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第161回 申請書を書かなくていい世界はあり得るのか―「自由に研究できる理想郷」を考える―

研究者にとって、「申請書」と「報告書」は避けて通れない存在です。

・採択されるかどうかわからない申請書を書く時間
・採択された後も続く報告書作成
・そして次の資金獲得のための準備

気づけば、研究そのものよりも「研究費を取るための作業」に時間を使っている、と感じることはないでしょうか。

実際、ある調査では1つの申請書に100時間以上かかることもあるとされており、これは決して小さな負担ではありません 。

本記事では、あえて現実から少し離れて、

「申請書も報告書も不要で、ひも付きでない研究費が十分にある世界」

という理想郷を考えてみたいと思います。



現実の研究費はなぜ「面倒」なのか

現在の研究費制度は、決して無意味ではありません。

たとえば科研費は、

・研究者の自由な発想を支える
・ピアレビューで質を担保する
・限られた資源を適切に配分する

という重要な役割を持っています 。

しかしその一方で、

  • 申請書作成に膨大な時間がかかる

  • 採択率が低く、努力が報われないことも多い

  • 「書類としてよい研究」と「本当に面白い研究」がズレることがある

といった問題があげられます。

特に、競争型資金では、

「申請書を書くための時間」が、本来研究に使われるはずだった時間を圧迫する可能性があります。


理想郷①:申請書が存在しない世界

まず考えたいのは、「申請書がない世界」です。

この世界では、

  • 研究者は採用時に一定の研究費を与えられる

  • 追加申請は不要

  • 評価は数年単位の成果で行われる

という仕組みになります。

いわば、

「研究者を信頼して先に資金を渡す」モデルです。

この仕組みのメリットは明確です。

  • 研究時間が圧倒的に増える

  • 短期的な“ウケのよいテーマ”に偏らない

  • 失敗を恐れない挑戦が可能になる

実際、研究の出発点は本来、

研究者の自由な発想に基づくものであるとされており 、
この理想郷は、ある意味で「原点回帰」とも言えます。


理想郷②:報告書が存在しない世界

次に、「報告書がない世界」です。

ここでは、

  • 年度ごとの細かい報告は不要

  • 成果は論文・特許・社会実装で評価

  • 会計も大枠のみ管理

という形になります。

この世界では、研究者は

「説明するための研究」ではなく
「本当にやりたい研究」に集中できます。

報告書があることで生まれる、

  • 形式的な成果の量産

  • 使い切るための無理な予算消化

  • 書きやすい成果への偏り

といった問題も減るでしょう。


理想郷③:ひも付きでない研究費が潤沢にある世界

最後に、この理想郷の核心です。

それは、

「用途や成果を細かく縛られない研究費が、十分にある状態」

です。

この世界では、

  • 長期的で基礎的な研究が可能になる

  • すぐに成果が出ないテーマにも挑戦できる

  • 分野横断的な研究が自然に生まれる

という変化が期待できます。

実際、研究費には、

自由発想型(基礎研究)

目的志向型(政策・産業)

の両方が必要であり、そのバランスが重要です。

近年では、社会課題の解決や実用化を重視した研究費も増えており、自由発想型研究とのバランスをどのように取るかが重要になっています。

理想郷は、そのバランスを大胆に「自由側」に振り切った世界と言えるでしょう。


それでも理想郷は成立するのか

ここまで、申請書や報告書に追われることなく、研究者が自由に研究できる世界を考えてきました。

しかし、完全な自由には別の課題もあります。

もし研究費をほとんど審査せずに配分する仕組みになった場合、

  • 研究の進展が十分に確認できないまま資金が継続される可能性

  • 特定の研究者や研究分野に資金が集中する可能性

  • 社会に対する説明責任をどのように果たすかという問題

が生じます。

研究費は限られた社会資源であり、誰に、どのような目的で配分するかを判断する仕組みは、やはり必要です。

一方で、現在のように申請書作成や評価対応に多くの時間を費やす仕組みが、本当に最適なのかという議論も必要でしょう。

重要なのは、

「審査をなくすこと」ではなく、「研究者の自由を確保しながら、適切に評価できる仕組みを作ること」

なのかもしれません。

完全な自由な研究費制度は現実的ではありません。

しかし、研究者が書類作成に追われる時間を減らし、より多くの時間を研究そのものに使える環境を目指すことは、十分に検討する価値があります。


おわりに

申請書も報告書もない世界は、魅力的です。

しかし現実には、

  • 公平性

  • 説明責任

  • 限られた予算

といった制約があり、完全な理想郷は存在しません。

それでも、この問いには意味があります。

なぜなら、

「研究者が本来やるべきことは何か」

を見直すきっかけになるからです。

申請書を書く時間を減らすことはできないのか。
報告書をもっと簡素化できないのか。
基盤的経費を増やせないのか。

理想郷を想像することは、現実を少しだけ良くするヒントになります。

そして何より、

研究が「書類」ではなく「知的好奇心」から始まる営みであることを、
忘れないためにも重要だと思います。

外部資金ジャパン

外部資金ジャパンでは、科研費等申請書の添削サービスを提供しています。ご興味のある方は下記までお問い合わせください。


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