第107回 科研費申請書の添削は費用対効果に見合うのか―研究費だけでなく「レビュー環境」という視点から考える―
私自身、研究者として科研費申請を行い、採択を経験してきました。しかし研究支援の仕事に携わるようになって初めて、外部の添削サービスやレビューサービスを利用している研究者が想像以上に多いことを知りました。
研究者だった頃の私は、外部の添削サービスを利用するという発想自体を持っていませんでした。
仮に存在を知っていたとしても、
「お金を払ってまで見てもらう価値があるのだろうか」
と考えたと思います。
ところが研究支援の現場では、若手研究者からベテラン研究者まで、多くの研究者が外部の専門業者による添削やレビューを利用しています。
一方で、
「本当に費用に見合う効果があるのか」
「学内でレビューを受けられるのに外部添削は必要なのか」
という疑問の声もあります。
そこで今回は、科研費申請書の添削サービスについて、費用対効果という観点から考えてみたいと思います。
費用だけを見ると高く感じる
科研費添削サービスの料金は、内容にもよりますが数万円から十数万円程度が一般的です。
決して安い金額ではありません。
そのため、
「添削にお金をかけるくらいなら、自分で何度も見直した方がよい」
と考える方もいるでしょう。
しかし、費用対効果を考える際には、支払う金額だけでなく、得られる価値も含めて考える必要があります。
研究費獲得という観点からの費用対効果
科研費は、採択されれば数百万円から場合によっては数千万円、数億円規模の研究費を獲得できます。
もちろん、添削を受けたからといって採択が保証されるわけではありません。
また、研究テーマそのものの独創性や研究実績など、添削だけでは改善できない要素もあります。
それでも、
研究目的が分かりやすく伝わるか
研究計画が論理的に整理されているか
審査者が短時間で理解できる構成になっているか
といった点は、申請書の評価に影響する重要な要素です。
研究内容そのものは優れていても、申請書として十分に伝わらなければ評価につながりません。
添削サービスは、その伝達部分を見直す機会の一つと言えるでしょう。
忙しい研究者ほど費用対効果は高いかもしれない
科研費添削の費用対効果を考える際、多くの人は採択率に注目します。
しかし実際には、「時間」という観点も重要です。
大学教員の業務は研究だけではありません。
講義
学生指導
学内委員会
入試業務
各種会議
社会貢献活動
事務作業
など、多くの業務を抱えています。
その中で科研費申請書を作成するには相当な時間が必要になります。
第三者からレビューを受けることで、
方向性のずれに早く気付ける
修正すべき点を整理できる
書き直しの回数を減らせる
場合があります。
研究者にとって最も希少な資源は研究費だけではありません。
時間もまた重要な資源です。
そのため、添削サービスの価値は研究費獲得の可能性だけでなく、申請書作成にかかる時間や労力の削減という点からも考えることができます。
「学内レビューがあるから不要」とは限らない
外部添削の必要性を考える際、
「うちの大学にはレビュー制度があるから大丈夫」
という声を聞くことがあります。
しかし、これまでの経験を踏まえて申し上げると、レビュー体制は大学によって大きく異なることを実感します。
事務職員がレビューを担当する大学もあれば、研究支援部門がレビューを担当する大学もあります。
また、レビュー担当者の研究経験や科研費申請経験、支援経験、採択経験も様々です。
当然ながら、どのようなレビュー体制であっても価値はあります。
その一方で、レビューの質や観点に違いが生じることも少なくありません。
したがって、費用対効果を考える際に重要なのは、
「学内レビューか外部添削か」
という二択ではなく、
「自分はどのようなフィードバックを受けられる環境にあるのか」
という点なのではないかと思います。
添削で改善できること、できないこと
もちろん、添削には限界があります。
改善できるのは、
文章の分かりやすさ
論理構成
研究目的と研究方法の整合性
図表の見せ方
説明不足や論理の飛躍
などです。
一方で、
研究テーマの新規性
研究実績
研究環境
過去から現在に至る研究の流れ
などは短期間で変えられるものではありません。
したがって、
「添削を受ければ採択される」
というものではありません。
添削は研究内容を変えるサービスではなく、研究内容をより伝わりやすく整理するための支援と言えるでしょう。
おわりに
科研費添削サービスの費用対効果を一律に語ることはできません。
研究費獲得の可能性を高める側面もあれば、申請書作成にかかる時間や労力を削減するという側面もあります。
また、学内レビューがあるかどうかだけで、その必要性を判断できるものでもありません。
重要なのは、自身がどのようなレビュー環境に置かれているかを把握し、その上で必要な支援を選択することです。
科研費申請書は、多くの場合、自分自身では完成度を客観的に評価することができません。
だからこそ重要なのは、学内か学外かではなく、自身の研究計画に対して率直で建設的なフィードバックを得られる環境を確保することではないでしょうか。
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