第51回 独自性と新規性の違いとは何か②―科研費の研究計画調書を踏まえた実践的整理―
申請書を作成する際、「独自性」と「新規性」はいずれも重要な観点として意識される一方で、その違いが十分に整理されないまま記述されている場合も少なくないように思われます。その結果、研究の意義や強みが十分に伝わらず、評価に影響する可能性も考えられます。
このため、両者の関係を整理しておくことは有益であると考えられます。前回の記事でも触れましたが、ひとまずの整理としては、次のように捉えると理解しやすいのではないでしょうか。
新規性:研究内容の新しさ
独自性:研究者・アプローチの固有性
もっとも留意すべき点として、科研費の審査基準において「新規性」という語が明示的な評価項目として掲げられているわけではありません。一方で、「学術的独自性や創造性」は明確に評価要素とされています。そのため実際には、「新しさ」は前提として求められつつ、それが学術的独自性としてどのように位置づけられているかが重視されると考えられます。
1.新規性とは何か
新規性とは、既存研究との関係において、本研究がどのような新しさを有しているかを示すものです。言い換えれば、先行研究との差分を明確にする観点といえます。
例えば、
未だ十分に扱われていない対象を取り上げる
新たな手法やデータを導入する
といった点が該当します。
重要なのは、「何がどのように新しいのか」を具体的に示すことです。単に新しいと述べるだけでなく、どの先行研究と比較してどの点が異なるのかを明確にする必要があります。
また、新規性は独立した評価項目ではない場合が多いものの、
前提として満たされていることが期待される
欠けている場合は評価以前の問題となりうる
という性格を持つ点には注意が必要です。
2.独自性とは何か
独自性とは、本研究がどのような点において「この研究者ならでは」であるかを示すものです。研究の着想や方法において、研究者自身の視点や蓄積がどのように活かされているかが問われます。
例えば、
問いの立て方に特徴がある
方法や枠組みに工夫がある
これまでの研究蓄積に基づくアプローチである
といった場合に独自性が認められます。
ここで重要なのは、「なぜその研究者が行うことに説得力があるのか」という点です。
3.学術的独自性とは何か
学術的独自性とは、独自の視点や蓄積が、客観的にみて研究として具体的な形に表現されている状態と考えられます。
例えば、
研究蓄積が特定の問いの設定につながっている
強みが研究方法として組み込まれている
といった場合がこれにあたります。
したがって、
研究・学問として意味のある独自性が、学術的独自性である
と整理することができます。
4.両者の違い
以上を踏まえると、新規性と独自性は次のように整理できます。
新規性:先行研究との違い(外的な差異)
独自性:研究者の強みや視点(内在的な価値)
簡潔に言えば、
新規性は「何が新しいか」
独自性は「なぜこの研究者なのか」
という違いです。
さらに実務的には、新規性は単独で評価されるというよりも、独自性の中で意味づけられながら評価されると考えられます。
5.申請書における書き分け
研究計画調書では、まず新規性として何を新たに明らかにするのかを示します。次に独自性として、その研究を進めるうえでの強みや蓄積を説明します。
そして、それらが問いや方法としてどのように具体化されているか、すなわち学術的独自性としてどのように成立しているかを示すことが重要です。
整理すると、
1.何が新しいのか(新規性)
2.なぜこの研究者が行うのか(独自性)
3.それがどのように研究として成立しているのか(学術的独自性)
という順序で記述することで、研究計画の説得力を高めることができます。
6.まとめ
新規性と独自性はいずれも重要ですが、その役割は異なります。
新規性:新たに付加される要素
独自性:研究者に基づく固有の価値
学術的独自性:それらが研究として具体化されたもの
科研費では、単なる新しさではなく、それがどのように学術的独自性として表現されているかが重視されます。
そのため、新規性を示した上で、それを独自性で支え、さらに学術的独自性として提示することが重要です。そうすることで、「何が新しく、なぜこの研究者が行い、それがどのような研究として成立しているのか」が明確に伝わる申請書につながると考えられます。
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