第150回 大学の研究力を高めるには「コアラボ化」と「共同研究専門教員」が不可欠である
日本の研究力低下が指摘されて久しいですが、その原因は研究者個人の能力だけにあるのでしょうか。
問題は、「設備の持ち方」と「人材の配置」という構造的な部分にもあるのではないかと感じています。
本記事では、共同研究設備の充実と、「共同研究を主業務とする教員」の必要性について考えます。
共同研究設備を強化し、「共同研究を主業務とする教員」を増やすべき理由
大学の研究力を高めるために、いま見直すべきなのは「設備の持ち方」と「人材の配置」です。
これまでの大学では、各研究室がそれぞれ装置を持ち、独自に研究を進めるスタイルが主流でした。しかし、このやり方はすでに限界に来ています。
特に生命科学分野では、研究の高度化に伴い、次のような技術が不可欠になっています。
シーケンシング
ゲノム編集(細胞、マウス)
フローサイトメトリー
高度顕微鏡解析
質量分析
これらの設備や技術を、各研究室が個別に整備・維持するのは非効率です。コストがかかるだけでなく、装置の稼働率も下がり、技術の蓄積も分散してしまいます。
コアラボという発想
そこで必要なのが、機能ごとに集約された「コアラボ」です。重要なのは、単なる「機器の共用化」ではない点です。
ここでいう「コアラボ(コアファシリティ)」とは、大学内で共通利用される研究設備・技術を集約した拠点のことを指します。
簡単に言えば、「高価で専門性の高い機器や技術を、個々の研究室ではなく大学全体で共有する仕組み」です。
例えば、
シーケンシングコアラボ
ゲノム編集コアラボ
フローサイトメーターコアラボ
顕微鏡コアラボ
質量分析コアラボ
といった形で、設備と技術を集約することで、大学全体としての効率が大きく向上します。
いまや、単一の研究室で完結できる時代ではありません。
研究者は装置の管理から解放され、本来の研究に集中できますし、専門スタッフによる高品質なデータ取得も可能になります。
本質は「人」にある
しかし、設備を集約するだけでは不十分です。
本当に重要なのは、「共同研究を主業務とする教員」を増やすことです。
コアラボが単なる機器貸出部門にとどまっている限り、研究の質は大きく変わりません。むしろ、専門性の高い教員が、
研究計画の設計段階から関わる
最適な実験系を提案する
データの解釈まで伴走する
といった形で主業務として関与することで、はじめて研究の質とスピードが向上します。
「持つ」から「使いこなす」へ
これからの大学に求められるのは、「設備を持っているか」ではなく、「高度な基盤をどう使いこなすか」です。
そのためには、共同研究設備の戦略的な整備と、それを担う人材への投資が不可欠です。
個々の研究室の最適化ではなく、大学全体の最適化へ。
この発想の転換こそが、これからの研究力競争を左右するのではないでしょうか。
おわりに
共同研究設備の充実やコアラボの整備は、単なる効率化の話ではありません。大学の研究のあり方そのものを見直す取り組みです。
限られた予算と人材の中で、個別最適を積み重ねても、全体としての競争力は高まりません。むしろ、資源を戦略的に集約し、それを最大限に活用できる体制を整えることが重要です。
その鍵を握るのが、「共同研究を主業務とする教員」の存在です。
設備と人材を一体として整備し、研究者同士が自然につながる環境をつくること。それが、これからの大学に求められる方向性ではないでしょうか。
外部資金ジャパン
外部資金ジャパンでは、外部資金獲得のための申請書等作成支援を提供しています。ご興味のある方は下記までお問い合わせください。
