第43回 採択経験があるのに、なぜ今年は不採択に?―中堅・ベテラン研究者も陥りうるポイント―
科研費をはじめとする競争的資金において、過去に採択経験のある研究者であっても、不採択となることは決して珍しいことではありません。
むしろ近年では、中堅・ベテラン研究者であっても継続的に採択を維持することは容易ではなく、評価の観点と申請書の構成とのわずかなズレが結果に影響する場面も見受けられます。
本記事では、その背景と、陥りやすいポイントについて整理いたします。
1. 「実績がある」ことと「今回の申請が評価される」ことは別である
まず前提として、審査はあくまで今回の研究計画そのものに対して行われます。
過去の採択歴や業績は重要ではありますが、それだけで評価が担保されるわけではありません。
特に中堅以降では、
実績に裏付けられた安心感がある一方で
申請書内での説明が簡略化されやすい
という傾向があり、結果として
研究の狙いが明確に伝わらない
新規性の位置づけが曖昧になる
といった状況が生じることがあります。
2. 「わかっている前提」で書いてしまう
経験豊富な研究者ほど、
専門分野の常識
研究の背景
手法の妥当性
について、「当然伝わるもの」として記述を省略してしまうことがあります。
しかし、審査は必ずしも完全に同一分野の研究者が行うとは限りません。
そのため、
前提の共有が不十分なまま議論が進む
研究の重要性が十分に伝わらない
といった状態になりやすくなります。
これは理解力の問題というより、情報の提示の仕方(構成)の問題といえます。
3. 研究の「新しさ」が相対的に弱くなる
研究を継続的に発展させていく過程では、
既存研究の延長
これまでの成果の深化
という形になりやすい側面があります。
もちろんこれは自然な研究の進展ですが、申請書としては、
どこが従来と異なるのか
なぜ今この研究を行う必要があるのか
が明確に示されない場合、新規性、独自性や創造性の評価が相対的に低くなる可能性があります。
特に、
前回採択課題の「続き」に見える
改良・最適化にとどまっているように見える
といった印象を与えると、評価が伸びにくくなります。
4. 「よくまとまっている」が「印象に残らない」申請書
中堅・ベテランの申請書には、
構成が整っている
記述が安定している
という強みがあります。
一方で、
どこが核心なのかが見えにくい
研究の「勝負どころ」が弱い
といった理由で、他の申請と比較した際の印象が薄くなることがあります。
審査は相対評価であるため、
明確な主張
一読して伝わる独自性
が弱い場合、結果として評価が伸び悩むことも考えられます。
5. 評価基準との「微妙なズレ」
審査は一定の評価項目に基づいて行われます。
そのため、
研究としては優れていても
評価項目に沿った形で提示されていない
場合には、十分な評価につながらないことがあります。
例えば、
目的と方法の対応関係が明確でない
独自性が具体的に言語化されていない
といった点は、慣れてくると見落とされがちですが重要です。
まとめ
採択経験があるにもかかわらず不採択となる背景には、
実績に依存した記述の簡略化
前提となる情報の説明が十分でないこと
新規性の見せ方の問題
読み手にどのように伝わるかへの配慮が十分でないこと(第三者からの視点が重要です)
評価基準とのズレ
といった、要因が重なっていることが少なくありません。
これは能力の問題というよりも、
申請書としての見せ方の調整に関わる部分といえます。
競争的資金の審査は年々厳しくなっており、経験の有無にかかわらず、毎回の申請において丁寧な記述が求められます。
過去の成功体験を踏まえつつも、改めて
何を伝えるのか
どのように伝えるのか
を見直すことが、安定した採択につながる一助になると考えられます。
外部資金ジャパン
外部資金ジャパンでは、申請書の添削サービスを提供しています。ご興味のある方は下記までお問い合わせください。
