第135回 大学の特許はなぜ活用されないのか―量産される「使われない知財」の問題―
大学には、研究成果に基づく特許出願が積み重なっています。
ただその一方で、
実際に企業に使われている例は多くない
ライセンスにつながるケースは限られる
と感じている方も多いのではないでしょうか。
「特許はある。でも活用されていない気がする」
この感覚は、決して珍しいものではありません。
本稿では、大学の特許が活用されにくい理由を整理するとともに、なぜ同じ状況が繰り返されるのか、その構造について考えます。
出願のタイミングと目的のズレ
大学では、
論文発表の前に出願する
研究成果を一度権利化しておく
という流れが一般的です。
これは合理的な対応ですが、その時点ではまだ、
誰が使うのか
どんな形で使われるのか
まで具体的に決まっていないことが多いです。
その結果、使い道がはっきりしないまま特許だけが先にできる、という状態が生まれやすくなります。
研究とビジネスの視点の違い
研究では、
新しいかどうか
面白いかどうか
が重要になります。
一方で企業は、
事業として成立するか
コストに見合うか
を重視します。この違いがあるため、
技術としては興味深い
でもすぐには使いにくい
という特許がどうしても出てきます。
これは質の問題というより、見ている基準が違うことによるズレと言えます。
権利の取り方が難しい
大学の特許は、研究結果をベースにしているため、
実験条件に沿った内容になりやすい
具体的な形に寄りやすい
という特徴があります。
そのため、
少し条件を変えると回避できる
応用の広がりが見えにくい
と受け取られることもあります。
特許として
どこまで広く押さえるか
どこを具体化するか
このバランスは本質的に難しい問題です。
「伝える」ところで止まってしまう
大学には技術移転の仕組みがありますが、
人手が限られている
企業との接点に偏りがある
といった事情もあり、すべての特許を十分に紹介できるとは限りません。
また、特許の内容も、
専門的でわかりにくい
企業目線の説明になっていない
といった形になりがちです。
その結果、興味を持たれる前に見落とされてしまうこともあります。
タイミングの問題
研究とビジネスでは、時間の感覚も少し違います。
研究:長い時間をかけて進む
企業:比較的短い期間で判断する
そのため、
まだ早すぎる
逆に遅すぎる
といった形で、かみ合わないこともあります。
なぜ「使われない特許」が増えるのか
ここまでをまとめると、
使い道が決まる前に出願される
研究とビジネスの基準が違う
権利の取り方や伝え方にも難しさがある
タイミングも合いにくい
といった要因が重なり、
使われにくい特許が繰り返し生まれる構造になっています。
これは個々の問題というより、現在の制度・運用の中では、ある意味で自然に生じている傾向とも言えます。
少しでも使われる特許にするために
大きな仕組みを変えることは簡単ではありませんが、
現場でも意識できることはいくつかあります。
(1)出願時に「誰が使うか」を少し考える
完全でなくてもいいので、
どんな企業が関心を持ちそうか
どの分野で使われそうか
をイメージしておくと、その後の動きが変わります。
(2)企業の視点を早めに入れる
共同研究
軽い相談
などを通じて、研究の途中から外部の視点を取り入れると、
活用につながりやすくなります。
(3)出願後も「動かす」ことを意識する
特許は出願しただけでは使われません。
紹介する
説明する
つなぐ
といったプロセスがあって初めて、活用に近づくことになります。
おわりに
大学の特許が活用されにくいのは、いくつかの条件が重なった結果です。
その中で大事なのは、
「出願すること」だけで終わらせないことです。
誰が使うのか
どう使われるのか
を意識することで、特許の位置づけは変わってきます。
特許出願はゴールではなく、
活用に向かうプロセスの出発点です。
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