見出し画像

第98回 科研費を申請していない先生は大学からどう見られているのか―「不採択」よりも気にされること―

科研費の公募時期が近づくと、大学内では申請率や採択率についての話題が増えてきます。

一方で、

「科研費を申請していないと大学からどう見られているのだろうか」

と考えたことのある先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

もちろん、大学教員の仕事は研究だけではありません。教育、学生指導、学内業務、社会貢献など、多くの役割を担っています。また、研究分野や研究環境によって事情も異なります。

そのため、本記事は科研費を申請していない研究者を批判するものでは決してありません。

ただ、研究支援の現場で多くの研究者や大学関係者と関わった中で感じるのは、「不採択」と「未申請」は大学側から見ると必ずしも同じではないということです。

今回は、科研費を出していない教員が大学からどのように見られているのかについて考えてみたいと思います。

「不採択」と「未申請」は意味が異なる

まず整理しておきたいのは、不採択と未申請は大学側から見ると必ずしも同じではないということです。

科研費は競争的資金です。

優れた研究者であっても不採択になることはありますし、採択率が100%になることはありません。

そのため、「申請したが不採択だった」ということ自体は、必ずしもネガティブな評価にはなりません。

むしろ大学によっては、申請件数そのものを重視している場合もあります。

なぜなら、申請という行為は、自身の研究計画を整理し、外部評価を受けることに挑戦している姿勢の表れでもあるからです。

一方で、未申請の場合は少し見え方が変わります。

大学側からすると、

「採択されなかった」

ではなく、

「外部評価の良い機会に研究計画を出していない」

と認識されることがあります。

もちろん個々の事情はありますが、組織として数字を見る際には、その違いが意識されることがあります。

大学執行部は組織全体を見ている

研究者は、自身の研究内容や論文業績を重視します。

しかし、大学執行部の立場になると見える景色は少し異なります。

学長や理事、研究担当副学長などは、大学全体の研究活動を把握する必要があります。

その際に用いられる指標は、

  • 科研費申請率

  • 科研費採択率

  • 外部資金獲得額

  • 教員一人当たりの研究費獲得額

などです。

つまり、執行部は個人単位ではなく組織全体の数字を見ています。

そのため、ある教員が科研費を申請していない場合、

「研究内容が悪い」

というよりも、大学全体の申請率という観点では、

「申請率向上の余地がある」

として位置づけられることがあります。

これは個人への評価というより、組織運営上の視点と言えるでしょう。

部局長が気にするのは研究の継続性

学部長や研究科長など、現場に近い立場ではまた別の見方があります。

特に若手教員の場合、

「研究は順調に進んでいるだろうか」

「今後研究室を発展させていけるだろうか」

という視点で見られることがあります。

科研費の申請は、自身の研究計画を整理し、将来の研究展開を構想する機会でもあります。

そのため、長期間にわたって申請実績がない場合、

「研究計画を整理する機会が減っていないだろうか」

「研究内容を外部に説明する機会を失っていないか」

と心配されることもあります。

研究支援部門が見ていること

研究推進担当者やURAも、未申請者の存在を意識しています。

なぜなら、大学全体の研究力向上を考えると、採択者への支援だけでは限界があるからです。

実際には、

「採択率を数%上げる」

よりも、

「申請率を上げる」

方が大学全体の研究費獲得額に大きく影響することがあります。

そのため研究支援部門では、

「なぜ申請していないのか」

を知りたいと考えています。

・研究アイデアが整理できていないのか

・時間が取れないのか

・申請書作成に苦手意識があるのか

理由によって必要な支援は大きく異なります。

大学が本当に見ているもの

科研費を申請していないことが問題ではありません。

企業との共同研究が中心の先生もいます。受託研究を多く持っている先生もいます。他の競争的資金を獲得している場合もあります。

そのようなケースでは、科研費が最優先でないことも十分にあり得ます。

重要なのは、科研費を出しているかどうかではなく、

「研究計画を整理し、研究活動をどのように発展させているのか」

を説明できることだと思います。

科研費申請は、その姿勢を示す代表的な機会の一つに過ぎません。

おわりに

科研費申請は単なる資金獲得手段ではなく、自身の研究を客観的に見直す機会でもあります。

科研費を申請していないからといって、研究内容に問題があるとは限りません。むしろ、研究の価値や魅力が十分に伝わる形になっていないだけというケースも少なくありません。

研究者自身にとって当たり前になっている研究の魅力や意義が、第三者には十分伝わっていないこともあります。

ときには他者の視点を取り入れながら研究計画を見直してみることも、有意義な機会になるかと思います。

外部資金ジャパン

外部資金ジャパンでは、申請書の添削サービスを提供しています。研究計画を整理したい方や、申請書について第三者の意見を取り入れたい方は、お気軽にご相談ください。


いいなと思ったら応援しよう!