも、申請書で十分に伝わらなければ評価されません。
例えば、
背景や課題設定が十分に伝わっていない
研究の独自性、創造性が明確に示されていない
研究方法の説明が不足している
といったケースがあります。
研究内容と申請書は別物だという視点を持てるかどうかで結果は変わります。
不採択の原因を外部に求め続ける
不採択になると、
審査員が理解していない
分野が不利だった
運が悪かった
と考えることがあります。
実際、そのような要素が全く存在しないわけではありません。
しかし毎回その説明だけで終わってしまうと改善につながりません。
採択される研究者も同じ制度の中で申請しています。
重要なのは、
もっと改善できる部分はなかったか
伝え方に問題はなかったか
研究計画の構成に課題はなかったか
という視点です。
過去の成功体験に依存する
以前に採択された経験がある研究者ほど陥ることがあります。
かつて通用した書き方や考え方を繰り返してしまうのです。
しかし、
審査制度は変化する
研究環境は変化する
分野の研究水準も変化する
ため、過去の成功体験が現在の採択を保証するわけではありません。
むしろ、
「以前はこれで通った」
という考え方が改善を妨げることもあります。
申請書を一人で完成させようとする
研究者は独立した専門家です。
そのため、自分だけで申請書を完成させようとする傾向があります。
しかし申請書は読まれる文書です。
書き手と読み手では見え方が大きく異なります。
例えば、
専門用語が多すぎる
論理の飛躍がある
書き手には自明でも読み手には分からない
ということは珍しくありません。
採択率の高い研究者ほど、
共同研究者
URA
外部専門業者
などから意見をもらっていることがあります。
一人で完成度を高めるには限界があります。
「研究の説明」と「研究計画の説明」を混同している
研究者は研究内容を詳しく説明することに慣れています。
しかし申請書で求められるのは研究内容の解説だけではありません。
審査員は、
なぜ重要なのか
なぜ今行う必要があるのか
どのような成果が期待できるのか
なぜ申請者が実施するのか
といった点も見ています。
研究の説明が上手な人と、研究計画を説明するのが上手な人は必ずしも一致しません。
不採択を分析しない
不採択になった後、
「残念だった」
で終わってしまうケースがあります。
しかし採択された研究者の多くは、不採択から学んでいます。
例えば、
審査結果を閲覧する
前年度の申請書を見直す
採択申請書と比較する
第三者の意見を聞く
といった作業です。
こうした振り返りを通じて改善点が見つかることがあります。
不採択そのものよりも、不採択から何も学ばないことのほうが大きな問題なのかもしれません。
おわりに
不採択が続く研究者に共通するのは、研究能力の不足ではなく、思考パターンの固定化である場合があります。
研究費申請は研究そのものとは異なる側面を持っています。
だからこそ、
なぜ伝わらなかったのか
どこを改善できるのか
という視点を持つことが重要です。
研究費の採択は、優れた研究を行う能力だけで決まるものではありません。
優れた研究計画として伝える能力もまた、研究者に求められる重要な力なのではないでしょうか。
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