第79回 科研費申請支援に予算をつけるにはどうすればよいか― 外部添削を導入するための現実的な進め方 ―
前回の記事では、科研費申請支援を「個人の努力」に委ねるのではなく、組織として再構築すべきであることを述べました。
しかし、必要性が理解されても、実際の現場では次のような声が聞かれます。
「重要なのはわかるが、予算化が難しい」
「どこから手をつければよいかわからない」
「全学でやるにはハードルが高い」
本稿では、外部添削の導入を念頭に置きながら、科研費申請支援に予算をつけるための現実的な進め方を整理します。
なぜ進まないのか:3つの壁
まず、導入が進まない理由は大きく3つに整理できます。
① 全員対象で考えてしまう
「全教員を対象に支援する」と考えた瞬間、必要な予算は膨らみ、現実性が低下します。
② 効果が見えにくい
採択・不採択は複合要因で決まるため、「添削の効果」を定量的に示しにくいという問題があります。
③ 内部支援との役割が曖昧
URA等の既存支援との関係が整理されていないと、「外部に出す必要があるのか」という疑問が生じます。
導入の基本原則:「小さく始める」
これらの壁を乗り越えるために最も重要なのは、
最初から完成形を目指さないことです。
現実的には、以下のような形での導入が有効です。
対象を限定する
件数を絞る
試行として実施する
つまり、パイロット的な位置づけで開始することが前提となります。
ステップ①:対象の明確化
まず、「誰を支援するのか」を明確にします。
全員ではなく、例えば以下のような層が現実的です。
採択実績があり、次回も期待される研究者
前回不採択だが、内容的に改善余地がある申請
基盤Bなど、金額インパクトの大きい申請
逆に、基盤Cなど、応募数の多い申請
ここでのポイントは、
「効果が出やすい層」に絞ることです。
ステップ②:支援内容の整理
次に、外部添削をどのように位置づけるかを整理します。
重要なのは、内部支援との役割分担です。
内部:制度説明、事務手続き、全体管理
外部:申請書の構造・論理・評価視点のブラッシュアップ
このように整理することで、
外部活用の必要性が明確になります。
ステップ③:予算規模の設定
予算については、「全体最適」ではなく部分最適で考えることが重要です。
例えば、
数件〜十数件程度から開始
年度ごとの試行枠として設定
といった形であれば、既存の裁量経費の中でも調整可能なケースが多く見られます。
ここで重要なのは、
「まず実施し、結果(研究者の反応)をもとに判断する」
というスタンスです。
ステップ④:効果の可視化
試行導入においては、結果の評価が不可欠です。
ただし、単純な採択率だけでなく、
申請書の完成度の変化
業者の添削に対する教員の満足度
内部支援との連携状況
といった複数の観点から評価することが重要です。
これにより、次年度以降の拡大・継続の判断材料が得られます。
「予算がない」のではなく「設計されていない」
ここで改めて強調したいのは、次の点です。
多くの場合、「予算がない」のではなく、
「予算をつける体制になっていない」というのが実態です。
対象が曖昧
効果の見込みが不明確
実施方法が具体化されていない
この状態では、意思決定は難しくなります。
逆に言えば、ここまで整理されていれば、
小規模な導入は十分に現実的な選択肢となります。
おわりに
科研費申請支援に予算をつけることは、
単なるコストの追加ではありません。
それは、
どの申請を重点的に強化するか
どのように研究力を底上げするか
という、組織としての意思決定そのものです。
重要なのは、大きく始めることではなく、
小さく始めて、確実に前進することです。
なお別記事でも取り上げたように、先行する大学は外部専門業者を活用しています。貴学、貴研究機関におかれましても、研究者のために、組織のために、社会のために活用を検討されてはいかがでしょうか。
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