第100回 研究支援のリソース配分を間違えるべきではない― 大型研究は内製、小型研究は外注という合理的選択 ―
大学における研究支援体制、とりわけURA(University Research Administrator)や研究支援部門の役割は、年々重要性を増しています。
しかし一方で、現場では明らかな課題があります。
「人が足りない。にもかかわらず、支援対象の優先順位が曖昧である。」
結果として、本来最も支援すべき案件に十分なリソースが割かれていないケースが少なくありません。
本稿では、限られた人的資源の中で成果を最大化するための考え方を整理してみます。
大型研究プロジェクトこそ「内製支援」の本丸
特別推進研究、基盤研究S、CRESTといった大型研究プロジェクトは、単なる申請書作成ではありません。
研究構想の磨き込み
体制設計(人員・役割分担)
学内外の調整
中長期的な研究戦略との整合
これらを含めた、いわば「プロジェクトそのものの設計」が問われます。
ここにおいて、URAや専任教員の関与は不可欠です。
なぜなら、
学内リソースの把握
過去の採択傾向の蓄積
研究者間のネットワーク調整
組織としての意思決定
といった要素は、外部では担えない「内部知」に依存しているからです。
つまり大型案件は、
研究支援人材の腕の見せどころであり、最も付加価値を発揮できる領域
です。
小型研究に同じ支援をしてはいけない
一方で、基盤研究BやCといった比較的小規模の研究費について、同じ密度のプレアワード支援を行うべきでしょうか。
それは、下記の理由から非効率的です。
件数が圧倒的に多い
1件あたりの資金規模が相対的に小さい
成否の影響が組織全体に及びにくい
にもかかわらず、これらすべてに対して
個別面談
詳細なレビュー
繰り返しのブラッシュアップ
を行っていては、人的リソースはすぐに枯渇します。
そして最も問題なのは、
本来集中すべき大型案件への支援が薄くなること
です。
こうした運用を採用する大学も出てきている
ここで重要なのは、この戦略が単なる理想論ではないという点です。
実際に、いくつかの大学ではすでに
大型案件を学内で選抜・重点支援する
URAを戦略案件に集中配置する
小型案件は支援の標準化・外部活用で効率化する
といった運用に踏み出しています。
その結果、
大型研究費の採択が継続的に生まれる
同一分野での連続採択が起きる
組織としての「勝ちパターン」が蓄積される
といった、再現性のある成果につながっています。
ここで起きているのは単なる成功事例ではなく、
支援体制そのものが競争力になっている
という構造的な変化です。
外部専門業者の活用という現実解
では、小型案件はどう扱うべきか。
ここで有効なのが、
外部の専門業者への委託
です。
現在では、申請書の添削やコンサルティングを専門とする事業者も存在しており、
一定水準以上の文章品質
客観的な第三者視点
効率的なブラッシュアップ
といった価値を、比較的低コストで提供しています。
特に、
初めて申請する若手
書き方に不安がある研究者
忙しくて時間のないベテラン研究者
においては、費用対効果が非常に高い領域です。
「外注=質が低い」という誤解
ここでしばしばある誤解があります。
「外注すると質が下がるのではないか」
しかし実際には逆で、
内部で十分な時間を割けない中途半端な支援
よりも専門業者による集中的なレビュー
の方が、結果的に質が高くなるケースも少なくありません。
重要なのは、
何を内製し、何を外に出すかの切り分け
です。
限られたURAをどう使うか
現実として、多くの大学でURAは不足しています。
この状況で取るべき戦略は明確です。
大型研究:内製で徹底支援(戦略設計まで踏み込む)
小型研究:外部リソースを活用して効率化
このように役割分担を明確にすることで、
組織としての大型採択率を上げる
全体の申請品質も底上げする
という両立が可能になります。
おわりに
研究支援は、理想的にはすべての研究者に十分な機会が提供されることが望ましいでしょう。
しかし現実には、人的・時間的な制約があります。
その中で重要なのは、限られた支援体制をどのように設計するかです。
大型研究プロジェクトにおいては、URAや研究支援部門が前面に立ち、戦略的な支援を行う。
一方で、小型研究については外部リソースも活用しながら、効率よく全体の底上げを図る。
内製化と外注化を適切に組み合わせることが、これからの研究支援体制に求められる視点ではないでしょうか。
外部資金ジャパン
外部資金ジャパンでは、申請書の添削サービスを提供しています。ご興味のある方は下記までお気軽にお問い合わせください。
