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第123回 日本の大学教員は研究者なのか、それとも研究管理者なのか

大学教員というと、多くの人は研究室で実験をしたり、論文を書いたりしている姿を思い浮かべるかもしれません。私が学生の頃もそう思っていました。

しかし実際の大学教員の仕事を見ていると、研究そのものに費やす時間よりも、研究を成立させるための管理業務に費やす時間の方が長いと感じることがあります。

もちろん研究は行っています。

しかし現実には、

  • 研究費を獲得する

  • 研究費を執行する

  • 研究室を運営する

  • 共同研究を調整する

  • 成果を報告する

といった業務が大量に存在します。

その意味では、日本の大学教員は「研究者」であると同時に、「研究管理者」としての側面を強く持っていると言えるのかもしれません。


研究を始める前に研究費を確保しなければならない

研究には設備、試薬、調査費、旅費、人件費など、多くの費用が発生します。

そのため大学教員は研究を行う前に、

「研究費をどう確保するか」

を考えなければなりません。

科研費をはじめとする競争的研究費への申請書作成は、その代表例です。

研究計画を考えるだけでなく、

  • 実施体制を構築する

  • スケジュールを整理する

  • 予算を検討する

といった作業も求められます。

これは研究そのものというより、プロジェクトマネジメントに近い仕事です。

採択された後も管理業務は続く

研究費に採択されれば自由に研究できるわけではありません。

予算執行には様々なルールがあります。

物品購入、旅費申請、謝金支払いなどについて大学の事務部門と調整しながら進める必要があります。

さらに研究期間中には、

  • 進捗管理

  • 研究分担者との調整

  • 成果報告

  • 監査対応

なども発生します。

大型研究費になるほど、この傾向は強くなります。

研究費が大きくなるほど研究者というよりも、研究プロジェクトの管理者、責任者としての役割が大きくなっていきます。

学生指導も重要なマネジメント業務である

大学教員の仕事は研究だけではありません。

学部生、大学院生、ポスドクなど、多くの人材を育成する役割があります。

研究室に所属する学生が増えれば、

  • テーマの割り振り

  • 進捗確認

  • 研究倫理教育

  • キャリア支援

なども必要になります。

企業で言えば、部下を抱える管理職に近い側面があります。

優れた研究者であることと、優れた研究室運営者であることは必ずしも同じではありません。

しかし大学教員には、その両方が求められています。

大学が求めているのは「研究成果」だけではない

大学が教員を評価する際には、

  • 論文数

  • 被引用数

  • 外部資金獲得額

  • 教育(学生指導)実績

  • 社会貢献活動

など様々な要素が考慮されます。

そのため、研究成果そのものだけではなく、

「どれだけ研究プロジェクトを運営できるか」

も評価対象になっているといえます。

そのため、研究者として優秀であるだけでは十分ではありません。

組織運営能力や調整能力も重要になっています。

若手研究者ほど、この現実に驚く

博士課程の学生やポスドクの頃は、研究そのものに集中できる時間が比較的多くあります。

しかし大学教員になると状況は大きく変わります。

着任後に多くの人が感じるのは、

「研究より、研究を成立させるための仕事の方が多い」

という現実です。

研究者になるつもりで大学教員になったのに、気付けば研究室運営や研究費管理に追われている。

これは決して珍しい話ではありません。

なぜ研究管理者化が進むのか

これは個々の大学教員の能力や意識の問題ではありません。

むしろ現在の大学制度そのものが、教員に研究管理者としての役割を求めているとも言えます。

研究費は競争的資金への依存が高まり、研究プロジェクトは大型化・国際化しています。

研究倫理、利益相反管理、情報管理などへの対応も求められます。

さらに大学は教育、研究、社会貢献に加え、産学連携や地域連携など様々な役割を担うようになっています。

その結果、大学教員には研究能力だけでなく、組織運営能力やマネジメント能力も求められるようになりました。

研究者個人が変わったのではなく、研究を取り巻く環境そのものが変化しているからです。

おわりに

大学教員は一般に「研究者」ですが、日々の業務を振り返ると、その実態は必ずしも研究だけを行う職業ではありません。

研究費を獲得し、予算を管理し、人材を育成し、共同研究を調整し、成果を報告する。

研究室を運営し(研究を実施するための環境を整え)、研究プロジェクト全体を運営する役割が求められています。

もちろん研究活動そのものは大学教員の本質的な仕事です。

しかし実際の時間配分や業務内容を考えると、多くの大学教員は「研究者」というよりも、むしろ研究管理者(Research Manager)に近い存在になっているのではないでしょうか。

そして近年は、研究者に求められる管理業務がますます増加する一方で、研究そのものに使える時間は限られています。

本来、研究者が最も価値を発揮するのは研究そのものです。

しかし現実には、多くの研究者が研究管理業務に多くの時間を費やしています。

研究管理業務そのものは重要ですが、それによって研究時間が失われてしまうのであれば、研究者本人だけでなく学術界全体にとっても損失かもしれません。

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