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第80回 採択されなかった研究の裏で、大学は何を失っているのか― 科研費不採択がもたらす見えない機会損失 ―

科研費の不採択は、個々の研究者にとっては「次回に向けた改善課題」として捉えられることが一般的です。

しかし、大学経営の観点から見たとき、それは単なる一件の不採択ではありません。
その背後では、本来得られたはずの機会が失われている可能性があります。

本稿では、科研費の不採択が大学にもたらす「見えない損失」を整理し、組織としてどのように捉えるべきかを考えます。



不採択は「研究費が取れなかった」という問題にとどまらない

科研費が採択されなかった場合、最も分かりやすい影響は研究費の未獲得です。

しかし、実際に失われているのはそれだけではありません。

・研究の進展機会
・研究チームの形成機会
・若手研究者の育成機会
・外部資金獲得実績の蓄積
・学内外での評価・信頼の向上

これらはすべて、採択によって連鎖的に生まれるはずだったものです。

つまり、不採択とは
「資金を失う出来事」ではなく、「将来の成長機会を失う出来事」
と捉える必要があります。


機会損失は「見えないまま蓄積する」

重要なのは、これらの損失の多くが可視化されないという点です。

採択されれば実績として明確に記録されますが、不採択によって失われた機会は、評価指標には現れません。

その結果、
・本来育っていたはずの研究が育たない
・挑戦的なテーマが継続されない
・研究者の意欲が徐々に低下する

といった影響が、静かに蓄積していきます。

そしてこれらは、ある時点で
研究力の差として顕在化することになります。


若手研究者の「流動」にも影響する

さらに見逃せないのは、若手研究者の進路選択への影響です。

研究者は単に「ポストがあるか」だけで所属先を選んでいるわけではありません。

むしろ重要なのは、
自らの研究を継続的に発展させられる環境があるかという点です。

その意味で、

・申請段階でのプレアワード支援(添削支援、作成支援を含む)
・採択後のポストアワード支援

といった体制が整っている大学は、
研究を前に進めるための「インフラ」を持っている組織として認識されます。

外部資金の採択率が高く、自身の研究を実現できる可能性が高い環境であれば、
若手研究者が「その大学でポストを確保したい」と考えるのは自然な流れです。

逆に言えば、こうした支援が十分でない場合、
優秀な若手人材が他機関へと流出する可能性も否定できません。


支援体制の差は、やがて「選ばれる大学かどうか」を分ける

このような状況の中で、大学経営において見過ごせないのは、
研究支援への投資姿勢そのものが、組織の魅力を左右するという点です。

仮に、研究支援が十分に整備されないまま、
個々の研究者の努力に依存する状態が続けば、

・研究者にとって魅力的な環境とはいえない
・若手研究者の獲得競争で不利になる
・結果として学生からの選好も低下する

といった連鎖が生じます。

とりわけ、少子化が進行する現在においては、
大学は「待っていれば人が集まる存在」ではなく、
選ばれる理由を持つ組織であることが求められています。

その中で、研究支援への投資を後回しにし続けることは、
短期的にはコスト抑制に見えるかもしれませんが、

中長期的には、
人材・研究・評価のすべてを取りこぼすリスクを内包しています。


社会的評価にもつながる

研究支援体制が整備され、質の高い研究が継続的に生まれる大学は、
結果として社会からの評価も高まります。

それは単に「資金を多く獲得している大学」という意味ではなく、

持続的に価値ある研究を生み出す組織として認識されるということです。

この点において、申請支援・研究支援への投資は、
短期的なコストではなく、
中長期的なブランド形成に直結する戦略的投資と位置づける必要があります。


おわりに

科研費の不採択は、個々の研究者の課題として処理されがちです。

しかし、その背後で失われているものに目を向けると、
それは大学全体にとっての機会損失であることが見えてきます。

・研究の発展機会
・人材の獲得機会
・組織としての評価向上の機会

これらをどの程度取りこぼしているのか。

そして、研究支援をどのように位置づけるのか。

この問いに向き合うことが、
これからの大学が生き残るための経営判断になるのではないでしょうか。

外部資金ジャパン

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