第54回 科研費申請における添削支援の活用について― 実態からの考察 ―
科研費(科学研究費助成事業)の申請にあたり、添削支援を利用すべきかどうかについては、多くの研究者の方が一度は検討される点かと思います。
まず、添削支援の利用割合に関しては、公的機関による明確な統計は公表されておりません。そのため正確な数値を示すことは難しいものの、実務経験の感覚を踏まえますと、全体の10〜30%程度が何らかの形で添削支援を活用していると推察されます。
もっとも、この数値だけでは実態の一側面しか捉えられていない可能性があります。
ベテラン研究者の活用という実態
添削支援というと、若手研究者向けのものという印象を持たれることもあるかと思います。しかしながら、実際には十分なご経験を有する研究者においても、添削支援を活用されている例が一定数見受けられます。
そしてその背景には、次のような認識があるものと考えられます。
研究経験を重ねるほど、「第三者にとってわかりやすい形で伝えること」の重要性を強く意識されている。
なぜ経験を重ねるほど重要性が増すのか
この点につきましては、いくつかの理由が考えられます。
専門性の深化と伝達の難しさ
研究が進展するにつれて内容は高度化し、前提知識も専門的なものとなります。その結果として、
説明が簡略化されすぎてしまう
背景が共有されていることを前提に記述してしまう
専門用語への依存が高まる
といったことが生じやすくなります。
これらはいずれも自然な傾向であり、能力の問題というよりは、専門性の高さゆえに生じる現象といえます。
読み手との前提の違い
科研費の審査においては、必ずしも研究内容と完全に一致した専門分野の審査員が評価するとは限りません。
そのため、
「どれほど高度な研究であるか」に加えて、
「無理なく理解できる形で示されているか」が重要となります。
この点を確認する上で、第三者の視点は有用であると考えられます。
自身の文章の客観的把握の難しさ
申請書を作成する過程において、ご自身の文章を完全に客観的に評価することは容易ではありません。
特に、「自明と思われる説明」が読み手にとっては十分でない場合もあり、このような認識の差は意図せず生じ得るものです。
添削支援は、こうした点を補う手段として位置づけることができます。
添削支援の位置づけ
添削支援の利用は、必ずしも不可欠なものではございません。
一方で、
読み手の視点を取り入れること
内容をより明確に伝えること
といった観点からは、申請書の完成度を高めるための選択肢として捉えることができます。
特に、初めて申請される場合や、不採択が続いている場合、あるいは内容には自信があるものの伝わり方にご不安がある場合には、利用を検討することをお勧めいたします。
おわりに
科研費申請においては、研究内容の質に加え、それをどのように伝えるかが重要な要素となります。
そしてこの点については、研究経験の多少に関わらず、常に改善の余地が存在し得るものです。
ベテラン研究者ほど第三者にとってのわかりやすさを重視されているという傾向は、示唆的であるように思われます。
添削支援は、そのような課題に対応するための方法として、活用をご検討いただければと思います。
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