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第114回 研究費は増えた。でも研究する時間は増えたのか ― 大型研究プロジェクトの見えないコスト ―

大型研究費への採択は、多くの研究者にとって一つの目標です。

研究費が増えることで設備を整備できる。若手研究者や学生を雇用できる。共同研究を進めることもできる。

研究を大きく前進させるための貴重な機会であることは間違いありません。

しかし実際に大型研究プロジェクトへ参加した研究者の中には、少し違った感想を持つ方もいるのではないでしょうか。

「研究費は増えた。でも研究する時間は思ったほど増えていない」

もちろん、これは大型研究プロジェクトを批判したいわけではありません。

むしろ大型研究費だからこそ実現できる研究がありますし、社会に対する説明責任も重要です。

ただ、その一方で見落とされがちなコストも存在します。

それが成果報告に関わる時間です。


成果報告の機会は想像以上に多い

大型研究プロジェクトでは、研究費を適切に執行し、研究の進捗を共有し、成果を社会へ還元するために、さまざまな報告の機会が設けられています。

例えば、

  • グループミーティング

  • チームミーティング

  • 領域会議

  • 中間評価

  • サイトビジット

  • 成果報告会

  • シンポジウム

  • 年次報告書

  • 中間報告書

  • 終了報告書

などです。

それぞれに目的があります。

・研究者同士の連携を促進するため
・研究の方向性を確認するため
・研究費を支出する側が進捗を把握するため

いずれも必要な取り組みです。

しかし研究者の立場からすると、一つひとつは合理的であっても、それらが積み重なることで相当な時間が費やされることになります。

報告は「発表の時間」だけでは終わらない

成果報告の負担は、会議や報告会の時間だけではありません。

実際には、

  • データ整理

  • スライド作成

  • 進捗の取りまとめ

  • 報告書執筆

  • 関係者との事前調整

といった準備作業が発生します。

1時間の会議のために半日、あるいはそれ以上の時間を使うことも珍しくありません。

報告書についても同様です。

数ページの報告書であっても、その裏側には研究成果の整理や文章作成の作業があります。

結果として研究者は、

「研究する仕事」

だけでなく、

「研究内容を説明する仕事」

にも多くの時間を割くことになります。

研究には「何も生まれない時間」が必要である

もちろん、公的資金による研究に説明責任は欠かせません。

問題は成果報告そのものではなく、その頻度や負担の大きさです。

研究には、成果が見えない期間があります。

実験が失敗することもあります。

仮説が外れることもあります。

数か月考え続けた結果、「この方向ではない」と分かることもあります。

そういったことも含めて研究であり、新しい発見は、そのような試行錯誤の中から生まれることが少なくありません。

ところが報告の機会が増えるほど、研究者は常に

「今、何を成果として示せるか」

を意識するようになります。

それは研究の透明性を高める一方で、短期的に説明しやすい成果へ意識が向きやすくなる可能性もあります。

研究費だけでなく「研究時間」も研究資源

大型研究費の議論では、どうしても予算額に注目が集まります。

しかし研究に必要なのは資金だけではありません。

時間もまた重要な研究資源です。

そして時間は、研究費のように増額することができません。

研究費が増えれば、

  • 設備は購入できる

  • 人材は雇用できる

  • 共同研究は進められる

かもしれません。

しかし、

  • 考える時間

  • 論文を読む時間

  • 試行錯誤する時間

までは自動的には増えません。むしろ管理や報告の負担によって減少してしまう傾向にあります。

本当に必要なのは「報告を減らすこと」なのか

もちろん、成果報告をなくせばよいという話ではありません。

説明責任は重要ですし、大型研究プロジェクトにおける研究者間の連携も欠かせません。

ただ、今後の研究支援を考える上では、

研究費をどう増やすか

だけでなく、

研究者の時間をどう守るか

という視点も必要ではないでしょうか。

・報告のための報告になっていないか
・同じ内容を何度も異なる様式で提出していないか
・研究者の負担に見合う価値を生み出しているのか

そうした問いは、今後ますます重要になるように思います。

おわりに

大型研究プロジェクトは、日本の研究力を支える重要な仕組みです。

一方で、その成功を支えているのは研究費だけではありません。

研究者自身の時間です。

研究費を増やすことと、研究する時間を増やすことは必ずしも同じではありません。

研究者は研究費不足を嘆くことが多いものですが、研究費よりも時間の方が希少な資源になっていることもあります。

大型研究プロジェクトを経験した研究者ほど、そのことを実感しているのではないでしょうか。

外部資金ジャパン

研究費の獲得後には、研究そのものだけでなく、さまざまな報告業務への対応も求められます。外部資金ジャパンでは、申請書だけでなく、報告書の作成支援も提供しています。ご興味のある方は下記までお気軽にお問い合わせください。


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