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第103回 大学教員の役割分担はなぜ進まないのか― 任期のない教育専任教員(いわゆるLecturer)という制度設計 ―

近年、日本の大学では、教育・研究・運営といった多様な業務が一人の教員に集中する傾向が強まっています。教育の質保証と研究成果の両立が求められる中で、現行の仕組みでは無理が生じています。

こうした問題は個々の努力で解決できるものではなく、役割分担のあり方そのものを見直す必要があります。本稿では、その具体策として、教育を主務とする教員ポジションの導入、とりわけ任期のない形での制度設計について検討します。



海外における教育専任ポジションの広がり

海外の大学、とりわけ米国、英国、豪州では、教育を主務とする教員(LecturerやTeaching Professor等。本稿ではこれらを便宜的に「教育専任教員」と呼ぶ)が制度的に位置づけられています。これらは大学教育を支える重要な役割を担っています。

一方で、その多くが任期付きであるため、雇用の不安定性やキャリア形成の難しさといった課題も指摘されています。


なぜ今、制度の見直しが必要なのか

現在の日本の大学の多くでは、大学教員には、以下のような役割が同時に求められています。

  • 専門教育の実施

  • 研究成果の創出

  • 学内業務・運営への対応

しかし、これらはいずれも高度に専門的な活動であり、すべてを高い水準で担うことを前提とした制度には限界があります。

特に近年は、

  • 教育内容の高度化・多様化

  • 教育の質保証への対応

などにより、教育の負担は確実に増しています。それにもかかわらず、教育を専門に担うポジションは制度的に十分整備されているとは言えません。


任期のない教育専任教員という制度設計

本稿でいう「任期のない教育専任教員」とは、海外でいうLecturer等に相当する、教育を主務とする教員ポジションを指します。

重要なのは、その制度設計です。海外のように任期付き中心とするのではなく、任期の定めのない形で安定的に教育を担うポジションとして制度化することが、日本においては特に重要です。

これにより、以下のような効果が期待できます。

教育の質の安定的な向上

雇用が安定することで、継続的な教育改善やカリキュラム設計に取り組むことが可能になります。

研究者の負担軽減

教育の一部を担うことで、研究を主とする教員の時間が確保され、研究力の維持・向上につながります。

教育専門職としてのキャリア確立

教育に強みを持つ人材が長期的に活躍できる仕組みが整います。博士号取得者の受け皿にもなります。


専門科目にも配置すべき理由

教育専任教員は、一般教養科目に限定されるべきではありません。専門科目にも積極的に配置することが重要です。

専門科目においても、

  • カリキュラムに基づいた安定的な教育の提供

  • 教材開発や講義内容の高度化

といった役割は不可欠です。

その上で、最先端の研究動向や高度な専門内容については、研究を主とする教員が必要に応じて補完すれば十分に対応可能です。

すなわち、

教育は教育専任教員が担い、研究の最前線は研究者が補完する

という役割分担が成立します。これは、すべての教員に両立を求める現在の仕組みよりも、現実的かつ持続可能なモデルです。


おわりに

海外ではすでに、教育と研究の役割分担を前提とした制度が進んでいます。一方で、そのまま導入した場合の課題も明らかになっています。

日本においては、こうした動向を踏まえつつ、任期のない教育専任教員という形で制度設計を行うことで、教育の質と研究力の双方を維持する新たなモデルを構築できる可能性があります。

大学教員に過度な多機能性を求める制度は、すでに限界に近づいています。

「すべてを担う教員」を前提とする仕組みは、もはや持続しない

と考えられます。

役割分担を前提とした現実的な制度設計へと踏み出すことが、今まさに求められています。

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